とん)” の例文
当地では石炭の出入しゆつにふに桟橋費一とんにつき三十五銭取られる如き費用を要するのをかれおいては一切省略しようとするのださうである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「これですか? これは驢馬の脳髄ですよ。ええ、一度乾燥させてから、ざつと粉末にしただけのものです。時価は一とん二三銭ですがね。」
河童 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
和蘭陀おらんだのかんてるくというところで建造された軍艦で、木造蒸気内車もくぞうじょうきうちぐるま、砲十二もん馬力ばりき百、二百十とんというすばらしいやつだ。
勿論もちろん外形ぐわいけいあらはれてもなにいぶかしいてんはないが、すこしくわたくし異樣ゐやうおぼえたのは、さう噸數とんすう一千とんくらゐにしてはその構造かうざうあまりに堅固けんごらしいのと
何ほど愚痴をこぼしても愚痴の声で波や風はしずまらない。それよりもこの波をしのいで大海を渡るには千とんの船を造らねばならん。イヤ千噸ではまだ小さい。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
内外諸方へ軍艦用として売り込むものでも毎年およそ何十万とん、いや福の神はとんだところにおいでなされた。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
若しすべての文学者ぶんがくしやかつ兵役へいえき従事じゆうじせしめば常備軍じやうびぐんにはか三倍さんばいして強兵きやうへいじつたちまがるべく、すべての文学者ぶんがくしや支払しはら原稿料げんかうれうつもれば一万とん甲鉄艦かふてつかん何艘なんざうかをつくるにあたるべく
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
千二百とんの小さな船だが救護船の特徴として荒天航行の設備は充分だし、速力も普通船より五割がた早い——大きなゆるい波のうねりを引裂きつつ、まるですべるようにはしって行く。
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
本願寺もうでの行者の類、これに豆腐屋、魚屋、郵便配達などがまじって往来引きも切らず、「早稲わせの香や別け入る右は有磯海ありそうみ」という芭蕉の句も、このあたりという名代の荒海あらうみ、ここを三十とん
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それは五百とんの船で廿六人の水夫、十八人の兵士、一人の船長、三人の助手、医者が一人、牧師が一人、それから番兵が四人、——つまりつごう百人ばかりのものが、ファルマウスから出帆した時
「これですか? これは驢馬ろばの脳髄ですよ。ええ、一度乾燥させてから、ざっと粉末にしただけのものです。時価は一とん二三銭ですがね。」
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
艦長松島海軍大佐かんちやうまつしまかいぐんたいさ號令がうれいはいよ/\澄渡すみわたつて司令塔しれいたふたかく、舵樓だらうには神變しんぺん不可思議ふかしぎ手腕しゆわんあり。二千八百とん巡洋艦じゆんやうかん操縱さうじゆう自在じざい
六千四百とん巨船きよせんもすでになかばかたむき、二本にほん煙筒えんとうから眞黒まつくろ吐出はきだけぶりは、あたか斷末魔だんまつま苦悶くもんうつたへてるかのやうである。