せん)” の例文
恵心は台宗問目二十七条をせんして、宋の南湖なんこ知礼師ちらいしに就いて之をただそうとした。知礼は当時学解がくげ深厚じんこうを以て称されたものであったろう。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
上田敏さんは、多くの象徴詩篇を翻訳して、「海潮音」をせんしたのである。これが、日本象徴詩の早期に於ける美しいしあげ作業であった。
詩語としての日本語 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
羅子らし水滸すいこせんして、三世唖児あじみ、紫媛しゑん源語げんごあらはして、一旦悪趣につるは、けだごふのためにせまらるるところのみ。
「そう、いつでも巨人引力ばかり書いてはおらんさ。天然居士の墓銘をせんしているところなんだ」と大袈裟おおげさな事を云う。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
烈女節婦はこのように伝記にせんせられるものだけではない、世の苦難をたたかいぬいたこれらの婦人はむべきだ。
日本婦道記:松の花 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
大将「いいや、今わしは神のみ力を受けて新らしい体操を発明したじゃ。それは名づけて生産体操となすべきじゃ。従来の不生産式体操とおのずかせんを異にするじゃ。」
饑餓陣営:一幕 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
之をなじれば則ち曰、「甲申乙酉に(明の亡びたる〔二字欠〕の末年なり。)死せず。則ち更に死期無し」と。太虚怒る。これは怒るのももつともなり。更に又巨源、一劇をせんす。
八宝飯 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
由来、わが国の歴史としては、中古ちゅうこ以前のものに、古事記こじき日本紀にほんぎなどがあるが、中古以後にいたっては、北畠親房卿きたばたけちかふさきょうせんせられた神皇正統記じんのうしょうとうきのほかにこれというものもない。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この原本の世に伝わるものは二十巻で、しん干宝かんぽうせんということになって居ります。
和歌は『万葉集』のせんありてのち吟咏ぎんえいの法式厳然として一定せられたり。滑稽諷刺の意をあらはさんとするやたまたま落首の一変体ありしといへどもいまだ完全なる一形式をなすに至らざりき。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
先年板垣伯いたがきはくの内務大臣たりし時、多年国事に奔走ほんそうせし功をでられてか内務省の高等官となり、爾来じらい内閣の幾変遷いくへんせんつつも、専門技術の素養ある甲斐かいには、他の無能の豪傑ごうけつ連とそのせんことにし
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
続往生伝は匡衡の孫の成衡しげひらの子の匡房のせんだから、これも信ずべきであるが、何様して然様そういう相違が生じたのであろう。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
吾輩は猫だけれど、エピクテタスを読んで机の上へ叩きつけるくらいな学者のうち寄寓きぐうする猫で、世間一般の痴猫ちびょう愚猫ぐびょうとは少しくせんことにしている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
新古今和歌集のせんを御裁定あそばしたり、故実の講究にもおくわしく、武道に長じ、騎馬と蹴鞠けまりはことのほかすぐれておいで遊ばすそうで、わけても下々の驚いているのは、画なども
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
元来この主人はぶっ切ら棒の、頑固がんこ光沢つや消しをむねとして製造された男であるが、さればと云って冷酷不人情な文明の産物とはおのずからそのせんことにしている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
内典を知るも、りょうの武帝の如く淫溺いんできせず、又老子ろうしを愛し、恬静てんせいを喜び、みずから道徳経註どうとくけいちゅう二巻をせんし、解縉かいしんをして、上疏じょうその中に、学の純ならざるをそしらしむるに至りたるも
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
中々の長文で、灑々さいさい数千言、情を尽し理を尽し、当時の社会を動かすには十分のものであった。それから又奝然上人の唐に赴くをせんして賦して贈る人々の詩の序をも保胤がせんした。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
建文三年二月、燕王自ら文をせんし、流涕りゅうていして陣亡の将士張玉等を祭り、服するところのほうを脱してこれき、以て亡者ぼうしゃするの意をあらわし、曰く、れ一いえどもや、以て余が心をれと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)