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鯱
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しゃち
ふりがな文庫
“
鯱
(
しゃち
)” の例文
血だらけだ、血だらけだ、血だらけの稚児だ——と叫ぶ——柵の外の
群集
(
ぐんじゅ
)
の波を、
鯱
(
しゃち
)
に追われて泳ぐがごとく、多一の顔が
真蒼
(
まっさお
)
に
顕
(
あらわ
)
れた。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「凧にのって金の
鯱
(
しゃち
)
をはがす頓狂なやつだっている。
要用
(
いりよう
)
だったら、鯨だってなんだって持って行くだろうさ。別に不思議はありゃアしない」
顎十郎捕物帳:19 両国の大鯨
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
名古屋城の金の
鯱
(
しゃち
)
も教授にはさほど注目を惹かなかったので、むしろその形態の
趣
(
おもむ
)
きや、城の屋根瓦が波のような感じをもつことをよろこばれました。
アインシュタイン教授をわが国に迎えて
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
「それがわからないのだ。角があると言いましたね、鯨ではない。
鯱
(
しゃち
)
、
鮫
(
さめ
)
でもあるまい。
鮪
(
まぐろ
)
でもなかろう——はて」
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
うっかりしていて、最初船長がそれを
発見
(
みつ
)
けた時には、もうその船は
鯱
(
しゃち
)
のような素早さで、鯨群に肉迫していた。
動かぬ鯨群
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
▼ もっと見る
見ると、女が突然に
鯱
(
しゃち
)
こばって、口を歪めて両手で喉を掻きむしりながら、はや
呼吸
(
いき
)
を引取るところだった。
見開いた眼
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
狭間
(
はざま
)
の壁に、太い柱に。なお、屋根の
鯱
(
しゃち
)
や
廂
(
ひさし
)
の瓦などが吹飛んでいるのは砲弾の
炸裂
(
さくれつ
)
によるものであろう。
日本名婦伝:谷干城夫人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それが、まだしっくりとはとてもうちとけないで、何かしら気づまりで固く
鯱
(
しゃち
)
こばっていたのが、
昨夜
(
ゆうべ
)
の童謡音楽会でさらりと流れ、ふわりと和らいでしまった。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
鰯
(
いわし
)
の大軍を追っかけて、血の波を上げる
鯱
(
しゃち
)
の群れ、海の出来事は総て大きい! 赤い帆が見える! 海賊船だ! 黒い船体が島陰から出た!
真鍮
(
しんちゅう
)
の金具、五重の櫓
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
勇猛果敢なわが戦闘機は、
鯱
(
しゃち
)
のように食下って少しも攻撃をゆるめないのだ。上から
真逆落
(
まっさかおと
)
しに敵機へぶつかって組みあったまま燃落ちるもの——壮烈な空の肉弾戦だ。
空襲警報
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
鱶
(
ふか
)
だの
鮫
(
さめ
)
だのは素より、
身体
(
からだ
)
中に刃物を並べた
鯱
(
しゃち
)
だの、
棘
(
とげ
)
の
鱗
(
うろこ
)
を持った海蛇だのが
集
(
たか
)
って来て、烈しい渦を巻き立てて飛びかかりましたから、香潮は一生懸命になって、拳固で
擲
(
なぐ
)
り飛ばし
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
柿の木金助は大凧に乗って名古屋城の天主閣に登って、金の
鯱
(
しゃち
)
の
鱗
(
うろこ
)
をはがしたと伝えられている。かれは
享保
(
きょうほう
)
年間に
尾州
(
びしゅう
)
領内をあらし廻った大賊で、その事蹟は諸種の記録にも散見している。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
まるで
鮫
(
さめ
)
か
鯱
(
しゃち
)
がパッと波をけって飛び上り、あッと思う間に、もう水底ふかくかくれてしまうように、わが『千代田』も、魚雷の発射が終ると、目にもとまらぬ速さで、底へ底へ潜って行った。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
(16) 「わが入江を見守って暮していた」というこの冒頭の一句で、この物語の主人公が「トマリ・コロ・カムイ」(入江を・支配する・神)、すなわち
