トップ
>
抹殺
>
まっさつ
ふりがな文庫
“
抹殺
(
まっさつ
)” の例文
試みにこれらのへんな句やいやな句を
抹殺
(
まっさつ
)
してそれを美しいやさしいさびしおりにみちた句ばかりに作り変えることができたとする。
連句雑俎
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
室町幕府の
抹殺
(
まっさつ
)
は、密雲にとざされていた天に、
突
(
とつ
)
として、青空の肌の一部が、穴のあいたように見えはじめたともいえるものだった。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「焼芋を食うも
蛇足
(
だそく
)
だ、
割愛
(
かつあい
)
しよう」とついにこの句も
抹殺
(
まっさつ
)
する。「香一炷もあまり
唐突
(
とうとつ
)
だから
已
(
や
)
めろ」と惜気もなく
筆誅
(
ひっちゅう
)
する。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
或は鼻を
抹殺
(
まっさつ
)
してしまう迄は何回でも襲撃を行わせるであろうか。———河内介の興味は結局そこへ落ちざるを得なかった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
かかる醜い下痢と苦しい腹痛とを自分に与えるような客観世界を、自分の死によって
抹殺
(
まっさつ
)
できることを喜びながら……。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
▼ もっと見る
この有力な人物はもう、あなたのために何かやってもらおうとする人たちのリストからはほとんど
抹殺
(
まっさつ
)
されなくてはならなくなってしまったのだ。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
「あれは、いかん。あれは加柴さんの旧同志かもしれないが、あんな男こそ滅ぼさなくちゃ……
抹殺
(
まっさつ
)
しなくちゃ……」
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
これは同時に「朱雀事件」ぜんたいを秘密裡に
抹殺
(
まっさつ
)
するという、徹之助らの初めからの意図が、閣老によって認められたことを証明するものであった。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
笑いは
泪
(
なみだ
)
より内容の低いものとせられ、当今は、
喜劇
(
コメディ
)
というものが泪の裏打ちによってのみ危く
抹殺
(
まっさつ
)
を
免
(
まぬ
)
かれている位いであるから、
道化
(
ファルス
)
の如き
代物
(
しろもの
)
は
FARCE に就て
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
彼らは十七世紀の古典文学を
抹殺
(
まっさつ
)
し、また神の名でラ・フォンテーヌの物語を汚すことを許さなかった。昔の音楽についても同じくそれを許さなかった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
社会、階級、人類、等々、あらゆるものの名において人間的な幸福の要求が
抹殺
(
まっさつ
)
されようとしている場合、幸福の要求ほど良心的なものがあるであろうか。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
殊に、零点の置きどころを改革するというような、いわば、既成の仮設や単一性を
抹殺
(
まっさつ
)
していく無謀さには、今さら誰も応じるわけにはいくまいと思われる。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
ふたりの
死骸
(
しがい
)
だけでなく、へやそのものを
抹殺
(
まっさつ
)
してしまうのです。この建物の中から、一つのへやが消えうせてしまうのです。これがわれわれのやり口です。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
四円四十銭の利子なんか
抹殺
(
まっさつ
)
してしまえだ。私は縞の着物に黄いろい帯を締めると、日傘を廻して幸福な娘のような姿で街へ出てみた。例の通り古本屋への日参だ。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
実に科学は、人生から「詩」を
抹殺
(
まっさつ
)
することにのみ、その意地あしき本務を持ってるように思われる。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
嘘と思うなら、かりにいっさいの天才英雄を歴史の上から
抹殺
(
まっさつ
)
してみよ。残るところはただ醜き平凡なる、とても吾人の想像にすらたゆべからざる
死骸
(
しがい
)
のみではないか。
初めて見たる小樽
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
屁理窟ですよ。もう僕はあの、科学救国論は全部、
抹殺
(
まっさつ
)
します。僕はいま、もっと落ちついて考え直さなければいけない。モオゼだって、四十年かかったのですからね。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「横に並べた Fig. 6 というのは、実は僕の研究の結論なのです。キド現象を現す Fig. 5 の方を
