先程さきほど)” の例文
先程さきほど、春生が一泳ぎして来る、と行ったきり、なかなか帰って来なかった。春生も矢張りあの疑問が解けずにいるらしいのだ。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「いいえ。らぬことはございますまい。先程さきほどかけなさるときおびんとやらおっしゃったのを、しん七は、たしかにこのみみきました」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
まがると先程さきほど糸屋いとやまへ眞直まつすぐけば大通おほどほりへ仕舞しまひますたしか裏通うらどほりとおほせで御座ございましたが町名ちやうめいなんまをしますか夫次第それしだい大抵たいていわかりませうと問掛とひかけたり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのことは先程さきほども申上げました。どうして仕事をいたしませうか、どうして仕事をさがしませうか、仰しやつて下さいまし。それだけが今伺ひたいのでございます。
『とにかく、先程さきほどのお話の件だが……路傍みちばたでは人に怪しまれようし。……そうそう、蒟蒻島こんにゃくじま知人しりびとが、出合茶屋であいぢゃやをかねた船宿をしておるから、そこ迄、お越し下さらぬか』
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、先程さきほどあなたがかくれていた橋の下へはいってゆくにきまっているのです。実を言うと僕はさっきあなたをその男と間違えてあんな失礼な真似をしてしまったのです。
動物園の一夜 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
先程さきほども申した通り活力節約活力消耗の二大方面においてちょうど複雑の程度二十を有しておったところへ、俄然がぜん外部の圧迫で三十代まで飛びつかなければならなくなったのですから
現代日本の開化 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先程さきほどから萬屋よろづや主人あるじは、四でふかこひ這入はいり、伽羅きやらいてかうを聞いてりました。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
先程さきほどまでの、享楽をおもっての興奮はどこへやら、ただ血眼ちまなこになってしまった、ぼくは、それでも、ひょッとしたら落ちてはいないかなアと、浅ましい恰好かっこうで、自動車のみちすじを、どこからどこまで
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
さつ押開おしひら御免成ごめんなされと長兵衞の弟なる中仙道熊谷宿の寶珠花屋はうじゆはなや八五郎此所へ入來たり是は/\後藤先生新藤市之丞樣まことに久々の御目どほり先々御機嫌きげんよく恐悦きようえつに存じ奉つる道理だうりこそ先程さきほどより一ト間の内にて御はなしのこゑ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大勘定おほかんぢやうとて此夜このよあるほどのかねをまとめて封印ふういんことあり、御新造ごしんぞそれ/\とおもして、すゞり先程さきほど屋根やねやの太郎たらう貸付かしつけのもどり彼金あれが二十御座ござりました、おみねみね
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
文「うん、先程さきほど殺した」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かんじ何分宜しく頼むなりと申せしとき又八五郎は半四郎に向ひ先生先程さきほどは一たん申上たれども其實今晩こんばんむら寄合よりあひと申せしは僞りに候あひだ今宵こよひ寛々ゆる/\とまり下さるゝ樣にと申ければ半四郎は莞爾につこと笑ひ夫はさいはひもはや時刻じこくおそくなりしうへ某しも大いに飮過たるにより御亭主の言葉に隨ひ今夜は世話せわに成べしらば今一升かん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)