乳母めのと)” の例文
乳母めのとの子で蔵人くろうどから五位になった若い男と、特に親しい者だけをお選びになり、大将は今日明日宇治へ行くことはないというころを
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
わがかくいふは「エーネイダ」の事なり、こは我には母なりき詩の乳母めのとなりき、これなくば豈我に一ドラムマのおもさあらんや 九七—九九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
およしをば六騎ろつきがながれ、我が乳母めのと、そのかの一人。笛鳴るに太鼓とよむに、水祭また御らうぜよ、舟よしと、さて棹さしぬ。
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
忠義の乳母めのとももとより結構ではあるが、真実の母としてかの政岡をみた方がさらに一層の自然を感じはしまいか。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
召し使ひたる男女なんにょ共、あたゞに立ち騒ぎ打ち喜びて、かほどの首尾しあわせはよもあらじと、今までに引き換へてさゞめき合ひ候ひしが、そが中に唯一人、妾をり育て候乳母めのとの者
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その実姉に至っては、春日局かすがのつぼねに引き立てられ、四代将軍綱吉の乳母めのと、それになった矢島局であり、そういう縁故があるところから、町奉行以下の役人達も二目も三目も置いていた。
二人町奴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
つま九七にんはてぬ此の春、かりそめのやまひに死し給ひしかば、便なき身とはなり侍る。都の乳母めのとあまになりて、行方ゆくへなき修行しゆぎやうに出でしと聞けば、九八彼方かなたも又しらぬ国とはなりぬるをあはれみ給へ。
行歩こうほすこやかに先立って来たのが、あるき悩んだ久我くがどのの姫君——北のかたを、乳母めのとの十郎ごんかみたすけ参らせ、おくれて来るのを、判官がこの石に憩って待合わせたというのである。目覚しい石である。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
乳母めのと税所さいしょ敦子は——抱傅おもりやくの吉井は)
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
乳母めのとたちは乳母たちでいっしょに集まって、悲しんでいた。日も落ちたし雪も降り出しそうな空になって来た心細い夕べであった。
源氏物語:31 真木柱 (新字新仮名) / 紫式部(著)
かれの乳母めのとは、かれが屡〻目を醒しつゝ默して地に伏し、そのさま我このために生るといふが如きを見たり 七六—七八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
乳母めのとと見えて一人の婦人が後につづいて現われたが、空をあおいでたたずんだ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
九五ゆめあだなることにな聞き給ひそ。もとは都のうまれなるが、父にも母にもはやうわかれまゐらせて、乳母めのともと成長ひととなりしを、此の国の九六受領じゆりやう下司したづかさあがた何某なにがしに迎へられてともなくだりしははやく三とせになりぬ。
涼しや涼しやと乳母めのとした。
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
どんな運命がここに現われてきても、この人がだれよりも不遇で置かれるはずはないと思われるのである。姫君の乳母めのとを相手に夫人は
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
無明むみやうひとやの第一の輪の中にあり、我等は我等の乳母めのと等の常にとゞまる山のことをしばしばかたる 一〇三—一〇五
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
中納言の乳母めのとの宰相の君は、あの当時の大臣の処置に憤慨して、今も恨めしがっているのであったから、得意な気持ちで大臣に言った。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
汝等は無明の慾に迷ひ、あたかも死ぬるばかりにゑつゝ乳母めのとを逐ひやる嬰鬼をさなごの如くなりたり 一三九—一四一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
この女は柏木の大納言の乳母めのとの子であって、父はここの女王たちの母夫人の母方の叔父おじの左中弁で、亡くなった人だったのである。
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
乳母めのとの中でも上級な人たちをお呼び出しになって、裳着もぎの式の用意についていろいろお命じになることのあったついでに、院は
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
今も以前の恋の続きにその方のことを聞き出す道具に使っている女三の宮の小侍従という女は、宮の侍従の乳母めのとの娘なのである。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
若君は乳母めのとの所で寝ていたのであるが、目をさましてい寄って来て、院のおそでにまつわりつくのが非常にかわいく見られた。
源氏物語:37 横笛 (新字新仮名) / 紫式部(著)
新しい乳母めのとたちは皆はなやかな服装をしていて、お膳部から女房たちのためのお料理の盛られた器まで皆きれいな感じのする式場であった。
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
無邪気な笑顔えがお愛嬌あいきょうの多いのを源氏は非常にかわいく思った。乳母めのとも明石へ立って行ったころの衰えた顔はなくなって美しい女になっている。
源氏物語:18 松風 (新字新仮名) / 紫式部(著)
源氏は東の対へ行って、中将という女房に足などをでさせながら寝たのである。翌朝はすぐにまた大臣家にいる子供の乳母めのとへ手紙を書いた。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
院はこうお言いになって、いよいよその心におなりになり、まず三の宮のお乳母めのとの兄である左中弁から六条院へあらましの話をおさせになった。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
