)” の例文
昨夜ゆうべもすがらしづかねぶりて、今朝けされよりいちはなけにさまし、かほあらかみでつけて着物きものもみづからりしを取出とりいだ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それは会員たちから、いろいろの注文を聞き、それに従って、映画の新鮮な味を失うまいと心けた。果してそれは大成功だった。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
実際驚くべき発明で、こんな発明が猿のやうな日本人の頭から生れようとは、どんな国贔屓くにびいき人達ひとだちでもおもけなかつた事だらう。
タラリと下がった片袖の背後うしろへ、右手の刀を隠したが、自然と姿勢が斜めになる、鐘巻流での居待いまけ、すなわち「罅這こばい」の構えである。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ほとんど絶望して倒れようとした時、思いけず見ると、肩を並べてひとしく手を合せてすらりと立った、その黒髪の花ただ一輪、くれないなりけり月の光に。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「なにしろ八丈ですからね」と芳造は表情をひき緊めて云った、「——あっしは八丈がどこにあるかも知らねえが、いのちけでも島抜けはできめえってこってすよ」
枡落し (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
まった今日こんにちおもけない面会めんかいであった。』と良人おっともやがて武人ぶじんらしい、おもくちひらきました。
「今朝もおうわさを致して居りましたところです。こんなによくおなりになろうとは実に思いけがなかったのです。まだそれでもお足がすこしよろよろしているようですが。」
初夢 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
やはり西鶴の文であつたとおもふが、『神鳴臍を心け』といふのがあつた。これは雷鳴があつて強く夕立するときの形容で、美文まがひの西鶴流ユーモアを漂はせてゐるのである。
雷談義 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
おもけずまた露地ろぢくちに、抱餘かゝへあままつ大木たいぼく筒切つゝぎりにせしよとおもふ、張子はりこおそろしきかひな一本いつぽん荷車にぐるま積置つみおいたり。おつて、大江山おほえやまはこれでござい、らはい/\とふなるべし。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それはトン数で云って、三瓲あまりの大爆薬が入っていた。この思いけない遺留品には、金庫をのぞきこんだ係官たちも、「呀ッ」といって一斉に出口に逃げだしたほどだった。
獏鸚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さて、其が過失あやまり。……愚僧、早合点はやがてんの先ばしりで、思ひけない隙入ひまいりをした。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
七八十になつた老人らうじんおもけないのであつたとふから。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
思ひけず、かかところ行逢ゆきおうた、たがい便宜べんぎぢや。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)