うそ)” の例文
旧字:
漸々だんだん毛が抜け変って赤くなります。」といった。私は、好い加減なうそをいうのだと思って、別に「うか。」とも答えなかった。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
岩松の言葉には、もう掛引もうそもあろうとは思われません。それを聞いて一番驚いたのは、隅の方にうずくまっていた、縄付の新吉でした。
「大丈夫です。うそだろうが本当だろうが、奥さんのおっしゃる事ならけっして腹は立てませんから、遠慮なさらずに云って下さい」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なまけていなかったという言葉のうそでないことが分れば、それで私はいのでしたから、別にいうこともありませんでした。
「大王。こいつはうそつきです。立ち聴きをしてゐたのです。寝てゐたなんてうそです。ご馳走なんてとんでもありません。」
月夜のけだもの (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
これではこの新しい興味ある口碑は単なるうそとなって立ち消えねばならぬはかない運命のものであらねばならぬはずである。
東奥異聞 (新字新仮名) / 佐々木喜善(著)
第一其等が有難いと云うな、うその有難いんだ。何となれば、文学哲学の価値を一旦根底から疑って掛らんけりゃ、真の価値は解らんじゃないか。
私は懐疑派だ (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
うそくないとか、親切なとか、云はば普通の女の普通の取なしの外になにが男をひきつけるものがあつたであらうか。
瘢痕 (新字旧仮名) / 平出修(著)
お見受けしたところ決してお嬢様はうそなど云う方ではありませんが——お聞かせ願いたいのでございます。
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
『藤野さんア水車の心棒に捲かれて、杵に搗かれただ。』と大声に喚いた。私はうそともまこととも解らず、唯強い電気にでも打たれた様に、思はず声を立てて『やあ』と叫んだ。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
うそだよ! 俺はこっちを向いて話してたもんだから、あの時まで知らなかったんだよ」
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
髪は文金ぶんきん帷子かたびら御納戸地おなんどぢ大名縞だいみょうじまといふこしらえかせぐとはうそまことか、肉置ししおき善き体ながらどちらかといへば面長おもながの方なるに、杯洗はいせんの上にうつむいてどつちが円いかしらなどとはどういふ心か
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
鄙劣ひれつ千万な、計略をめぐらして母の病気とまでうそわせる、ソンナ奴があるものか、モウけだ、大議論をしてろうかとおもったが、イヤ/\左様そうでない、今アノ家老と喧嘩をした所が
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
どうもあの婦人の様子がおかしいおかしいと思いました。あれはうその白痴ですよ。偽の婦人おんなですよ。白粉おしろいなんかをいやにけてると思いましたが、今になって考えると、あれは男の顔ですよ
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私は何だかうそのやうな気がして、ぼんやりお母さんの顔を見てゐると
お母さんの思ひ出 (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
まことうそか知りませんが、息子の秀雄さんがさう申しました。
田舎からの手紙 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
△はるなたをこく——これはうそを言うということらしい
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
(あれはうそだ)
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「へん。うそなら俺の頭がけてしまうがいいさ。頭と胴と尾とばらばらになって海へ落ちて海鼠なまこにでもなるだろうよ。偽なんか云うもんか。」
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
今日を好機会として、この昔ばなしの中にはなして置くことは、間違いをただし、うそを取り消すよすがともなろうと存じてかくは話をしたような訳であります。
いずれもうそっこで、あとで物識りどもの付会したマガゴトだということがなんぴとにも明瞭とわかりすぎますから、私はここにはそんな蛇足は付け加えませぬ。
東奥異聞 (新字新仮名) / 佐々木喜善(著)
「いいえうそです、林君もそばに見ていました。小西君が先き私を突いたのです。」小西とは清吉の姓である。
蝋人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「天地人の三左陣、みんな立派な大泥棒、わけても人丸左陣と云うのは年の若いに思慮があって、それに美男だと聞いていたが、ほんとに噂にうそはない。……わたしは何んだか恥ずかしくなったよ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
が、そこまでは豈夫まさかに思い切れなかった。人生は無意味ノンセンスだとは感じながらも、俺のやってる事はうそだ、何か光明の来る時期がありそうだとも思う。要するに無茶さ。だから悪い事をしては苦悶する。
予が半生の懺悔 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
うその子だとか、本当の子だとか区別しなければ好いんです。平たく当り前にして下されば好いんです。遠慮なんぞなさらなければ好いんです。なんでもない事をむずかしく考えなければ好いんです」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うそつけ! 来ねえことがあるものか」
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
「ああはは、そいづぁうそぞ。楢夫などぁいっつも一人して湯さ入るもな。風の又三郎などぁうそこぎさ。泣ぐな、泣ぐな。」
ひかりの素足 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
そういう大木でしかも材質が上等で彫刻の材料になろうというのが一本ただの三円とは、まるでうそのようなことですが、それでも、宿屋の主婦に相場を聞いて見ると、少し高いという話。
真実ほんとの事はなかなか出ない、髣髴として解るのは、各自めいめいの一生涯を見たらばその上に幾らか現われて来るので、小説の上じゃ到底うそッぱちより外書けん、と斯う頭から極めて掛っている所があるから
私は懐疑派だ (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
私は死ぬるということはうそだと思った。
黄色い晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「それはうそだ。それに第一おまへらにマラソンなどは要らん。そんなことをしてゐるからいつまでも立派にならんのだ。いま何を仕事にしてゐる。」
月夜のけだもの (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
こればかりはうそでない。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
農民二「六人さ、まるっきり同じごと言ってうそこいで、そしてで威張って、診察料よごせだ、全体、何の話だりゃ。」
植物医師:郷土喜劇 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「僕らは彗星にだまされたのです。彗星は王さまへさえうそをついたのです。本当ににくいやつではありませんか。」
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
どうもデストゥパーゴが大びらに陸軍の獣医たちなどと交際するなんてうそらしいとわたくしは思いました。
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そしてすぐ考へたのです。あゝ僕はたった一人のお友達にまたついうそを云ってしまった。あゝ僕はほんたうにだめなやつだ。けれども決して悪い気で云ったんぢゃない。
土神と狐 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
そしてすぐ考えたのです。ああ僕はたった一人のお友達にまたついうそを云ってしまった。ああ僕はほんとうにだめなやつだ。けれども決して悪い気で云ったんじゃない。
土神ときつね (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「火花を出すな。銅臭くていかん。こら。うそをつくなよ。今どこへ行くつもりだったのだ。」
月夜のけだもの (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
大丈夫だいじょうぶ狐小学校があるということがわかりますから。ただれも云って置きますが狐小学校があるといってもそれはみんな私の頭の中にあったと云うので決してうそではないのです。
茨海小学校 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
黒板には「最高のうそは正直なり。」と書いてあり、先生は説明をつづけました。
茨海小学校 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
どうせ昔のことですからたれもよくわかりませんが多分うそではないでしょうか。
とっこべとら子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
まったくなんだか本当のようなうそのような変な気がして仕方なかったのです。
鳥をとるやなぎ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「そいぢゃきつねが人をだますなんてうそかしら。」
雪渡り (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「そいじゃきつねが人をだますなんてうそかしら。」
雪渡り (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
うそを云うとそれも罪に問うぞ。」
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)