在処ありか)” の例文
旧字:在處
「明朝までに御墨付が返らなければ、生きてお前に逢うのもこれ限りだ、——その娘とやらを拷問にかけても、御墨付の在処ありかただしてくれ」
そこで貞盛為憲等の在処ありかを申せと責めたが、貞盛為憲等は此等の藤原氏どもに捕へられるほど間抜まぬけでも弱虫でも無かつた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ある時は二人の在処ありかを突留めようと思ったり、ある時は自分の年甲斐としがいも無いことを笑ったり、ある時は美しく節操みさおの無い女の心を卑しんだりして
刺繍 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「じゃいよいよ大旦那様はここにお出でなされましたに違いねえ。さあそれじゃ一刻も早くお在処ありかを探し出して……」
月世界競争探検 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
馬に水をくれなかったのでその馬が死んだ。それで自分も死して鳥となり、空高く上って常に水の在処ありかを探している。
その背後うしろ大喇叭おおラッパたばにして、天に向けたような聴音器が据えつけられていたのだった。夜に入ると、この聴音器だけが、飛行機の在処ありかを云いあてた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
また一柳かい。いや、それにしても可羨うらやましいな。魂を入かえたいくらいなもんだ。——もっとも、魂はどこへ飛んだか、当分わからないから、第一その在処ありか
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此の島に漂い着いたというのは……それのみか海賊の口からかたき在処ありかの知れしは是ぞ神の助けであろう、あゝ無分別な事をしては第一神様に対しても相済まぬ
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
五位の入道 それから刀を引き抜くと、講師の胸さきへつきつけながら、阿弥陀仏の在処ありかを責め問うたよ。
往生絵巻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それからは決してお在処ありかをお知らせしますまいと警戒をいたしておりましたのに、どういたしましたことか今年ことしの二月ごろからおたよりがまいるようになりました。
源氏物語:54 蜻蛉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
この鼠のやり方筒井順慶流儀で余り面白くないが、とにかく人に必要な食物の在処ありかを教えた功はある。
新聞で無電小僧の仕業と書き立てたでしょう。そこで無電小僧が怒って、古田の宅へ侵入して彼を縛りつけて探したけれども、ちょっと原稿の在処ありかが分からなかったのです。
ニッケルの文鎮 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
しかし二人とも同じようにめくらですから、スケヤクロウの手の在処ありかが容易に分りません。
さうして彼は考へた——あの騒々しい水音は、きつと、この杖のさせた声であらう。杖はさうすることに依つて、それを捜し求めて居る彼に、杖自身の在処ありかを告げたのであらうと。
「それは気の毒なことをした。私は鶴子に金剛石の在処ありかなんかいってはいないんです」
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
が、此場合瀕死の重傷者に、鍵の在処ありかを尋ねるなどは、余りに心ないことだった。信一郎は、満身の力を振って、じ開けた。金物に付いて、革がベリ/\と、二三寸引き裂かれた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
どの石の在処ありかも彼にとっては何かの意味となった。彼はその在処を皆知っていた。わだちの跡の凹凸おうとつも、彼にとっては地理的の大変化であって、タウヌス連山などとほとんど匹敵するものだった。
「お嬢さん、はい、仰有って下さりませ。この印籠いんろうぬし在処ありかを」
心のアンテナ (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
月の在処ありかだけがんやり分る。……
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
月のごと大きなる、その在処ありかを。
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
わたしの大事なたふとい声の在処ありかを。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
平次の竹刀は続けざまに娘の背に鳴りましたが、娘は身もだえして苦しみながら、どうしても在処ありかを言おうとはしません。
鳥どもは多く巣をその梢に托していると見えて、そちこちに嬉しそうに家普請やぶしんの歌の声が聞えるが、物にまぎれてその在処ありかがよくはわからなかった。
