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顛倒
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てんどう
ふりがな文庫
“
顛倒
(
てんどう
)” の例文
癇張声
(
かんばりごえ
)
に胆を冷やしてハッと思えばぐゎらり
顛倒
(
てんどう
)
、
手桶
(
ておけ
)
枕に立てかけありし張物板に、我知らず一足二足踏みかけて踏み
覆
(
かえ
)
したる
不体裁
(
ざまのな
)
さ。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
手燭に照して
見廻
(
みま
)
わせば、地に帰しけん天に朝しけん、よもやよもやと思いたる下枝は消えてあらざりけり。得三は
顛倒
(
てんどう
)
して
血眼
(
ちまなこ
)
になりぬ。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
自分には何の
科
(
とが
)
が有ってこんな
理非
(
りひ
)
顛倒
(
てんどう
)
の侮辱を受けるのであろう。考えれば考えるほど、冬子は
口惜
(
くや
)
しくって
堪
(
たま
)
らなかった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
よくも揃った非道な奴らだと、かッと
逆上
(
のぼ
)
せて気も
顛倒
(
てんどう
)
、一生懸命になって幸兵衛が
逆手
(
さかて
)
に持った刄物の
柄
(
つか
)
に手をかけて、
引奪
(
ひったく
)
ろうとするを
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
時々は間違えて
苗字
(
みょうじ
)
と名前を
顛倒
(
てんどう
)
して、石井町子嬢とも呼んだ。すると看護婦は首を
傾
(
かし
)
げながらそう改めた方が好いようでございますねと云った。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
顛倒の世界 次に、「
顛倒夢想
(
てんどうむそう
)
を
遠離
(
おんり
)
して、
究竟涅槃
(
くきょうねはん
)
す」ということですが、普通には、ここに「一切」という字があります。「一
切
(
さい
)
顛倒
(
てんどう
)
」といっています。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
葉書でも来はすまいかと、待ちたくないと戒めながら、心の底で待っていたが、あれは
顛倒
(
てんどう
)
した考えであったかも知れない。おとずれはこちらからすべきである。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
順序をいえば家庭教育の方が学校教育よりも先だけれども今の世の事はとかく順序が
顛倒
(
てんどう
)
している。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
余りの
椿事
(
ちんじ
)
に、寧ろ
顛倒
(
てんどう
)
して了って、歯の根も合わずワクワクしながら、門内の長い敷石道を、やっぱり青くなった小間使達と一緒に、ウロウロと歩き廻っていたのですが
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
消えなんとした
生命
(
いのち
)
の火がパッと明るくなったように、攻守
顛倒
(
てんどう
)
の形となる。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
國藏と森松は気も
顛倒
(
てんどう
)
して、物をも云わず
躍
(
おど
)
り上って飛出し、文治の顔を見るより、あッと腰を抜かしてしまいました。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
されど心
豪
(
ごう
)
にして気韻高き
性
(
さが
)
なれば、はしたなく声を立てず、
顛倒
(
てんどう
)
して座を乱さず、端然としていたまえり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
自分は
本末
(
ほんまつ
)
を
顛倒
(
てんどう
)
した。雅楽所で三沢に会うまでは、Hさんと兄とがこの夏いっしょにするという旅行の件を、その日の問題として
暗
(
あん
)
に胸の
中
(
うち
)
に畳み込んでいた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
実は理性の
争
(
あらそい
)
に、意志が容喙したと云うのは、主客を
顛倒
(
てんどう
)
した話で、その理性の争というのは、あの目の磁石力に対する、無力なる
抗抵
(
こうてい
)
に過ぎなかったかも知れない。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
