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冬枯
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ふゆが
いままで
輝かしかった
山も、
野原も、もはや、
冬枯れてしまいました。そして、
哀れな、
枝に
止まったはとの
羽にはなお
寒い
北風が
吹いているのであります。
師走の
中頃で、
淀川堤には
冬枯れの
草が
羊の
毛のやうでところ/″\に
圓く
燒いた
痕が
黒く
見えてゐた。
人の
聲は、
人の
聲、
我が
考へは
考へと
別々に
成りて、
更に
何事にも
氣のまぎれる
物なく、
人立おびたゞしき
夫婦あらそひの
軒先などを
過ぐるとも、
唯我れのみは
廣野の
原の
冬枯れを
行くやうに
歩いて
行く
中いつか浅草公園の
裏手へ出た。細い
通りの
片側には深い
溝があつて、それを越した
鉄柵の
向うには、
処々の
冬枯れして立つ
大木の
下に、
五区の
揚弓店の
汚らしい
裏手がつゞいて見える。
平次は縁側に立つて、
冬枯れの小さい庭を眺めやりました。
とうとう、二、三
日の
後でした。
年子は、
北へゆく
汽車の
中に、ただひとり
窓に
凭って
移り
変わってゆく、
冬枯れのさびしい
景色に
見とれている、
自分を
見いだしました。
窓から
外を
見ると、あたりの
田圃や、
雑木林は、まだ
冬枯れのしたままであって、すこしも
春の
気分が
漂っていなかったのです。
山々には、
雪が
真っ
白に
光っていました。
広い
野原の
中に、
紫色のすみれの
花が
咲きかけましたときは、まだ
山の
端に
雪が
白くかかっていました。
春といっても、ほんの
名ばかりであって、どこを
見ても
冬枯れのままの
景色でありました。