女人によにん)” の例文
そも女人をんなは、一だい五千くわん、七千餘卷のどのきやうにもほとけになれないときらはれてゐるが、法華經ほけきやうばかりには女人によにんほとけになると説かれてゐる。
しかし、女人によにん堂を過ぎて平地になつた時には、そこに平凡な田舎村が現出せられた。駕籠のおろされた宿坊は、避暑地の下宿屋のやうであつた。
仏法僧鳥 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
貴問にいはく、近来娼婦型しやうふけい女人によにん増加せるを如何いかに思ふと。然れども僕は娼婦型の女人の増加せる事実を信ずるあたはず。
娼婦美と冒険 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
……いはほそうは一まいづゝ、おごそかなる、神将しんしやうよろひであつた、つゝしんでおもふに、色気いろけある女人によにんにして、わる絹手巾きぬはんかちでもねぢらうものなら、たゞ飜々ほん/\してぶであらう。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
羅馬ロオマへ行つたら更にこの感が深からうと想はれる。予はまたこの絵画館でリユニイが書いた「女人によにん水浴」の図を見て、近世のシヤヷンヌの画風の由来する所を知つた気がした。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
第一の所化 (長順を顧みつつ)やい、長順、荘厳光明の究竟道くきやうだう、般若波羅密多には行きもせえで、女人によにんの袖に隠るるとは、はて、さて、おぬしたちに善う似合うた邪宗門の勤行よな。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
何もかも——さびを帯びた金色こんじきの仏壇、生気の無いはす造花つくりばな、人の空想を誘ふやうな天界てんがい女人によにんの壁にかれた形像かたち、すべてそれらのものは過去すぎさつた時代の光華ひかり衰頽おとろへとを語るのであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
是時このときわれ思ふ、大衆たいしゆう女人によにんを、恐ろしきときの近づくままに
(旧字旧仮名) / アダ・ネグリ(著)
さてなんぢ女人によにんよ、小賢こざかしき末の世に生れあひて
近づくは女人によにんか、はた蒼顏さうがん傀儡くわいらい
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
女人によにんしゝむらは墜つ。
熱情的なフーガ (新字旧仮名) / 富永太郎(著)
況や、たみのほねをくだける白米しらよね、人の血をしぼれるごとくなるふるさけを、ほとけ法華經ほけきやうにまいらせ給へる女人によにんの、成佛得道疑べしや。
しかしそれぞれ突進し、しかも軌道きだうの上を走ることもやはり機関車と同じことである。この軌道は或は金銭であり、或は又名誉であり、最後に或は女人によにんであらう。
機関車を見ながら (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
日眼女にちがんによ今生こんじやうの祈りのやうだが、教主けうしゆ釋尊像しやくそんざうを造られたから後生成佛ごしやうじやうぶつであらう。二十九億九萬四千八百三十人の女の中の第一の女人によにんであると思はれよ。
が、熱帯の女人によにんの十三にして懐妊くわいにんすることを考へれば、温帯の男子なんしの三十にして頭の禿げるのは当り前である。のみならず「早熟にして晩老」などと云ふ、都合つがふいことは滅多めつたにはない。
僕の友だち二三人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
わたしはこの国の娘のやうに、あなた様のお姿をき上げました。しかもこれは御覧の通り、田植たうゑ装束しやうぞくでございます。けれども円光ゑんくわうがございますから、世の常の女人によにんとは思はれますまい。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
売り立ての古玩はあたひ高うして落札することあたはずといへども、古玩を愛するわが生の豪奢がうしやなるを誇るものなり。文章を作り、女人によにんを慕ひ、更に古玩をもてあそぶに至る、われあに君王くんわうの楽しみを知らざらんや。
わが家の古玩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)