しかし梵語の原典から見ましても、「
顛倒
(
てんどう
)
を超越して
究竟
(
くきょう
)
の
涅槃
(
さとり
)
に入る」という意味になっていますから、これはやっぱり「究竟涅槃す」とよんだ方がよいと思います。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
十兵衛も分らぬことに思えども
辞
(
いな
)
みもならねば、はや感応寺の門くぐるさえ
無益
(
むやく
)
しくは考えつつも、何御用ぞと行って問えば、天地
顛倒
(
てんどう
)
こりゃどうじゃ、夢か
現
(
うつつ
)
か真実か
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
成程
(
なるほど
)
、違っていた。今まで気が
顛倒
(
てんどう
)
していたので、
流石
(
さすが
)
にそこまでは
意
(
き
)
が
注
(
つ
)
かなかったが、安行の前歯は左が少しく
缺
(
か
)
けていた。この男の前歯は左右とも美事に揃っている。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼女は余りの恐しさに
顛倒
(
てんどう
)
して口も利けないらしく見えた。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
話は
前後
(
あとさき
)
になりますが、ちょうどこの場合だから申しますがね。
私
(
てまえ
)
、前にも申す通り、何んだか気になる。お夏さんの跡から上野へ行って、暗がり坂で、きゃッ! 天地
顛倒
(
てんどう
)
。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
こうしたような事実は、この複雑なる、われわれの世界には非常に多いのです。あの斜視や乱視や色盲のような見方をして、錯覚や幻覚を起こしている連中は、いずれも皆「
顛倒
(
てんどう
)
の
衆生
(
しゅじょう
)
」
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
狸は大方
腹鼓
(
はらつづみ
)
を
叩
(
たた
)
き過ぎて、胃の位置が
顛倒
(
てんどう
)
したんだ。君とおれは、いっしょに、祝勝会へ出てさ、いっしょに高知のぴかぴか
踴
(
おど
)
りを見てさ、いっしょに喧嘩をとめにはいったんじゃないか。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
茂之助さんも
顛倒
(
てんどう
)
してしまって、あゝ済まねえと思ったか、梁へ紐を下げて首を吊って死ぬくれえ非業な真似エしたのも、
皆
(
みん
)
な汝から起った事だから、何うかして松五郎お瀧の二人を捜し出し
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
人々はこの事実丈けで、十分
顛倒
(
てんどう
)
するでありましょう。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
上下
(
うえした
)
へ
覆
(
かえ
)
しまして、どどどど廊下を
駈
(
か
)
けます音、がたびし戸障子の外れる
響
(
ひびき
)
、中には泣くやら、
喚
(
わめ
)
くやら、ひどいのはその
顛倒
(
てんどう
)
で、
洋燈
(
ランプ
)
を
引
(
ひっ
)
くらかえして、
小火
(
ぼや
)
になりかけた家もござりますなり。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
灯
(
ともしび
)
の暗い、
森
(
しん
)
として、片附いた美しい二階の座敷を
眗
(
みまわ
)
したが、そうだ、小包が神月からというのに
顛倒
(
てんどう
)
して忘れていた、
先刻
(
さっき
)
を思出すと、
悚
(
ぞっ
)
として、ばたりと箱を落して立ち、何を
憚
(
はばか
)
るともなく
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
顛倒
(
てんどう
)
して慌てるほど、
身体
(
からだ
)
のおしに重みがかかる、とその度に、ぐ、ぐ、と泣いて、口から
垂々
(
だらだら
)
と血を吐くのが、
咽喉
(
のど
)
に
懸
(
かか
)
り、胸を染め、乳の下を
颯
(
さっ
)
と流れて、仁右衛門の
蹠
(
あしのうら
)
に
生暖
(
なまあたたこ
)
う垂れかかる。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
とお貞は
起
(
た
)
ちたるが、不意に
顛倒
(
てんどう
)
して、起ちつ、居つ。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
顛
漢検準1級
部首:⾴
19画
倒
常用漢字
中学
部首:⼈
10画
“顛倒”で始まる語句
顛倒上下
顛倒夢想
顛倒淋漓
顛倒狼狽
顛倒衆生