戯談じようだん)” の例文
旧字:戲談
なされても御所持の荷物なり金子なり共うばとらんと思へばすぐに取て御目に懸ますと然も戯談じようだんらしく己が商賣を明白あからさまに云てわらひながら平氣へいきに酒を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
戯談じようだんぢやない。来いつていふから、来たんだぜ。此処で僕に会ひたいつていふわけがあるだらう。それを、早く云へよ。
秘密の代償 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「皆なと一処に芝居へ行きました。いくら起してもあんたは起きないんですもの。八時過ぎですぜ、戯談じようだんぢやない。」
F村での春 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
穀蔵に広い二階だての物置小屋、——其階下したが土間になつてゐて、稲扱いねこきの日には、二十人近くの男女が口から出放題の戯談じようだんやら唄やらで賑つたものだ。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それを恩にも着る事か、よその乙姫探してばかり。ほほほ戯談じようだんではござんせぬ。真実女子に生まれたほど、割の合はぬが定ならば、あきらめやうもござんすが。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「どうしたんだえら、夫婦喧嘩ふうふげんくわでもしたか」醫者いしや毎日まいにち百姓ひやくしやう相手あひてにしてくだけて交際つきあ習慣しふくわんがついてるので、どつしりとおほきな身體からだからかういふ戯談じようだんるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「よう効目ききめがありまつせ——」向うにゐた三十先きの女が莞爾につこりしながら戯談じようだん半分に言つた。
浴室 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
と簡単に戯談じようだんのやうにいふのであるが、併しその次の瞬間にはそんな戯談は決して言はなくなり、そして発句が口でいふほどしかく簡単には作れないといふ事実を発見するのである。
俳句は老人文学ではない (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
私はある時友達と一所いつしよに、田圃へ螽斯いなごを取りに行つて狐に化されたふうをしました。初めは戯談じようだんでしたのですが、皆がもうそれにしてしまふので仕方なしに続けてお芝居をして居ました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
みのるは戯談じようだんらしい口吻くちぶりを見せてから、いつまでも泣いてゐた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
「あれは戯談じようだんぢや」
利休と遠州 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
いへばいふで、次々にまぜつ返すやら、冷かすやらで、戯談じようだんにばかりなつて、なるほど、これでは容易に可決しないのも道理だ! と登志子も思つた。
海路 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
妻 戯談じようだんおつしやい。下宿人をおいてるつていふのは、誰のためなんです。あたしのためばかりぢやありませんよ。
世帯休業 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
対手によつては、女教師の口から言ふべきでない事まで平気で言つて、恥づるでもなく戯談じようだんにして了ふ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
博勞ばくらうなんちい奴等やつら泥棒根性どろぼうこんじやうくつちや出來でき商賣しやうべえだな、ちくらつぽうんぬいて、兼等かねらりや、れことせえおつめるつもりしやがつて」かね博勞ばくらう向側むかうがはから戯談じようだんらしい調子てうしでいふと
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
娘のあんな戯談じようだんを若者は、どうかして思ひ出すと屹度悲しくなつた。何故だか若者には好く解りもしなかつたし、また、深く考へて見もしなかつたが——。
パンアテナイア祭の夢 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
其日は一日、可成なるべくくすんだ顔を人に見せまいと思つて、頻りに心にもない戯談じようだんを云つたが、其麽そんな事をすればする程、頭脳あたまが暗くなつて来て、筆が渋る、無暗矢鱈に二号活字を使ふ。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
いく 戯談じようだんぢやありませんよ。ほんとに、そんな呑気な真似してゝいゝんですか。
ねこから鹽鮭しほざけあたへればこしかない病氣びやうきかゝると一ぱんにいはれてるので卯平うへいこしなやんでるのをまれにはねこたゝりだと戯談じようだんにいふものもあつた。それでもさういふうはさひろがらなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ふざけるにも事欠いで何を野暮な科白を振り回してゐるんだ——といふ風な顔つきで二人が役者の顔を改めて覗くと、戯談じようだんどころか田上の眼には涙が溜つてゐた。
まぼろし (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
戯談じようだんば止しなされ。これ、そんだら何ですか。』と手を延べて、机の上から何か取る様子。それは昨晩ゆうべ淡紅色ときいろ手巾はんけちであつた。市子が種蒔を踊つた時の腰付が、チラリと私の心に浮ぶ。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
副官のパリヤアニ中尉をつかまへて、こんな戯談じようだんを云ひました。
けむり(ラヂオ物語) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
水着の舞踏会なんて、まさか実現もしなかつたが彼等は雨が降ると退屈に身を持てあまして何時も何か奇抜な遊びはないものかと逞ましい戯談じようだんを語り合ふのだつた。
夜の奇蹟 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「何でえ、人騒がせをしやがつて、そんなことでお終ひか、戯談じようだんぢやない。」
歌へる日まで (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
空気銃を持つて出かければ立所たちどころに山の産物を持つて帰るし……これは戯談じようだんでなく、僕はほんとうにこの村でならこの儘で四五人の家族を養つて暮せる自信がついたな——米と酒だけ何うにかすれば
村のストア派 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
戯談じようだんじやありませんよ。謙遜されては私が困つて仕舞ひます。」
I Am Not A Poet, But I Am A Poet. (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
或る時彼は、戯談じようだん紛れに、だが胸に一縷の望みを忍ばせて
明るく・暗く (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
戯談じようだんじやないぞ! と私は力をいれて呟きました。
嘆きの孔雀 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
戯談じようだんぢやない!」と私は思はず叫びました。
晩春の健康 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
戯談じようだんぢやない!」