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巨人
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きよじん
それで
巨人を
載せた
西風が
其爪先にそれを
蹴飛ばさうとしても、
恐ろしく
執念深い
枯葉は
泣いてさうして
其の
力を
保たうとする。
さうして、其
雲の
峰をよく見ると、
真裸な
女性の
巨人が、
髪を
乱し、身を
躍らして、一団となつて、
暴れ狂つてゐる
様に、
旨く輪廓を
取らした。
雨戸をさす
間もなく、
今まで
遠くの
林の
中に
聞えてゐた
風の
音は、
巨人の
手の一
煽りのやうに
吾にもない
疾さで
驅て
來て、その
勢ひの
中に
山の
雪を一
掃き
捲き
込んでしまつた。
「
巨人の
椅子」と云う岩のある山、——
瞬かない顔が一つ見える。
聞け、大いなる
黒金の
巨人の指は
其處には
毎日必ず
喧嚚な
跫音が
人の
鼓膜を
騷がしつゝある
其の
巨人の
群集が、
其の
目からは
悲慘な
地上の
凡てを
苛めて
爪先に
蹴飛ばさうとして、
山々の
彼方から
出立したのだ。
田圃を
透して
林の
間から
見える
其遠い
山々の
雲は
稍薄くなつて
空を
濁して
居た。
軈て
雜木林の
枝頭が
少し
動いたと
思つたらごうつといふ
響が
勘次の
耳に
鳴つた。
巨人の
脚が
逼つたのである。