“心事(しんじ)” の例文
江戸の開城(かいじょう)その事甚(はなは)だ奇(き)にして当局者の心事(しんじ)は解(かい)すべからずといえども、兎(と)に角(かく)その出来上(できあが)りたる結果(けっか)を見れば大成功(だいせいこう)と認めざるを得ず。
妥協という漢語がこの場合いかに不釣合に聞こえようとも、その時の津田の心事(しんじ)を説明するには極(きわ)めて穏当であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ふつうの武技(ぶぎ)では、どういう敗辱(はいじょく)をまねこうも知れずと、大久保長安(おおくぼながやす)らが、わざと相手をこまらそうとたくらんだ卑劣(ひれつ)な心事(しんじ)があきらかに読めている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これほどまでも草木(くさき)は人間の心事(しんじ)に役立つものであるのに、なぜ世人(せじん)はこの至宝(しほう)にあまり関心を払(はら)わないであろうか。私はこれを俗に言う『食わず嫌(ぎら)い』に帰(き)したい。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
加藤のそれ、かれの心事(しんじ)、懐(ふところ)に剣をかくすを知らぬにあらねど、争はんはさすがにうしろめたく、さらばとてかれもまたかかる人とは思ひ捨てんこそ世にかしこかるべし。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
こゝは英雄(えいゆう)の心事(しんじ)料(はか)るべからずであるが、打(ぶち)まけられる湯(ゆ)の方(はう)では、何(なん)の斟酌(しんしやく)もあるのでないから、倒(さかしま)に湯瀧(ゆだき)三千丈(さんぜんぢやう)で、流場(ながしば)一面(いちめん)の土砂降(どしやぶり)、板(いた)から、ばちや/\と溌(はね)が飛(と)ぶ。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
吾人が心事(しんじ)実にかくのごとし。吾人はわが皇室の尊栄と安寧とを保ちたまわんことを欲し、わが国家の隆盛ならんことを欲し、わが政府の鞏保(きょうほ)ならんことを欲するものなり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
前日の如く忠実に彼(か)れが負担の業務を執(と)り得(う)るに至りたり、ここに於て室内も、自ら陽気となり、始めて愁眉を開くことを得(え)、予が看護中の心事(しんじ)など、打語(うちかた)りつつありしこと、僅かに二
読(よみ)てその奥に至れば、心事(しんじ)恍爾(こうじ)としてほとんど天外に在(あ)るの思(おもい)をなすべし。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
父の心事(しんじ)の陋劣(ろうれつ)さは余りにも明白である。だが、叔父についてなぜこう言うのであるか。言うまでもなくそれは、姪(めい)を妻としようと約束した不義不徳のためではあるが、ただそればかりではないのだ。
とこの機に乗じて我が心事(しんじ)を語り出(い)ずる。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
対世界の見地(けんち)より経綸(けいりん)を定めたりなど云々(うんぬん)するも、果(はた)して当人(とうにん)の心事(しんじ)を穿(うが)ち得たるや否(いな)や。
そして、秀吉の使いを、返したあとで、毛利家の人々に、その心事(しんじ)を、なお誇って語った。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「菊水の旗、天誅(てんちゅう)これ揚がり、桜井の書世綱(せいこう)以て光(ひか)る」と悲歌したる当時の心事(しんじ)を。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
当人の心事(しんじ)如何(いかん)は知るに由(よし)なしとするも、左(さ)るにても惜(お)しむべきは勝氏の晩節(ばんせつ)なり。
敵の陣容が、また正成の心事(しんじ)が、やっと腑(ふ)に落ちたものらしい。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「武士の心事(しんじ)、山家(やまが)のものにはわかるまい」
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
謙信は、彼の心事(しんじ)を察して
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)