難渋なんじふ)” の例文
そも/\われは寄辺よるべない浮浪学生ふらうがくしやう御主おんあるじ御名みなによりて、もり大路おほぢに、日々にちにちかてある難渋なんじふ学徒がくとである。おのれいまかたじけなくもたふと光景けしき幼児をさなご言葉ことばいた。
ひどくるな、ひさしいあとに親父おやぢ身延山みのぶさん参詣さんけいつた時にやつぱり雪のめに難渋なんじふして木の下であかしたとのことだがお祖師様そしさまばちでもあたつてゐるのかしら
出稼ぎして諸方を彷徨うろついてゐた方が、ひもじいおもひをしない、寝泊ねどまりする処にも困らない。生れた村には食物くひもの欠乏たりなくてみんな難渋なんじふしてゐるけれど、余処よそ其程それほどでもない。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
黒く染めたる頭髪かみあぶらしたたるばかりに結びつ「加女さん、今年のやうにかんじますと、老婆としより難渋なんじふですよ、お互様にネ——梅子さんの時代が女性をんなの花と云ふもんですねエ——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
じつまをすと此処こゝ途中とちうでもことばかりかんがへる、へびはしさいはひになし、ひるはやしもなかつたが、みち難渋なんじふなにつけてもあせながれて心持こゝろもちわるいにつけても、今更いまさら行脚あんぎやつまらない。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
虫唾むしづの走るほど厭になり候へども、秀林院様はさのみお嫌ひも遊ばされず、時には彼是かれこれ小半日もお話相手になさること有之、その度にわたくしども奥女中はいづれも難渋なんじふ仕り候。
糸女覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それからがく/″\して歩行あるくのがすこ難渋なんじふになつたけれども、此処こゝたふれては温気うんき蒸殺むしころされるばかりぢやと、我身わがみ我身わがみはげまして首筋くびすぢつて引立ひきたてるやうにしてたうげはうへ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたし身延山みのぶさん参詣さんけいまゐつた者ですが、雪のめに難渋なんじふして宿屋やどやもなにもないやうでございますが、まことにうも御厄介ごやくかいでございませうが今晩こんばんたゞあかけでよろしうございます