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馬丁
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べっとう
ふりがな文庫
“
馬丁
(
べっとう
)” の例文
首を突き貫かれて、よろめく伊東甲子太郎に向って、真先に板囲いの中から
跳
(
おど
)
り出して斬ってかかったのは、元の伊東が手飼いの
馬丁
(
べっとう
)
。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
……何でも、事件の起る二日ぐらい前とかに、
馬丁
(
べっとう
)
の福次郎さんという人が、用があって東水の尾へ、登って行きましたそうです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
晴雨兼帯とも言いたい
馬丁
(
べっとう
)
の
冠
(
かぶ
)
った高帽子まで彼にはめずらしい物であった。彼は右を見、左を見して、初めてセエヌ河を渡った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「私も今晩あたりは、御墨付をお返し申上げられるかと思います。恐れ入りますが、
馬丁
(
べっとう
)
の黒助を御呼び下さいますように」
銭形平次捕物控:022 名馬罪あり
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
馬丁
(
べっとう
)
の辰公と彼とはなお懇意だった。辰公の好意で彼はズボンと
上衣
(
うわぎ
)
と、そしてやや大きすぎるけれど赤革の編上靴まで借りることができた。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
「え、薄汚い、悪臭い、貧乏神が
夫婦連
(
めおとづれ
)
でやって来やあがった。とッとと
退
(
の
)
いたり、邪魔にならあ。」と
馬丁
(
べっとう
)
の
喚散
(
わめきち
)
らせば
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
廏屋
(
うまや
)
の
馬丁
(
べっとう
)
に申しつけて、『瞬』を厳重に柱に縛り付けて動かぬようにして、その上に番人を二人までもつけておきました。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
余は
憤々
(
ぷんぷん
)
と怒って門へ引返し、甚蔵の寝て居る馬車を連れて再び此の台所口まで帰って来た、
馬丁
(
べっとう
)
の力を借り
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
下唇の
出
(
い
)
でたるだけに。はたしておしゃべりなりとは。供待ちの
馬丁
(
べっとう
)
の悪口。総じていわば。十人並みには過ぎたるかたなり。前の貴嬢は少しかんじたというようすにて。
藪の鶯
(新字新仮名)
/
三宅花圃
(著)
なすこともなく方々の中間部屋でとぐろを巻いて
陸尺
(
ろくしゃく
)
、
馬丁
(
べっとう
)
などという
輩
(
てあい
)
とばかり
交際
(
つきあ
)
っているので、叔父の庄兵衛がもてあまし、甲府勤番の株を買ってやったが、なにしろ
顎十郎捕物帳:01 捨公方
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
見ると安さんは
唐桟
(
とうざん
)
の着物に
豆絞
(
まめしぼり
)
か
何
(
な
)
にかの三尺を締めて立っている。まるで東京の
馬丁
(
べっとう
)
のような
服装
(
なり
)
である。これには少し驚いた。安さんも自分の様子を
眺
(
なが
)
めて首を
傾
(
かし
)
げて
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と聞いてみましたら、
別棟
(
べつむね
)
に住んでいる
馬丁
(
べっとう
)
や農夫たちが、二日おき三日おきに馬で四里離れた大野木まで買い出しに行くというのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
馬丁
(
べっとう
)
の黒助は立上がって、番手桶の水をザブリと掛けました。初秋の肌寒い風が、半裸の美女を吹いて、そのまま
燻蒸
(
くんじょう
)
する湯気も匂いそうです。
銭形平次捕物控:022 名馬罪あり
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
直
(
じ
)
きこの
安東
(
あんとう
)
村に居るんです。貞造と申して、以前御宅の
馬丁
(
べっとう
)
をしたもので、……
夫人
(
おくさん
)
、貴女の、実の……
御父上
(
おとうさん
)
……」
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それを張番しているのが邸内の
