九時くじ)” の例文
雖然けれども曳惱ひきなやんで、ともすれば向風むかひかぜ押戻おしもどされさうにる。暗闇やみおほいなるふちごとし。……前途ゆくさき覺束おぼつかなさ。うやら九時くじのにひさうにおもはれぬ。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
炬燵こたつの火もいとよし、酒もあたゝめんばかりなるを。時は今何時なんどきにか、あれ、空に聞ゆるは上野うへのの鐘ならん。二ツ三ツ四ツ、八時はちじか、いな九時くじになりけり。
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
やが海底戰鬪艇かいていせんとうていが、いよ/\秘密造船所ひみつざうせんじよづるはづ午前ごぜん九時くじになると、一發いつぱつ砲聲ほうせいとゞろいた。
……雨風あめかぜ猶豫ためらつて、いざと間際まぎはにも、卑怯ひけふに、さて發程たたうか、めようかで、七時しちじ急行きふかう時期じきごし、九時くじにもふか、ふまいか。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ときいま何時なんどきにか、あれ、そらきこゆるは上野うへのかねならん、ふたつ、八時はちじか、いな九時くじになりけり、さてもおそくおはしますことかな、いつも九時くじのかねはぜんうへにてたまふを
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ときてばつだけ、それだけおうらかへのぞみがくなるとつた勘定かんぢやう九時くじ十時じふじ十一時じふいちじぎても音沙汰おとざたい。時々とき/″\廊下らうか往通ゆきかよ女中ぢよちゆうが、とほりすがりに
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
翌朝よくてうまだ薄暗うすぐらかつたが、七時しちじつたくるまが、はずむ酒手さかてもなかつたのに、午後ごご九時くじふのに、金澤かなざは町外まちはづれの茶店ちやみせいた。屈竟くつきやうわかをとこふでもなく年配ねんぱい車夫くるまやである。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)