冬枯ふゆが)” の例文
いままでかがやかしかったやまも、野原のはらも、もはや、冬枯ふゆがれてしまいました。そして、あわれな、えだまったはとのはねにはなおさむ北風きたかぜいているのであります。
兄弟のやまばと (新字新仮名) / 小川未明(著)
師走しはす中頃なかごろで、淀川堤よどがはづつみには冬枯ふゆがれのくさひつじのやうでところ/″\にまるいたあとくろえてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ひとこゑは、ひとこゑかんがへはかんがへと別々べつ/\りて、さら何事なにごとにものまぎれるものなく、人立ひとだちおびたゞしき夫婦めをとあらそひの軒先のきさきなどをぐるとも、たゞれのみは廣野ひろのはら冬枯ふゆがれをくやうに
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
歩いてうちいつか浅草公園の裏手うらてへ出た。細いとほりの片側かたがはには深いどぶがあつて、それを越した鉄柵てつさくむかうには、処々ところ/″\冬枯ふゆがれして立つ大木たいぼくしたに、五区ごく揚弓店やうきゆうてんきたならしい裏手うらてがつゞいて見える。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
平次は縁側に立つて、冬枯ふゆがれの小さい庭を眺めやりました。
とうとう、二、三にちのちでした。年子としこは、きたへゆく汽車きしゃなかに、ただひとりまどってうつわってゆく、冬枯ふゆがれのさびしい景色けしきとれている、自分じぶんいだしました。
青い星の国へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
まどからそとると、あたりの田圃たんぼや、雑木林ぞうきばやしは、まだ冬枯ふゆがれのしたままであって、すこしもはる気分きぶんただよっていなかったのです。山々やまやまには、ゆきしろひかっていました。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひろ野原のはらなかに、紫色むらさきいろのすみれのはなきかけましたときは、まだやまゆきしろくかかっていました。はるといっても、ほんのばかりであって、どこをても冬枯ふゆがれのままの景色けしきでありました。
いろいろな花 (新字新仮名) / 小川未明(著)