「一般警報だというが、敵機の在処ありかや、台数など、莫迦ばかくわしすぎるじゃないか。民衆には、敵機襲来すべしとだけアナウンスする方が、無難ではないかしら」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
実は彼をその場で押さえて、原稿の在処ありかをいわせるつもりでしたが、紅茶に酔わされて駄目。
ニッケルの文鎮 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
『国史補』に唐の斐旻はいびん一日に虎三十一をたおし自慢しいると、父老がいうにはこれは皆彪だ、将軍真の虎に遇えば能く為すなからんと言ったので、真の虎の在処ありかを聞き往って見ると
傘をすぼめながら一寸会釈して、寺の在処ありかを尋ねた晩成先生の頭上から、じた/\水の垂れる傘のさきまでを見た婆さんは、それでも此辺には見慣れぬ金ボタンの黒い洋服に尊敬をあらわして
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
が、そこに滞在して、かたき在処ありかさぐる内に、家中のさむらいの家へ出入でいりする女の針立はりたての世間話から、兵衛は一度広島へ来てのち、妹壻の知るべがある予州よしゅう松山まつやまへ密々に旅立ったと云う事がわかった。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
床几しょうぎ在処ありかも狭いから、今注いだので、引傾ひっかたむいた、湯沸の口を吹出す湯気は、むらむらと、法師の胸になびいたが、それさえさっと涼しい風で、冷い霧のかかるような、法衣ころもの袖は葭簀を擦って
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それが、こうして見ると、ほんのちょっとした場所を占めているだけなので、その在処ありかを見つけるまでには、とんだ遠方を眺めたり、右や左を見たりして、みんなで相当長い間捜したのだった。
日の在処ありか
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
三日と請合った日は今日限りとなりましたが、どこへどう隠されたか、お雛の在処ありかを嗅ぎ出す手掛りも、その誘拐かどわかしの悪者の当ても付かないのです。
町の人あだ名して鳥御前とりごぜんといふ。早池峰、六角牛の木や石や、すべてその形状と在処ありかとを知れり。年とりて後茸採りにとて一人の連れと共に出でたり。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
傘をすぼめながらちょっと会釈して、寺の在処ありかを尋ねた晩成先生の頭上から、じたじた水の垂れる傘のさきまでを見た婆さんは、それでもこの辺には見慣れぬ金釦きんボタンの黒い洋服に尊敬をあらわして
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
もっとも町内へは屋敷へ女賊が入って、大事の品を盗んで隠したので、その在処ありかを白状させるためという触れ込み。
「お組、それは考え違いだぞ。殿様にはよく申上げて、くれぐれも上納を軽くして頂く、御墨付の在処ありかを言えッ」
「いや、善兵衛には罪はあるだろうが、子供らは何にも知らない。そのような無法な事を言うものではない、黙ってお縄を頂戴して、五人の兄妹の在処ありかを言えッ」
「敵、久留馬登之助の在処ありかがわかりました。今夜、今すぐ名乗りかけて討ちたいと思いますが——」
「平次、これは大変な事だ、一刻も早く曲者の在処ありかを突き留めて百樽の毒薬を取り上げなければならぬ。手不足ならば、何十人、何百人でも手伝わせてやる、どうだ」
「そうじゃない、浪江に跡を取らせたいばかりに、俺はどんなに気をもんだか知れやしない。浪江の在処ありかさえ判れば、俺は倅をれて、ここを出て行く、嘘も偽りもない」
その時は在処ありかの判らなかった妹の身を案じて、今晩は、それを救い出しに入ったのでした。
壁といってもほんのむしろを吊っただけ、道具箱の在処ありかさえ知っていれば、外から手を入れて鑿を取出し、人間一人水中で突いた上、元の場所へ返しておけないことはなかったのです。
三十一年目で父近江を討った不倶戴天ふぐたいてんの敵の在処ありかを見付けたのは喜びにえない。
自分と三平の在処ありかを教えようとしたのを聞いて、始めて殺意を生じ、いよいよ打明けるという今晩、銭湯へ行ったお楽をけて、この路地に誘い入れ、いろいろに説き立てたのですが
「大場家の大事だ。首尾よく御墨付の在処ありかが判れば、礼は存分に取らせる」
「振袖源太、神妙にしろ、福屋の兄妹を五人まで誘拐かどわかした事がお上に相判ったぞッ。逃げようとして逃げられる場合ではない。なまじ罪を重ねるより、お縄を頂戴して、兄妹の在処ありかを申上げろ」
あッ、これは娘の頭に着けていたものでございます。どこから見付かりました、これがあるくらいなら娘の在処ありかもわかったでしょう。これお豊、お豊、ちょいと来てお礼を申し上げな、親分は娘を
「あの時在処ありかの判らなかった二人のうちの一人でございます」