呼起よびおこ)” の例文
領主 その書面しょめんようわ。これへ。……して、夜番よばん呼起よびおこしたはく侍童こわらはとやらは何處どこる?……こりや、其方そち主人しゅじん此處このところへはなにしにわせたぞ?
あるいうまに、或は牛に、此般こんはんの者も多かるべし。しかれども予がかつ聞知ききしれるかれ干支かんししかく巳を重ねたるを奇異とせる記憶は、咄嗟とっさに浅次郎の名を呼起よびおこせり。
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それでもやっと呼起よびおこして、行って見ると卓子テーブルの上に、朱色のチョークで書いてある。——すぐ調べたが、窓のも出入口のドアもちゃんと閉まって鍵がかかっているのだ。
黒襟飾組の魔手 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
取出し大膽にも己が座敷へ立戻たちもど何氣なにげなきていにて明方近くまで一寢入しにはかに下女を呼起よびおこし急用なれば八ツ半には出立のつもなりしが大に寢忘ねわすれたりすぐに出立すれば何も入ず茶漬ちやづけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
く水は再びかえらず、魯陽ろようほこは落日を招きかえしぬと聞きたれど、何人も死者を泉下より呼起よびおこすべきすべを知らぬかぎりは、われも徒爾いたずらに帰らぬ人を慕うの女々めめしく愚痴なるを知る
父の墓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼はそんな風に、死骸と話し続けながら、ふと古い古い記憶を呼起よびおこしていた。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
初めてこの光景に接した時の自分は、無論云うべからざる奇異なる感に打たれたのである。そしてこの奇異なる感は、如何なる理由によって呼起よびおこされたかを、深く考え味わねばならなかった。
銀座界隈 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
隣家となりの宮野邊源之進はこれを聞附きゝつけ思うよう、飯島のごとき手者てしゃところへ押入る狼藉ものだから、大勢たいぜい徒党ととうしたに相違ないから、成るたけ遅くなって、夜が明けてく方がいゝと思いず一同を呼起よびおこ
堅く閉てはやたる樣子也やうすなり然れども此所をおこして尋ねずばいづれにも尋ぬる方あるまじと思ひ門の戸をたゝきて呼起よびおこすに未だ内には寢ざるにや年寄たるをんなの聲にて應と言て門の戸をあけ友次郎の顏を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
室内昼の如くにてらさせて四辺あたりくまなく穿索したがもとより何物を見出そう筈もなく、動悸どうきの波うつ胸を抱えて、私は霎時しばらく夢のように佇立たたずんでいたが、この夜中やちゅう馴染なじみも薄い番人を呼起よびおこすのも如何いかが
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
取出し煙草たばこくゆらせ居たりしが九郎兵衞は彌々いよ/\ゑひが廻りしきりにほく/\居眠ゐねふるつひに其所へ正體しやうたいもなく打臥うちふしたり依て惣内お里は夫に當惑たうわくなし何かゑひさめる藥はなきやと考へしに惣内は不※ふと心付此宿外れに藥種屋有ば夜中ながらも呼起よびおこして早々藥を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)