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一切
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ひときれ
ふりがな文庫
“
一切
(
ひときれ
)” の例文
主人は菓子皿のカステラが
一切
(
ひときれ
)
足りなくなった事には気が着かぬらしい。もし気がつくとすれば第一に疑われるものは吾輩であろう。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
おむすび一つ、沢庵
一切
(
ひときれ
)
にも、人の心の奥は知れるものです。それをうれしく思いまして、その兎の飼ってある家へ幸福を分けて置いて来ました。
幸福
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
若
(
わか
)
いものが
歸
(
かへ
)
ると、
此
(
こ
)
の
話
(
はなし
)
をして、
畜生
(
ちくしやう
)
の
智慧
(
ちゑ
)
を
笑
(
わら
)
ふ
筈
(
はず
)
が、
豈
(
あに
)
計
(
はか
)
らんや、ベソを
掻
(
か
)
いた。
餅
(
もち
)
は
一切
(
ひときれ
)
もなかつたのである。
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
たとへ使ひ古した半紙や巻紙の
一切
(
ひときれ
)
でも、何か棄てるに忍びないではないか。
紙縒
(
こより
)
にでもすれば又甦つて来るからである。昔の人はそれで布を織つた。
和紙の教へ
(新字旧仮名)
/
柳宗悦
(著)
セエラは戸棚から厚く切ったお菓子を
一切
(
ひときれ
)
出して、ベッキイにやりました。セエラは、ベッキイがそれをがつがつ食べるのを、うれしそうに見ていました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
▼ もっと見る
卯平
(
うへい
)
は
時々
(
とき/″\
)
鹽鮭
(
しほざけ
)
の
一切
(
ひときれ
)
を
古新聞紙
(
ふるしんぶんし
)
の
端
(
はし
)
へ
包
(
つゝ
)
んで
來
(
き
)
ては
火鉢
(
ひばち
)
へ
鐵
(
てつ
)
の
火箸
(
ひばし
)
を
渡
(
わた
)
して、
少
(
すこ
)
し
燻
(
いぶ
)
る
麁朶
(
そだ
)
の
火
(
ひ
)
に
燒
(
や
)
いた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
小町はもう乞食になっているのですから、年玉をやるよりも餅
一切
(
ひときれ
)
でもやった方がよかろうというのであります。色気よりも食い気といったところであります。
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
お葉は、水の一滴牛乳の一つも林檎の
一切
(
ひときれ
)
も口に入れなかった。そして改めて、空を見、窓を見、壁を見、天井を見て、自分の明らかに開いた二つの目を悲しく思った。
青白き夢
(新字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
一切
(
ひときれ
)
つまめば、それ以上の慾心を人に起させない。が幾種類かの洋菓子は、それぞれに味覚をそそる。どの種類のものも一つずつ食べてみたくなる。而も形が大きい。そして胃には有害だ。
慾
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
是
(
これ
)
はね、
昨日
(
きのふ
)
ある
人
(
ひと
)
の
銀婚式
(
ぎんこんしき
)
に
呼
(
よ
)
ばれて、
貰
(
もら
)
つて
來
(
き
)
たのだから、
頗
(
すこ
)
ぶる
御目出度
(
おめでたい
)
のです。
貴方
(
あなた
)
も
一切
(
ひときれ
)
位
(
ぐらゐ
)
肖
(
あやか
)
つても
可
(
い
)
いでせう
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
あひなるべくは
多治見
(
たぢみ
)
へのして、
陶器製造
(
たうきせいざう
)
の
模樣
(
もやう
)
までで、
滯在
(
たいざい
)
少
(
すくな
)
くとも
一週間
(
いつしうかん
)
の
旅費
(
りよひ
)
として、
一人前
(
いちにんまへ
)
二十五兩
(
にじふごりやう
)
、
注
(
ちう
)
におよばず、
切
(
きり
)
もちたつた
一切
(
ひときれ
)
づゝ。
火の用心の事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
そうして町井さんの予言の通り
形
(
かた
)
ばかりとは云いながら、
小
(
ち
)
さい
一切
(
ひときれ
)
の
餅
(
もち
)
が元日らしく病人の
眸
(
ひとみ
)
に映じた。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
玉子
(
たまご
)
は
可
(
い
)
いが、
右
(
みぎ
)
の
肉
(
にく
)
で、うかつには
手
(
て
)
が
着
(
つ
)
けられぬ。
其處
(
そこ
)
で、パンを
一切
(
ひときれ
)
燒
(
や
)
いて
貰
(
もら
)
つた。
大阪まで
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
もう少し聞いている内にはあるいはあたりがつくかも知れないと思って、
敬太郎
(
けいたろう
)
は自分の前に残された皿の上の
肉刀
(
ナイフ
)
と、その傍に転がった赤い
仁参
(
にんじん
)
の
一切
(
ひときれ
)
を
眺
(
なが
)
めていた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
仏様のうしろで、
一切
(
ひときれ
)
食や、うまし、二切食や、うまし……
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼は自分の前に置かれた紅茶茶碗の底に冷たく浮いている
檸檬
(
レモン
)
の
一切
(
ひときれ
)
を
除
(
よ
)
けるようにしてその余りを残りなく
啜
(
すす
)
った。そうしてそれを
相図
(
あいず
)
に、自分の持って来た用事を細君に打ち明けた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
まず
桃川如燕
(
ももかわじょえん
)
以後の猫か、グレーの金魚を
偸
(
ぬす
)
んだ猫くらいの資格は充分あると思う。車屋の黒などは
固
(
もと
)
より眼中にない。蒲鉾の
一切
(
ひときれ
)
くらい頂戴したって人からかれこれ云われる事もなかろう。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
だから
一切
(
ひときれ
)
位
(
ぐらゐ
)
肖
(
あやか
)
つて
置
(
お
)
く
必要
(
ひつえう
)
もあるでせう
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
切
常用漢字
小2
部首:⼑
4画
“一切”で始まる語句
一切合財
一切経
一切合切
一切衆生
一切空
一切蔵経
一切我今皆懺悔
一切有
一切断面
一切皆空