出揃でそろ)” の例文
おつぎのまだみじか身體からだむぎ出揃でそろつたしろからわづかかぶつた手拭てぬぐひかたとがあらはれてる。與吉よきちみちはたこもうへ大人おとなしくしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「するとつまり、辣腕らつわんなんですな」保馬はそう云って調書を見まわした、「——だいぶ出揃でそろったが、そろそろ役所のほうと突合せにかかるかな」
いしが奢る (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
人参の芽が出揃でそろわぬところわらが一面にいてあったから、その上で三人が半日相撲すもうをとりつづけに取ったら、人参がみんなみつぶされてしまった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
広小路ひろこうじへ曲ると、夜店が出揃でそろって人通りもしげくなったので、二人はそのまま話をやめて雷門かみなりもんまで来た。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
東の空が白む頃関係者は学校へ出揃でそろい、木型を車に積んで運び出しましたが、上野から宮城までにかれこれ二時間位掛かり、御門を這入って、それから三本の足場を立て
その穂は僕等の来た時にはまだすっかり出揃でそろわなかった。出ているのもたいていはまっさおだった。が、今はいつのまにかどの穂も同じように狐色きつねいろに変り、穂先ごとにしずくをやどしていた。
海のほとり (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
やがて若蘆の芽のくきくきと出揃でそろう頃は、夕月の影をくだいて満ち潮のなごりがらと頭越しに流れよるようになる。大空は梅が香の艶なにおいに朦朧もうろうとして、月も曇りに近いかすみ方である。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
そのふもとまで見通しの、小橋こばし彼方かなたは、一面の蘆で、出揃でそろってや乱れかかった穂が、霧のように群立むらだって、藁屋わらやを包み森をおおうて、何物にも目をさえぎらせず、山々のかやすすき一連ひとつらなびいて、風はないが
海の使者 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
麦の穂の出揃でそろふ頃のすが/\し
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
二日目になってようやく学校へ出て見ると、教師はまだ出揃でそろっていなかった。学生も平日いつもよりは数が不足であった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こう見えたってはばかりながら役者だ。伊井いい一座の新俳優だ。明後日あさってからまた新富町しんとみちょうよ。出揃でそろったら見に来給え。いいかい。楽屋口がくやぐちへ廻って、玉水たまみずを呼んでくれっていいたまえ。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
京都きやうといた一日目いちにちめは、夜汽車よぎしやつかれやら、荷物にもつ整理せいりやらで、徃來わうらい日影ひかげらずにらした。二日目ふつかめになつてやうや學校がくかうると、教師けうしはまだ出揃でそろつてゐなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
出揃でそろつたら見に来給きたまへ。いゝかい。楽屋口がくやぐち𢌞まはつて、玉水たまみづを呼んでくれつてひたまへ。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)