手毬てまり)” の例文
手毬てまりを高くげるたびに、文句にも力を入れて時間を合わせるので、それが女の子たちにはこの上もなくおもしろかったのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
引提げて、乗ったる馬は薄栗毛、目指すは、信玄只一人、その坊主首引っちぎり、手毬てまりの代りになしくれん、進めや、進め、いざ進め——
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
昼間なら子守娘は、良寛さんと手毬てまりをついて遊ぶのだ。けれど今は日暮だつた。それに赤ん坊が背中で泣いてゐた。自分も泣きたかつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
大地、海水と相合うて、その形まどかなること手毬てまりの如くにして、天、円のうちに居る。たとえば、鶏子の黄なる、青きうちにあるが如し。
地球図 (新字新仮名) / 太宰治(著)
黒くなりたるひつの上に、美しき手毬てまりのありしを、女の児に与うれば、気味悪そうに手に取りて、「こりゃ何。」と怪訝顔けげんがお
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しまするとたちまちそこに美しい五色の糸でかがった手毬てまりが三つ浮んだのであります。花ちゃんは喜んで拾い上げて
百合の花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さて手毬てまりの大さになりたる時他のわらべが作りたる玉栗たまくり庇下ひさししたなどにおかしめ、我が玉栗を以他の玉栗にうちあつる、つよき玉栗よわき玉栗をくだくをもつて勝負しようぶあらそふ。
この頃は浜防風のとうがたって、丸い手毬てまりのような実をつけている、実を覚えていらっしゃるかしら。
形はおほむ手毬てまりの様に円く大きく盛上り、色はかはつた種種しゆ/″\複色ふくしよくを出して、中にはえた緑青ろくしやう色をした物さへある。すべて鉢植でなく切花きりばな硝子罎がらすびんに挿して陳列して居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
いもうとのすなる餅花もちばなとて正月には柳の枝に手毬てまりつけて飾るなり、それさへもいと嬉しく自ら針を取りて手毬をかがりし事さへあり。昔より女らしき遊びを好みたるなり。
わが幼時の美感 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
その他編笠あみがさの類や、竹笊たけざるほうきなどにも、大変面白い形のものを見かけます。子供のもてあそぶ太鼓にも珍らしい出来のがあり、また女の児が遊ぶ手毬てまりにも美しいものを見かけます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
かの女はすっかりむす子のために、むす子のお友達になって遊ばせる気持を取戻し、ただ単純に投げったりしているジュジュの手毬てまりを取って、日本の毬のつき方をして見せた。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そういう自分の目の前に女の子のもつ手毬てまりくらいの大きさの紫いろの花がぽっかりと咲いているのに気がついたが、すぐそれへは手を出さずに、ひとしきり泣いたあとで、ようやっと許されたように
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
その年玉をくれた若い叔母おばもその一座にあったこと、その時姉の貰ったお年玉は大きな手毬てまりであったこと、その手毬が縁に転がって行った時にき込んである縁にその大きな丸い影法師の映ったこと
俳句の作りよう (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「あたし手毬てまりなら誰にも負けないんだけれど」
艶書 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
とんとん、ころりと、お手毬てまりさんだ
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
手毬てまりてんてん、ゆきこんこん
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そうでなければ蕎麦粉そばこなどとともに練って、手毬てまりほどの大さに丸め、藁火わらびや炉の中に転がして焼いて一朝の飯の代りにした。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
さて手毬てまりの大さになりたる時他のわらべが作りたる玉栗たまくり庇下ひさししたなどにおかしめ、我が玉栗を以他の玉栗にうちあつる、つよき玉栗よわき玉栗をくだくをもつて勝負しようぶあらそふ。
余計な御苦労かけるのが御不便ごふびんさ。決して私は明さんに、在所ありかを知らせず隠れていたのに、つい膝許ひざもとおさないものが、粗相で手毬てまりを流したのが悪縁となりました。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
良寛さんは暇なとき、よくこの子達とおはじきをしたり、手毬てまりをついたり、雪の国、越後のお話を、きかせてやつたりして遊ぶので、女の子達から親しまれてゐた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
林檎の果実が手毬てまりくらいに大きく珊瑚さんごくらいに赤く、きりの実みたいに鈴成りに成ったのである。
ロマネスク (新字新仮名) / 太宰治(著)
道後の温泉場の小間物店などに、色糸で美しくかがった手毬てまりが見られます。如何にも日本の娘たちの優しい心相手だと思われます。「姫達磨ひめだるま」もここのは丁寧な作りであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
まろびたるよりころがる手毬てまりかな
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
てんてん手毬てまり
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
このごろの田舎いなかのお正月は、もうどういうふうに変っているか知らぬが、十年前までは女の子の初春のあそびには、羽根羽子板はねはごいた手毬てまりとがあった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「はじめの夜は、ただその手毬てまりせましただけで、別に変った事件ことも無かったでございますか。」
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何だらうと思つて手をやつて見ると、寺を出るとき懐中ふところに入れて来た手毬てまりだつた。何処かで子守達にゆき合つたら、一緒について遊ばうと思つて持つて来たのだつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
この町の絵蝋燭えろうそくも世に聞えました。もとより仏事に用いるものであります。色糸でかがる手毬てまりも名があります。煙草の道具を売る店を時折見かけますが、旅の者の目を悦ばせます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
たちまち、けんけんごうごう、二匹は一つの手毬てまりみたいになって、格闘した。赤毛は、ポチの倍ほども大きい図体ずうたいをしていたが、だめであった。ほどなく、きゃんきゃん悲鳴を挙げて敗退した。
おててん手毬てまり
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
それでオチゴカンバという語がなお残っている(『雪あかり』)。カンバもやはりカブロのことである。信州の北安曇きたあづみ郡では種子を集め丸めて手毬てまりにする。
と胸を突くほど、足がすくむ、手が縮まる、五体を手毬てまりにかがられる……六万四千の毛穴から血がさっと霧になって、くだんのその紅い唇を染めるらしい。草にうなじを擦着け擦着け
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
昨年、良寛りやうくわんさんの伝記物語「手毬てまりはちの子」を出すときにも、それは私がはじめて書いた本なので、ひやひやしました。しかし、こんどはまたこんどで、別な不安があります。
手毬てまりがこのように美しいものになったのは、木綿機もめんばたが家々で織られるようになってからのちのことである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「それが貴僧あなた前刻さっきお話をしかけました、あの手毬てまりの事なんです。」
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鋳物師をオイモヤサンと戯れた手毬てまり歌なども処々に残っている。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)