後見うしろみ)” の例文
けたたましき跫音あしおとして鷲掴わしづかみに襟をつかむものあり。あなやと振返ればわが家の後見うしろみせる奈四郎といえる力たくましき叔父の、すさまじき気色けしきして
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
へんな気焔きえんを上げるようだが、この俺も、お前のためには、どんな時、どんな場合でも、命をかけて、後見うしろみをするつもりだよ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
しかれどもわがいふところの俳諧は其俳諧にはことなりと云ふことにて、荷兮野水かけいやすゐ等に後見うしろみして『冬の日』『春の日』『あら野』等あり。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
然るに津軽家は秀信ひでのぶの世にいきおいを失って、南部家の後見うしろみを受けることになり、後元信もとのぶ光信みつのぶ父子は人質として南部家に往っていたことさえある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
気がついた秋山要介は、孝子こうしに犬死させたくない、ヨーシ、追いついて後見うしろみしてやろう! 助太刀してやろうと決心し、袴の股立取り上げた途端
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
改めて穿鑿せんさくもせられで、やがては、暖簾のれんを分けてきつとしたる後見うしろみは為てくれんと、鰐淵は常におろそかならず彼が身をおもひぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
もと/\お妻の父といふは、上田の在から養子に来た男、根が苦労人ではあり、他所者よそものでもあり、するところからして、自然おのづと瀬川の家にも後見うしろみと成つて呉れた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
心細こゝろぼそ御身おんみなればこそ、小生おのれ風情ふぜい御叮嚀ごていねいのおたのみ、おまへさま御存ごぞんじはあるまじけれど、徃昔そのかみ御身分ごみぶんおもひされておいたはしゝ、後見うしろみまゐらするほど器量きりやうなけれど
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
高くなったという雑草のほかに後見うしろみをする者のない身の上なのであると源氏は思いやって、長雨に土塀どべいがところどころくずれたことも書いてあったために、京の家司けいしへ命じてやって
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
一五五かうかうの人ののはかなくてあるが、後見うしろみしてよとてたまへるなり。
しかし彼女の側では、則光をほとんど子供のように取り扱い、時には意地悪く翻弄さえもする。こういう仲で「かたみに後見うしろみ、語らふ」とはどんなことであったか。「契り」とは何であったか。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
それ後見うしろみと傍らにあるこそよけれ
歌よ、ねがふは (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
けたたましき跫音あしおとして鷲掴わしづかみえりつかむものあり。あなやと振返ふりかえればわがいえ後見うしろみせる奈四郎なしろうといへるちからたくましき叔父の、すさまじき気色けしきして
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「わたくしは壻を取ってこの世帯せたいを譲ってもらいたくはありません。それよりか渋江さんの所へ往って、あのかたに日野屋の後見うしろみをしていただきたいと思います。」
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
孤獨こどくしもよけの花檀くわだんきくか、だけ後見うしろみともいふべきは、大名だいみやう家老職かろうしよく背負せおをてたちし用人ようにんの、何之進なにのしん形見かたみせがれ松野雪三まつのせつざうとてとし三十五六、おやゆづりの忠魂ちうこんみがきそへて
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
甚太夫は平太郎の死に責任の感をまぬかれなかったのか、彼もまた後見うしろみのために旅立ちたい旨を申し出でた。と同時に求馬と念友ねんゆうの約があった、津崎左近つざきさこんと云う侍も、同じく助太刀すけだちの儀を願い出した。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かくて貧き父をうしなひし孤児みなしごは富める後見うしろみを得て鴫沢の家に引取られぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
何事をもおぼしへ給はば、いかにもいかにも後見うしろみし奉らん。
血色わるくなりてせもしつとて、姉上のきづかいたまい、後見うしろみの叔父夫婦にはいとせめてかくしつつ、そとゆうぐれを忍びて、おもての景色見せたまいしに
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
同じ席順に「第六等席、十五人扶持、伊藤揚蔵、三十四」と云ふのが此竹塘で、其子琢弥たくやは京都の宗家を継いで歿し、琢弥の兄顧也こなりさんは現に幼姪えうてつ後見うしろみをしてゐる。安石は飯田安石である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
血色わるくなりてせもしつとて、姉上のきづかひたまひ、後見うしろみの叔父夫婦にはいとせめてかくしつつ、そとゆふぐれを忍びて、おもての景色見せたまひしに
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)