宮のお悲しみが少し静まってきたころからは御自身で返事もお書きになるようになった。それを恥ずかしく思召すのであったが、乳母めのとなどから
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
乳母めのとは車の拝借を申し出て常陸ひたち様の所へ帰って行った。常陸夫人に昨夜のことを報告するとはっと驚いたふうが見えた。
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
と守は言い、愛嬢を昼から乳母めのとと二人ででるようにして繕い立てていたから、そう醜いふうの娘とは見えなかった。
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
乳母めのと部屋へやをもらって住んでいればいいし、女王は何人も若い子がいるからいっしょに遊んでいれば非常にいいと思う
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
乳母めのとなどは新しい人をお見つけになることは当分されずに、これまでの六条院の女房の中から、身柄も性質もよい人ばかりを選んでお付けになった。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
そのうちに、乳母めのと良人おっとが九州の少弐しょうにに任ぜられたので、一家は九州へ下った。姫君の四つになる年のことである。
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
乳母めのとには貴族の出の人ばかりが何人も選ばれて付いていた。その人たちを呼び出して、若君の取り扱いについての注意をお与えに院はなるのであった。
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
源氏が六条に恋人を持っていたころ、御所からそこへ通う途中で、だいぶ重い病気をし尼になった大弐だいに乳母めのとたずねようとして、五条辺のその家へ来た。
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
また乳母めのとたちといっても、ああした人たちの周到さには限度があるのですものね、母がいなければと思いますが
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
こう言いながら乳母めのとのそばへ寄って来た声がかわいかった。これは父宮ではなかったが、やはり深い愛を小女王に持つ源氏であったから、心がときめいた。
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
まだ鶏の鳴いているころに出立たせたと言っている使いにどうこの始末を書いて帰したものであろうと、乳母めのとをはじめとして女房たちは頭を混乱させていた。
源氏物語:54 蜻蛉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
乳母めのとがどうかして自分に人並みの幸福を得させたいとあせっていたかしれぬのにあの成り行きを見て、さぞ落胆をしたことであろう、今はどこにいるだろう
源氏物語:55 手習 (新字新仮名) / 紫式部(著)
私の父の乳母めのとをしておりまして、今は老人としよりになっている者の家でございます。東山ですから人がたくさん行く所のようではございますが、そこだけは閑静です
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
親しい侍を一人つけて、あくまでも秘密のうちに乳母めのとは送られたのである。守り刀ようの姫君の物、若い母親への多くの贈り物等が乳母に託されたのであった。
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
乳母めのとも明石の君の優しい気質に馴染なじんで、よい友人を得た気になって、京のことは思わずに暮らしていた。
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
小侍徒は姫君の乳母めのとの娘である。独言ひとりごとを聞かれたのも恥ずかしくて、姫君は夜着を顔にかぶってしまったのであったが、心では恋人をあわれんでいた、大人のように。
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
またいろいろな山荘の女房たちの着用するものも自身の乳母めのとなどに命じて公然にも製作させた薫であった。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
納殿おさめどのなどのことも、信用する少納言の乳母めのとを上にして何人かの家司をそれにつけて、夫人の物としてある財産の管理上の事務を取らせることに計らったのである。
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
と大臣は言って、それから乳母めのとを責めるのであった。乳母は大臣に対して何とも弁明ができない。ただ
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
少納言しょうなごん乳母めのとという人がいるはずだから、その人にって詳しく私のほうの心持ちを伝えて来てくれ」
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
この家の持ち主は西の京の乳母めのとの娘だった。乳母の娘は三人で、右近だけが他人であったから便りを聞かせる親切がないのだと恨んで、そして皆夫人を恋しがった。
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
乳母めのとは恥ずかしくも思ったが、気の毒なことだったとも思いおかわいらしい恨みであるとも思った。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
左衛門さえもん乳母めのとといって、源氏からは大弐だいにの乳母の次にいたわられていた女の、一人娘は大輔たゆう命婦みょうぶといって御所勤めをしていた。王氏の兵部ひょうぶ大輔である人が父であった。
源氏物語:06 末摘花 (新字新仮名) / 紫式部(著)
入道はこう妻と娘に言ったままで、室の片隅かたすみに寄っていた。妻と乳母めのととが口々に入道を批難した。
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)