便船びんせん)” の例文
ここからは、フランス行きの便船びんせんがでる。フランスへわたり、汽車きしゃでスペインへいって、そこからアフリカのアルジェリアへいくつもりだ。
のう、便船びんせんしょう、便船しょう、と船をなぎさへ引寄せては、巌端いわばなから、松の下から、飜然々々ひらりひらりと乗りましたのは、魔がさしたのでござりましたよ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いや、長崎から越後港えちごみなとへ、南蛮呉服なんばんごふくをつんできた親船おやぶねが、このおきにとまってるんでさ。どうせ南へ帰る便船びんせんだ、えんりょなく乗っていくがいい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此処等ここらで出来る瓦や木材や米や麦や——それ等は総て此川を上下する便船びんせんで都に運び出されることになつて居た。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
急いで蟹沢の船場迄行つて、便船びんせんは、と尋ねて見ると、今々飯山へ向けて出たばかりといふ。どうもよんどころない。次の便船の出るまで是処こゝで待つより外は無い。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
其後そのご便船びんせん通知つうちまいりましたので、そのほうやうやむねでおろし、日本につぽんかへこと其儘そのまゝおもとゞまつたのです。
のぼせる程の身代になりしと聞少しく落付おちつきしからば是より江戸へ下り本郷へ尋ね行て身の落付を頼まんと思ひけれども元來吾助は船によわき生れ付なれ共くらゆゑ便船びんせん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「大洋を横断する? いやわれわれは、まず南米に近いみなとにわたって、便船びんせんを求めるつもりである」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
便船びんせんをたのんで上総かずさへ渡り、さらに木更津から船路の旅をつづけてつつがなく江戸へはいった。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
便船びんせんごと護謨ごむ業関係者の日本から来る者が三四人をくだらない有様だ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「なるほど。じつはわしもこれからみやこへでて、安土あづち秀吉公ひでよしこうへすがり、なんとかいとぐちをつけようと考えているが、うまくとちゅうまでの便船びんせんでもあるまいか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十一屋の隠居の話で、半蔵らはそれが埼玉さいたま川越かわごえの方から伊勢町河岸いせちょうがしへと急ぐ便船びんせんであることを知った。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お爺さん、主婦、それから便船びんせんを幸ひに東京まで乗せて行つて貰はうといふ隣のお爺さんも乗つた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
求めて九州へおもふかんと大坂にて兩三日逗留とうりうし所々を見物けんぶつ藝州迄げいしうまで便船びんせんあるを聞出きゝだして此を頼み乘しが順風じゆんぷうなれば日ならずして廣島の地にちやくせしかば先廣島を一けんせんと上陸じやうりく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たまたま貨物船セルベン号がチリーのバルパライソにむかって航海するうわさを耳にした夫妻は、手をうって喜んだ、さっそくケートが走って船長に便船びんせんかたをたのんだ。それはすぐにゆるされた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
彼等は坡港はかうを「みやこ」と称し、其他そのたを「田舎ゐなか」と称してあたかも東京から千葉や埼玉へ出掛ける位の心持で便船びんせんごとそれ等の遠国ゑんごくへ往復する。昔の倭寇の意気は彼等につて継承されて居ると云つて好からう。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
寶澤は盜賊たうぞく殺害せつがいされしていこしらへ事十分調とゝのひぬと身は伊勢參宮いせまゐり姿なりやつし一先九州へ下り何所いづかたにても足を止め幼顏をさながほうしなひて後に名乘なのり出んものと心は早くも定めたりまづ大坂へいで夫より便船びんせん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「チリー国の沿岸は、曲折きょくせつ出入が多くてはなはだ危険であるが、ここより一直線に南航してチリー国の港に入港すれば、チリー国の住民はみな親切であるから、便船びんせんを求める便宜べんぎはえられると思う」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)