馬丁
(
べっとう
)
ども(
厩仲間
(
うまやちゅうげん
)
)であったがために、そのお屋敷の威光をかさに着て、だんだん増長してきたために、見のがせなくなって
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「駄目駄目、観客としてもはいる資格がない。
馬丁
(
べっとう
)
に連れて行ってもらえよ。
厩舎
(
うまや
)
の通用門からはいるんだ」
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
庭へ出でて花壇のまわりを三べんばかりあてどもなくあるきながら。わざと浜子の部屋のあたりをさけて。おもての方へおもむろにあゆみきたれば。
馬丁
(
べっとう
)
部屋の方にあたりて。
藪の鶯
(新字新仮名)
/
三宅花圃
(著)
雪を
払
(
か
)
いていた者は
雪払
(
ゆきかき
)
を
休
(
や
)
める、黄色い真綿帽子を冠った旅人の群は立止る、岩村田
通
(
がよい
)
の馬車の
馬丁
(
べっとう
)
は
蓙掛
(
ござがけ
)
の馬の
手綱
(
たづな
)
を引留めて、身を横に後を振返って眺めておりました。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
青眼先生はハッと驚いて
背後
(
うしろ
)
をふり向きますと、うしろにはたった今
検
(
あらた
)
めた
馬丁
(
べっとう
)
の死骸があるばかりで、しかも手も足もバラバラになっているのですから、口を利く気遣いはありませぬ。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
水番の六蔵……山の農園の農夫が二人……
馬丁
(
べっとう
)
の福次郎、いずれも石橋家が焼けた後は、山を降って一時ここで働いていた。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
高岡に
彷徨
(
ぶらつ
)
いていたって始まらんので、金沢には士官がいるから、
馬丁
(
べっとう
)
の口でもあるだろうと思って、
探
(
さが
)
しに出て来た。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「あったよ、御用人にお願いするまでもないや、
馬丁
(
べっとう
)
に知ってるのがあるから頼んで一枚貰って来た、これだ」
銭形平次捕物控:071 平次屠蘇機嫌
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
仲間
(
ちゅうげん
)
や
馬丁
(
べっとう
)
が、寄ってたかって御老中のお馬屋の中で、しゃそじょうこてやつをきめこむんでさあ、御老中でさえその位なんだから、中納言様ときちゃあ豪勢なもんだろう
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
前の晩のうちに頼んで置いた乗合馬車の
馬丁
(
べっとう
)
が、その時、庭口へ声を掛けに来た。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
かなたにもとかくにうしろめだき風情ありておのれをはばかるさまあるは。何ようのことわけのありてかと。心をつけし折も折。ゆくりなく耳に入りし
馬丁
(
べっとう
)
車夫の
噂咄
(
うわさばな
)
し。胸とどろくまで驚かれ。
藪の鶯
(新字新仮名)
/
三宅花圃
(著)
きゃッきゃッきゃッきゃッ。あはははは。お
馬丁
(
べっとう
)
は小腰をゆするが、
蘆毛
(
あしげ
)
よ。(振向く)お
厩
(
うまや
)
が近うなって、
和
(
わ
)
どのの足はいよいよ健かに軽いなあ。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これはズッと後の話、
馬丁
(
べっとう
)
の黒助は本名の九郎助に返って、房州で百姓をした事は申すまでもありません。
銭形平次捕物控:022 名馬罪あり
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
日本一間抜けの
馬丁
(
べっとう
)
に制裁を加える資格も、能力も無い如く、今度のこの馬丁も、自分が馬のために救われていたということは、永久に理解することができないで、これから後の
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
馬丁
(
べっとう
)
の吹く
喇叭
(
らっぱ
)
は山の空気に響き渡った。それを聞きつけて、橋本の家のものは高い石垣を降りて来た。幸作も来て迎えた。三吉はこの人達と一緒に、覚えのある石段を幾曲りかして上って行った。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
しかるに万死の貧民に向って道を譲らざる無礼を責め、
無慙
(
むざん
)
なる
馬丁
(
べっとう
)
は
渠
(
かれ
)
を溝際に投飛ばして