抹殺
(
まっさつ
)
して、代りに此の方を皆さんにお
薦
(
すす
)
めしたいのです」
キド効果
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
古来美女たちのその実際生活が、当時の人々からいかに罪され、
蔑
(
さげ
)
すまれ、
下
(
おと
)
しめられたとしても、その事実は、すこしも彼女たちの個性的
価値
(
ねうち
)
を
抹殺
(
まっさつ
)
する事は出来なかった。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
学士院会はその帳簿からアカデミー会員ナポレオン・ボナパルトの名前を
抹殺
(
まっさつ
)
さしていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
あるいは
霞
(
かすみ
)
を
棚引
(
たなび
)
かせて、その中間の幾十里の直接不必要な風景を
抹殺
(
まっさつ
)
してしまう。
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
どうしても説明困難なものはこれを原始キリスト教社会における時代的迷信の混入であるとして除去
抹殺
(
まっさつ
)
し、後に残る歴史的事実と道徳的教訓だけをキリスト教の内容として認めよう
キリスト教入門
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
児島高徳
(
こじまたかのり
)
の存在を否定し、武蔵坊弁慶を撲滅し、面白
可笑
(
おか
)
しい逸話を持った、史上の大物を片っ端から否定して、
抹殺
(
まっさつ
)
博士という
綽名
(
あだな
)
で呼ばれたことは、老人方は記憶しておられるであろう。
随筆銭形平次:13 平次身の上話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
しなやかな体の
起
(
た
)
ちよう据わりよう、意味ありげな顔の表情、懐かしい声の調子が思い出される。そしてそれを惜む未錬の情のあることを、我ながら
抹殺
(
まっさつ
)
してしまうことが出来ないのである。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
僕が僕の幼いころの運命を僕自身で
抹殺
(
まっさつ
)
することが出来ないかぎり、或はそれを無力にするだけの新しい運命が僕にひらけて来ないかぎり、それをどうすることも出来ないのが現実の僕の性格だ。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
これは精密
巧緻
(
こうち
)
な方法で実現された新地獄に違いなく、ここではすべて人間的なものは
抹殺
(
まっさつ
)
され、たとえば屍体の表情にしたところで、何か模型的な機械的なものに置換えられているのであった。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
けだし天才は常に誇揚自負のため漸次
抹殺
(
まっさつ
)
せらるる者なればなり。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
このようなわけで東京はかならず武蔵野から
抹殺
(
まっさつ
)
せねばならぬ。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
(以下十余行内務省の注意により
抹殺
(
まっさつ
)
)
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
しかし一般世間ではどうかすると誤った責任観念からいろいろの災難事故の真因が
抹殺
(
まっさつ
)
され、そのおかげで表面上の責任者は出ない代わりに
災難雑考
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
融通のきかぬ一本調子の趣味に
固執
(
こしゅう
)
して、その趣味以外の作物を一気に
抹殺
(
まっさつ
)
せんとするのは、英語の教師が物理、化学、歴史を受け持ちながら
作物の批評
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は言葉にも尽せないほどの深い
憎悪
(
ぞうお
)
でアーダを憎んでいた。彼は自分の生活から彼女を
抹殺
(
まっさつ
)
していた。彼にとってはもはや彼女は存在していなかった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「かれらは」——と六郎兵衛は云った、「自分たちの父や、主人や、兄たちが、誰の手によって
抹殺
(
まっさつ
)
されたか、その原因がなんであるかを、知っています」
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
花栄、秦明、黄信の名は、むほん人として
官簿
(
かんぼ
)
から
抹殺
(
まっさつ
)
され、代るに、青州奉行や中書省の発令で近く
追捕
(
ついぶ
)
の大軍団がこれへ急派されるという取り沙汰だ。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
則重は「あっ」と云って思わず鼻をおさえたが、続いて第二弾が飛来して、此れはあぶなく則重の鼻を、一挙にして顔面から
