あたし)” の例文
只今まで警察で厳しいお調しらべを受けましたが、あたしはマッタク何も存じません。妾はこの亭主に一生苦労をさせ通して死に別れました。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「何故そんな怖い顔をして被在いらっしゃるの。あたし、𤢖じゃなくってよ。妾のばちで、貴下あなたは𤢖に酷い目に逢ったと云うじゃアありませんか。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「兄さん、そのプッジングをあたしにちょうだい。ね、好いでしょう」とお重が兄に云った。兄は無言のまま皿をお重の方におしやった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「先生、先生——あたしですよ、開けて下さいな、太十が酔つぱらつて厭らしいことばかり云ふんですもの、逃げて来たわ……」
武者窓日記 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「そんな嘘なんか、聞きたくないわ。ほんとに仕事は何うだったの? あたしだって、これには関係してるんじゃありませんか」
赤い手 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あたしや未来派さ。」と故意わざと取り澄まして答へながら、彼女は遠野の膝の上でその豊満な身体をゆるやかにすり初めた。
静物 (新字旧仮名) / 十一谷義三郎(著)
「さァ、みなさんで忌憚きたんなく、批評して下さい、そして悪いとこはドンドンなくして、みんなあたしたち局のものにピッタリするようにつくりましょう」
工場新聞 (新字新仮名) / 徳永直(著)
あたしは今起きて顔を洗って来た所なの。ほんとにお前さんはよく寝て居るのね。だからきっと後生がいゝんだわ。」
幇間 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「まあ、ひどい風だことねえ。」といって、泣いているかねちゃんを自分の傍に引き寄せて、あたしの身体は濡れていてよ、と温かいくちをかねちゃんの薔薇色の頬辺ほっぺたにあてて
嵐の夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「え、だけどあたしなんか馴れ切つてゐるけれど……あんさんは淋しいで御ざんせう!」
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
首垂うなだれて居る男に向って斯う叫んだのでありました、——バラされない内に、へえ左様ですかと下手したてに出たらどうだい、女だからってお前さん方に舐められる様なあたしじゃないんだよ、ねえ
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
「ああ、やっぱりお前さんだったネ。あたしはずいぶん待っていたのよ。……」
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
⦅御存じ? あたしが貴方を亡くさせたのです。妾は貴方のお口を心を
あたしがいるから、重松さん、置いて行きなさいよ!)
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
あたしに言ってごらん!
洪水のように (新字新仮名) / 徳永保之助(著)
「チョット。あたしは洗濯物をば取り込まにゃならぬ。一足先に帰るけに、お前はあとから帰って来なさいよ。湯銭ゆせんは払うてあるけに……」
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「何よ用談があるって。あたしにそんなむずかしい事が分りゃしないわ。それよりか向うの御座敷の三味線でも聞いてた方が増しよ」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お前さんの鑑違かんちがいだよ。なるほど、あたしう云ったけれども、若旦那が手をおろしてお前の阿母おっかさんを殺したんじゃアない。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「——いつか、新聞に“現代青年の任務”というのをお書きになったんでしょ。あたし、とても、感激しましたわ」
白い道 (新字新仮名) / 徳永直(著)
「三平さんなら、あたしにだってかけられるわ。そら、もうかゝった! ほうら、だん/\眠くなって来てよ。」
幇間 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「あの晩かくまっていただかなかったら、斬合いの側杖そばづえから、あたしア殺されていたかもしれないんだものね」
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あたしは平気ですわ、それより奥さんこそ……」
歌へる日まで (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
お酒が少しばかりまわりますと、親切に色々とあたし身上みのうえをお尋ねになりましたので、何もかも真個ほんとの事をスッカリ話しました。
近眼芸妓と迷宮事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「あなた何の必要があってそんな事を聞くの。兄さんが好きか嫌いかなんて。あたしが兄さん以外に好いてる男でもあると思っていらっしゃるの」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うまくないの。これを飲むと温暖あったかになるんだけれども……。」と、お葉は笑った、「じゃア、あたしけて上げますよ。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ええ、何にも。それにあたしは目聡い方ですから、一寸ちょっとでも物音がすれば、ぐ眼をさますのです」
目撃者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あたしたち「人生案内」なんて見なかったからわかんないわ、それにこの批評はむずかしくて……」
工場新聞 (新字新仮名) / 徳永直(著)
「……あたしの気持ちはわかっている癖に……あなたがソンナ悪党ってことは……あたし……きょうが今日まで知らなかったわ……にくらしい……」
鉄鎚 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あたしの嫌いななア持って廻って、厭がらせの散々さんざぱら、出て行けがしにあつかわれることさ」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あたし、あなたのこと、まえから知っていました。あなたの御活躍なさってるご容子ようす——」
白い道 (新字新仮名) / 徳永直(著)
「あら好くってよ。あたしちゃんと知ってるわ。——さんざっぱらひとを待たした癖に」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「……でもって何です。あたしのいうことをお聴きになれなければ、一箱も差し上げませんよ。ホホホ……」
女坑主 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「あの、あたしといらっしゃいな。今夜も手伝って下さらない? あのね、この方もいらっしゃいますのよ」——斯う云うと鳥渡あごをしゃくって、側に引き添っている青年を、彼の方へ紹介した。
人間製造 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「なにあたしゃ手出しなんかした事あ、ついの一度だってありゃしない」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「——青井は未来の代議士だって、あたしも、信じますわ」
白い道 (新字新仮名) / 徳永直(著)
金兵衛さんの事までもスッカリ……毎月二十五日が本郷の無尽講むじんの寄合なので、帳面とお金を持って行かれる。その帰りに電車であたしの所へ見える事まで話しました。
近眼芸妓と迷宮事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
『ね、可愛いいじゃァありませんか、あたしの云うことを聞くんですもの』
奥さんの家出 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「遅いわあなた、六時なら。あたしもう少しでかいるところよ」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あたしはこの間の夢が本当ほんとか嘘か、たしかめに来たのではないか。わざわざお役人様に願って、の石神の胸から出た鏡が、本当にあるのか無いのか、見に来たのではないか。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「そんな事がなくったって、あたしあてるわ」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ええ、今夜はあたしなのよ」
人を呪わば (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「……兄さん兄さん。一郎兄さん。あなたはまだあたしを思い出さないのですか。あたしですあたしです……モヨ子ですよ……モヨ子ですよ。返事して下さい……返事して……」
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あたしなんだか気味が悪い」
柳営秘録かつえ蔵 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あたしもうたくさん」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あたしは社交や何かで、これからますます忙しくなるのです。とても哺乳の時間なぞはありません」
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「胸をご覧、あたしの胸を」
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「だってあたし……」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あたしです。お兄様の許嫁いいなずけだった……貴方あなたの未来の妻でした妾……あたしです。あたしです。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あたしですよ。あたしですよ。お兄様の許嫁いいなずけだった……妾……妾をお忘れになったのですか。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「あれッ。青眼先生……あたしは美紅です。このうちの娘です。悪魔ではありません」
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)