命縷
(
めいる
)
将
(
まさ
)
に絶えなんとする時、馬車は揚々として立去れり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ついていた
馬丁
(
べっとう
)
が馬の心を知らない——単に馬が狂い出したものと見て、走りかかる馬のゆくてに、大手を拡げてたち塞がったものだから、馬が棒立ちになったのを、追いすがった刺客が
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
三吉は車の
周囲
(
まわり
)
に立って見送っている達雄や嘉助や若い手代達にも話しかける時はあった。待っても待っても他に乗合客が見えそうもないので、
馬丁
(
べっとう
)
はちょっと口笛を吹いて、それから
手綱
(
たづな
)
を執った。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
やい、それと声を懸けるばかりで、車夫も、
馬丁
(
べっとう
)
も、
引張凧
(
ひっぱりだこ
)
になった
艶福家
(
えんぷくか
)
島野氏も、女だから手も着けられない。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それは——め組の口から漏らした、河野の母親が以前、通じたと云う——
馬丁
(
べっとう
)
貞造の事に就いてであった。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
馬丁
(
べっとう
)
、車夫の
輩
(
ともがら
)
、手に手に
桝
(
ます
)
を取りて控えたる境内には、一百有余の俵を積み、白米
筵
(
むしろ
)
に山をなせり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
園を
出
(
い
)
ずれば
丈
(
たけ
)
高く肥えたる馬二頭立ちて、
磨
(
す
)
りガラス入りたる馬車に、
三個
(
みたり
)
の
馬丁
(
べっとう
)
休らいたりき。
外科室
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「いんや、
馬丁
(
べっとう
)
……貞造って……馬丁でね。
私
(
わっし
)
が静岡に落ちてた時分の飲友達、旦那が戦争に行った留守に、ちょろりと
嘗
(
な
)
めたが、
病着
(
やみつき
)
で、
噯
(
おくび
)
の出るほど食ったんだ。」
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ッて、どこの
馬丁
(
べっとう
)
も威張るもんだけれど、憎らしいじゃありませんか。危い、とでもおっしゃることか、どこのか華族様でもあろうけれども、乗ってた御夫婦も心なし。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
馬丁
(
べっとう
)
と、小間使と女中と、三人が附いて来たが、
煮炊
(
にたき
)
が間に合うようになると、一度、新世帯のお手料理を
御馳走
(
ごちそう
)
になった切り、その二人は帰った、年上の女中だけ残って。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
黙って敏活の気の
溢
(
あふ
)
れた目に、大空を見ておわした姫様は、これに
頷
(
うなず
)
いて
御入
(
おんいり
)
があろうとする。道はもとより、
馬丁
(
べっとう
)
義作続いて島野まで、長いものに巻かれた形で、
一群
(
ひとむれ
)
になって。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「なんと皆さん、
業肚
(
ごうはら
)
じゃございませんか。おとなげのないわけだけれど、こういう行き懸かりになってみると、どうも負けるのは残念だ。おい、
馬丁
(
べっとう
)
さん、早く
行
(
や
)
ってくれたまえな」
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
七左 おお、
弥兵衛
(
やへえ
)
どの御子息欣弥どの。はあ、新聞に出ておりますか。田鼠化為鶉、
馬丁
(
べっとう
)
すなわち奉行となる。信濃国東筑摩郡松本中の評判じゃ。
唯今
(
ただいま
)
、その邸から出て来た処よの。
錦染滝白糸:――其一幕――
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
渠はこのときまで、
一箇
(
ひとり
)
の頼もしき
馬丁
(
べっとう
)
としてその意中に渠を遇せしなり。いまだかくのごとく畏敬すべき者ならんとは知らざりき。ある点においては渠を支配しうべしと思いしなり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
馬
常用漢字
小2
部首:⾺
10画
丁
常用漢字
小3
部首:⼀
2画
“馬丁”で始まる語句
馬丁等