ふら)” の例文
またこの天には神意みこころほかところなし、しかしてこれを轉らす愛とこれがふらす力とはこの神意の中に燃ゆ 一〇九—一一一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
初編にもいへる如く我国の雪は鵞毛がまうをなすはまれなり、大かたは白砂しらすなふらすが如し。冬の雪はさらに凝凍こほることなく、春にいたればこほること鉄石てつせきのごとし。
れいなるかなこの石、てんあめふらんとするや、白雲はくうん油然ゆぜんとして孔々こう/\より湧出わきいたにみねする其おもむきは、恰度ちやうどまどつてはるかに自然しぜん大景たいけいながむるとすこしことならないのである。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
午後ひるすぎに夕立をふらして去った雷鳴の名残が遠くかすかに聞えて、真白な大きな雲の峰の一面が夕日の反映に染められたまま見渡す水神すいじんもり彼方かなたに浮んでいるというような時分
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
時に万籟ばんらいせきとして、地に虫の這う音も無く、天は今にもふらせんずる、みぞれか、雪か、あられか、雨かを、雲のたもとに蔵しつつ微音をだに語らざる、そのしずかさに睡りたりし耳元に、「カチン」と響く鉄槌の音は
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
初編にもいへる如く我国の雪は鵞毛がまうをなすはまれなり、大かたは白砂しらすなふらすが如し。冬の雪はさらに凝凍こほることなく、春にいたればこほること鉄石てつせきのごとし。
江戸には雪のふらざる年もあれば、初雪はことさらに美賞びしやうし、雪見のふね哥妓かぎたづさへ、雪のちや賓客ひんかくまねき、青楼せいろうは雪を居続ゐつゞけなかだちとなし、酒亭しゆていは雪を来客らいかく嘉瑞かずゐとなす。
我国の雪は鵞毛がまうをなさず、降時ふるときはかならず粉砕こまかきをなす、風又これをたすく。ゆゑに一昼夜ちうや積所つもるところ六七尺より一丈にいたる時もあり、往古むかしより今年ことしにいたるまで此雪此国にふらざる事なし。
○そも/\我里わがさとの元日は野も山も田圃たはたさと平一面ひらいちめんの雪にうづまり、春を知るべき庭前ていぜんの梅柳のるゐも、去年雪のふらざる秋の末に雪をいとひて丸太など立て縄縛なはからげあひたるまゝ雪の中にありて元日の春をしらず。