抹殺
(
まっさつ
)
してしまうところであった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
抹殺
(
まっさつ
)
すべきだと言った。その百成の言葉が俺に、砂馬の殺害を決意させ、その決意が俺の胸を弾ませたのか。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
どんなにしても彼女は、この執拗な黒猫を殺してしまい、存在を
抹殺
(
まっさつ
)
しなければならないのだ。
ウォーソン夫人の黒猫
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
今はどうもどこかへ置き忘れたようだぞ? 訴訟に
敗
(
ま
)
けてもいいのか? そうなったらどうなるのか、知っているか? そうなったら、お前は簡単に
抹殺
(
まっさつ
)
されちゃうんだぞ。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
つまり、影男を
抹殺
(
まっさつ
)
する代金が二千万円だった。なんということだ。このずぶとい小男は、これから殺そうと思っている当人に、その殺人方法を立案させようというわけなのである。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そのたびに、町の商人との取引は
抹殺
(
まっさつ
)
されてしまうので、めったに坑夫達には品物を貸して帰れなかった。それでも坑夫相手の商売は、てっとり早くてユカイだと商人達は云っていた。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
一つブロンドーの奴をやっつけてやれ! その時ブロンドーは
抹殺
(
まっさつ
)
の黒ペンをインキに浸して、茶色の目玉で聴講者を見回して、三度目に繰り返した、マリユス・ポンメルシー! 僕は答えた
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
どうにかしてこの生を
有
(
あり
)
のままに領略しなくてはならない。ルソオのように、自然に帰れなどと云ったって、太古と現在との中間の記憶は有力な事実だから、それを
抹殺
(
まっさつ
)
してしまうことは出来ない。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
生命の物理的説明とは生命を
抹殺
(
まっさつ
)
する事ではなくて、逆に「物質の中に
瀰漫
(
びまん
)
する生命」を発見する事でなければならない。
春六題
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ことさらに混乱し、恐怖を誇張した手記を遺し、狂気をよそおって、そして叔父は、遠藤兵庫としての自分を、この地上から
抹殺
(
まっさつ
)
した。人々は少しも疑わなかった。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
前日まで彼女は、愛していたし、愛してるようだったし、自分でも愛してると思っていた。しかし今日はもう愛していない。彼女が愛した男は彼女の考えの中では
抹殺
(
まっさつ
)
される。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
何ぞや、権力、
詐謀
(
さぼう
)
、
威嚇
(
いかく
)
、さようなものでこれを
阻
(
はば
)
め、その不滅の
大御文章
(
だいごもんじょう
)
を、人類のうちから
抹殺
(
まっさつ
)
することなどできようか。わろうべき人間の天に向ってする
唾
(
つば
)
でしかない。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
実に自然派の文学は、芸術から詩を
抹殺
(
まっさつ
)
し、一切の主観的精神を否定しようと企てた。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
今までの雲で自分と世間を
一筆
(
ひとふで
)
に
抹殺
(
まっさつ
)
して、ここまでふらつきながら、手足だけを急がして来たばかりだから、この赤い山がふと眼に入るや否や、自分ははっと雲から
醒
(
さ
)
めた気分になった。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
手際
(
てぎわ
)
よく
抹殺
(
まっさつ
)
して、菰田源三郎の
身替
(
みがわ
)
りを勤めさえすれば済むのだ。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そうして、すべての可能なるものへの試みの「不可能」を「証明」し、
抹殺
(
まっさつ
)
する事にのみ興味をもつ「批評家」の批評を受けなければなるまい。
比較言語学における統計的研究法の可能性について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
“抹殺”の意味
《名詞》
抹殺(まっさつ)
(原義)竹簡に書かれた文字などを削り落とす。
文字をすっかり消す。抹消する。
殺す。殺害する。
事実や存在をなかったことにする。
(出典:Wiktionary)
抹
常用漢字
中学
部首:⼿
8画
殺
常用漢字
小5
部首:⽎
10画
“抹殺”で始まる語句
抹殺線