-
トップ
>
-
廣庭
>
-
ひろには
警しめ
廣庭には吉原宿名主問屋
本陣組頭宿役人並居たり公用人櫻井文右衞門兩人が
願書を以て
入側に進み出島田宿藤八同人養女節と
呼時用人ハツと平伏なすを
廣庭に
向た
釜の
口から
青い
煙が
細々と
立騰つて
軒先を
掠め、ボツ/\
雨が
其中を
透して
落ちて
居る。
軌道と
直角に
細長い
茅葺の
農家が一
軒ある
其の
裏は
直ぐ
山の
畑に
續いて
居るらしい。
家の
前は
廣庭で
麥などを
乾す
所だらう、
廣庭の
突きあたりに
物置らしい
屋根の
低い
茅屋がある。
つい
今しがた
牡丹亭とかいふ、
廣庭の
枯草に
霜を
敷いた、
人氣のない
離れ
座敷で。
眞黒な
艷の
佳い
洋犬が一
匹、
腮を
地に
着けて
臥べつて、
耳を
埀れたまゝ
是れ
亦尾をすら
動かさず、
廣庭の
仲間に
加はつて
居た。そして
母屋の
入口の
軒陰から
燕が
出たり
入つたりして
居る。