雲助くもすけ)” の例文
大井川の水れ/\にして蛇籠じゃかごに草離々たる、越すに越されざりし「朝貌あさがお日記」何とかの段は更なり、雲助くもすけとかの肩によって渡る御侍
東上記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
あげ何卒なにとぞゆるしてたべわたしは源次郎といふをつとのある身金子が入なら夫より必ずお前にまゐらせん何卒我家へ回してと泣々なく/\わびるを一向聞ず彼の雲助くもすけは眼を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「そいつは大変だ、紛失物なくなりものをそのままにしておいたんじゃあ、この黒坂のかおが立たねえ、悪くすると雲助くもすけ仲間の名折れになるのだ、なあ相棒あいぼう
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そんな言葉は御維新前ごいっしんまえ折助おりすけ雲助くもすけ三助さんすけの専門的知識に属していたそうだが、二十世紀になってから教育ある君子の学ぶ唯一の言語であるそうだ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今時こんな風俗をしていると警察から注意されるが、その頃は裸体はだか雲助くもすけが天下の大道にゴロゴロしていたのだから、それから見るとなんでも無かった。
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
それほど腰骨こしぼねの強い、黙って下の方に働いているような男が、街道に横行する雲助くもすけ仲間と衝突したのは、彼として決して偶然な出来事とも思われなかった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかしいて何か不愉快はなきやとたずねらるれば、やはり往昔むかし、東海道を旅行した人が、雲助くもすけのために迷惑めいわくを受けた——程度は違うにしても——と同じように
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
拾ったというと語弊ごへいがあるが、彼が箱根で山駕やまかごにのると先棒さきぼうをかついでいたのが、この勘太で若くて体もいいのに、ひょろついてばかりいる。そしては後棒あとぼう雲助くもすけ
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さけ熱燗あつかんのぐいあふり、雲助くもすけふうて、ちや番茶ばんちやのがぶみ。料理れうりかた心得こゝろえず。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼の手は将軍内廷の小刀庖丁ほうちょうより、幕閣日用の紙にまで、妖僧の品行より俳優の贅沢ぜいたくにまで、婦女子の髪飾より、食膳の野菜にまで、小童のたこの彩色より、雲助くもすけ花繍かしゅうまで、およそ社会生活の事
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
さいわいにも、私の生れ合せたこの時代位動くものの無数が発達し発明された事はあるまい。天平てんぴょう時代から徳川末期に至る年月において、日本では雲助くもすけ以上に動くものを発明されてはいなかったようである。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
親から仕来しきたった百姓は百姓として、惣領そうりょうにはまだ家の仕事を継ぐ特権もある。次男三男からはそれも望めなかった。十三、四のころから草刈り奉公に出て、末は雲助くもすけにでもなるか。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
與曾平よそべいは、三十年餘みそとせあまりも律儀りちぎつかへて、飼殺かひごろしのやうにしてもの氣質きだてれたり、いま道中だうちうに、雲助くもすけ白波しらなみおそれなんど、あるべくもおもはれねば、ちからはなくてもしうはあらず
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その恐れ入ってる先生が真面目に幽霊談をするとなると、余もこの問題に対する態度を義理にも改めたくなる。実を云うと幽霊と雲助くもすけ維新いしん以来永久廃業した者とのみ信じていたのである。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
むきだし是程に言ても聞分きゝわけ強情がうじやう阿魔あまめ然らば此所で打殺し川へ投込なげこむ覺悟かくごをしろと手頃てごろの木のえだ追取て散々さん/″\に打けるをお梅は片邊に見居たりしが迯出にげいださんとする所を雲助くもすけ眼早めばやく見咎めて爰にも人が居を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)