鯱
(
しゃち
)
の神であることが分る。[182]
えぞおばけ列伝
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
と源三郎は、
鯱
(
しゃち
)
が
鉛
(
なまり
)
を
鋳込
(
いこ
)
まれたように、真っ四角にかたくなって
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
それだけは手放さなかった
先考
(
せんこう
)
の華族大礼服を着こみ、掛けるものがないのでお
飯櫃
(
はち
)
に腰をかけ、「一ノ谷」の義経のようになって
鯱
(
しゃち
)
こばっていると、そのころ
予言
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
と見ると
鯱
(
しゃち
)
に似て、彼が城の天守に金銀を
鎧
(
よろ
)
った諸侯なるに対して、これは
赤合羽
(
あかがっぱ
)
を
絡
(
まと
)
った下郎が、
蒼黒
(
あおぐろ
)
い魚身を、血に底光りしつつ、ずしずしと揺られていた。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さりとて、今見たように、
鯱
(
しゃち
)
こ
張
(
ば
)
ってのみおると、あれは小胆者ぞと敵に肚を押し
測
(
はか
)
られるぞ。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それを見ていると、彼は癇が高ぶって来て、あらゆる筋肉が
鯱
(
しゃち
)
こばるのを感じた。
犬舎
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
電車の内はからりとして、水に沈んだ
硝子函
(
がらすばこ
)
、車掌と運転手は雨にあたかも潜水夫の風情に見えて、
束
(
つか
)
の
間
(
ま
)
は
塵
(
ちり
)
も留めず、——外の人の混雑は、
鯱
(
しゃち
)
に追われたような中に。——
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
風采いかにも洋々と
寛
(
ひろ
)
く、顔にも
陸棲人士
(
りくせいじんし
)
のごとく
焦
(
いら
)
ついた神経などなく、各〻、
鯱
(
しゃち
)
か
鯨
(
くじら
)
の子みたいに、頗る
縹渺
(
ひょうびょう
)
たる風格のなかに、また一種の楽天的な気概をそなえている。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……それにしても、江戸一の捕物の名人がふたりもこんなところに
鯱
(
しゃち
)
こばっているには及ばない、半刻替りということにしようじゃないか。……おれは、その前に、ちょっと不浄へ……
顎十郎捕物帳:15 日高川
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
鯱
(
しゃち
)
や鯨と掴合って、
一角丸
(
ウニコオル
)
を棒で噛ろうと云うまどろすじゃありませんか。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
駒を立てて、湖岸のあとを振り向くと、そこには墨のような宇宙にもなお
巍然
(
ぎぜん
)
たる大天守があった。雨の夜はよけいに光るという屋上の黄金の
鯱
(
しゃち
)
は、この闇夜に何を睨んでいるのかと思われる。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
式台で
鯱
(
しゃち
)
こばっている作左衛門の肩を叩いて
無惨やな
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
どうだい、ついこの夏までは、
右大臣織田信長
(
うだいじんおだのぶなが
)
の
居城
(
きょじょう
)
で、この山の
緑
(
みどり
)
のなかには、すばらしい
金殿玉楼
(
きんでんぎょくろう
)
が見えてよ、金の
鯱
(
しゃち
)
や七
重
(
じゅう
)
のお
天主
(
てんしゅ
)
が、日本中をおさえてるようにそびえていた
安土城
(
あづちじょう
)
だ。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“鯱”の意味
《名詞》
しゃち、虎の頭を有する想像上の海獣。これを、城郭等の守りに屋根に掲げたものが鯱鉾(しゃちほこ)。
シャチ、イルカ類の海獣。語義1より命名。
(出典:Wiktionary)
“鯱”の解説
鯱(しゃち)は、姿は魚で頭は虎、尾ひれは常に空を向き、背中には幾重もの鋭いとげを持っているという想像上の動物。また、それを模した主に屋根に使われる装飾・役瓦の一種である。一字で鯱(しゃちほこ)・鯱鉾とも書かれる。江戸時代の百科事典『和漢三才図会』では魚虎(しゃちほこ)と表記されている。
(出典:Wikipedia)
鯱
漢検1級
部首:⿂
19画
“鯱”を含む語句
鯱張
鯱鉾立
鯱鉾
鯱子張
鯱鋒
鯱立
金鯱噂高浪
金鯱
鯱巻
鯱硬張
鯱鋒立
鯱鉾町
鯱鉾張
鯱構
鯱固張
鯱丸
雌鯱