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鏨
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たがね
ふりがな文庫
“
鏨
(
たがね
)” の例文
離屋の壁の中に隱した小判は、極印がなくて使へないので、番頭の善七は
鏨
(
たがね
)
の極印を
拵
(
こさ
)
へて、その小判に打つつもりだつたんだらう。
銭形平次捕物控:165 桐の極印
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
が、今は他のものを
装
(
も
)
る
器具
(
うつわ
)
でない。瓜はそのまま天来の瓜である。従って名実ともに
鏨
(
たがね
)
は冴えた、とその道のものは云った。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「櫻材をもつて模型をつくり數多の
鑢
(
やすり
)
と
鏨
(
たがね
)
をあつらへ、銅又は眞鍮を用ひて、長方形大小各種の種字を作りだし」云々。
光をかかぐる人々
(旧字旧仮名)
/
徳永直
(著)
二人はそれを伏し拝んで、かすかな
燈火
(
ともしび
)
の明りにすかして、地蔵尊の額を見た。
白毫
(
びゃくごう
)
の右左に、
鏨
(
たがね
)
で彫ったような十文字の
疵
(
きず
)
があざやかに見えた。
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
予ハ
鏨
(
たがね
)
彫リト云ウ彫リ方ヲ委シクハ知ラナイ。子供ノ時分縁日ニ行クト、ヨク大道ニ守リ札ヲ売ル店ガ出テイタ。
瘋癲老人日記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
しばらくは父の
押木
(
おしぎ
)
の上に一ぱいに散らかっている
鉄槌
(
かなづち
)
だの、
鏨
(
たがね
)
だの、
鑢
(
やすり
)
だのを私にいじらせてくれた。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
持ちあわせた氷用の
鏨
(
たがね
)
でその真上にもう一つ穴を掘り、小刀で近所に見あたったいちばん長い樺の木を切りたおし、また、引き
輪索
(
わなわ
)
をつくってそのはじに取付け
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
皮を鑢の下に敷いて
鏨
(
たがね
)
で刻んで
颯々
(
さっさつ
)
と出来る様子だから、私は
立留
(
たちどまっ
)
て
之
(
これ
)
を見て、心の中で
扨々
(
さてさて
)
大都会なる
哉
(
かな
)
、途方もない事が出来るもの哉、自分等は夢にも思わぬ
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
やつと
灌木
(
くわんぼく
)
の高さしか無い
柊
(
ひひらぎ
)
よ、
僞善
(
ぎぜん
)
の尻を刺す
鑿
(
のみ
)
、
愛着
(
あいぢやく
)
の
背
(
せ
)
を
刻
(
きざ
)
む
鏨
(
たがね
)
、鞭の
柄
(
え
)
、
手燭
(
てしよく
)
の
取手
(
とつて
)
。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
「ねえ熊城君」と
鏨
(
たがね
)
を示して、「これは兇器の一部かも知れないが、全部じゃない事だけは明らかだよ。と云って、兇器がどんなものだか、僕には全然見当が附かないのだが」
後光殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
老人は、左の手に
鏨
(
たがね
)
を持ち右の手に
槌
(
つち
)
を持つ形をした。体を定めて、鼻から深く息を吸い、下腹へ力を籠めた。それは単に仕方を示す真似事には過ぎないが、
流石
(
さすが
)
にぴたりと形は決まった。
家霊
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
肉取
(
ししど
)
り、
平象嵌
(
ひらぞうがん
)
、
毛彫
(
けぼり
)
、浮彫、筋彫、石め、
鏨
(
たがね
)
は自由だから、
蔓
(
つる
)
も、葉も、あるいは花もこれに添う。玉の露も
鏤
(
ちりば
)
む。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それでも金床や
鞴
(
ふいご
)
や大小の
鑢
(
やすり
)
や
鏨
(
たがね
)
やがいろ/\の材料と共に配置され、未完成の大きい
櫓
(
やぐら
)
時計が三つと、置時計の修繕物が三つ、部屋の隅に片寄せてあるのです。
銭形平次捕物控:184 御時計師
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
島津の殿樣に頼まれて、蘭語の活字を作るために十一年を辛苦した人、幕府の眼を怖れて晝間も手燭をともした、くらい一室で、こつこつと
鑿
(
のみ
)
と
鏨
(
たがね
)
で木や金を彫つたといふ人……。
光をかかぐる人々
(旧字旧仮名)
/
徳永直
(著)
惟
(
おも
)
うべし近常夫婦の塚に、手向けたる
一捻
(
いちねん
)
の白饅頭の
活
(
い
)
けるがごとかりしを。しかのみならず、梅鉢草の印の
鏨
(
たがね
)
を拾って、一条の奇蹟を
鶏
(
とり
)
に授けたのを。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そこで、長い
羅宇
(
らう
)
に紐を巻いて、花火筒の手軽なもののような鉄砲をつくり、中へ
煙硝
(
えんしょう
)
を
詰
(
つ
)
めて、
鏨
(
たがね
)
を鉛玉の代りに撃ち出すことを考えた。——火皿などは要らない。
銭形平次捕物控:297 花見の留守
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
(いや、両方とも先生に、)というのを聞いて、しばらく
熟
(
じっ
)
と考えて、
鏨
(
たがね
)
を三本、細くって小さいんですとさ。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「それに、鉛の丸い弾丸と違って、先の尖った
鏨
(
たがね
)
を撃ち込むと、傷口が開かないから、ちょっと見ては鉄砲傷とわからない。銭形の親分はよくこれが鉄砲傷と気がつきましたね」
銭形平次捕物控:297 花見の留守
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「は、は、は、違う、違う、まるで違う。この大入道の
団栗目
(
どんぐりめ
)
は、はじめ死んでおった。それが
鏨
(
たがね
)
で
活
(
い
)
きたのじゃ。すなわち潰されたために、
開
(
あ
)
いたのじゃ。」
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鏨
(
たがね
)
を撃ち出した羅宇は、恐ろしい勢いで後ろの方へハネ返ると、そのまま窓の外の川に落ちた。羅宇は軽くて丈夫にするため、たぶん蝋を引いた麻紐を巻いてあったことだろう。
銭形平次捕物控:297 花見の留守
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ト
此
(
こ
)
の
鑿
(
のみ
)
を
持
(
も
)
ち、
鏨
(
たがね
)
を
持
(
も
)
つべき
腕
(
かひな
)
は、
一度
(
ひとたび
)
掌
(
てのひら
)
を
返
(
かへ
)
して、
多勢
(
たせい
)
を
圧
(
あつ
)
して
将棊倒
(
しやうぎだふ
)
しにもする、
大
(
おほい
)
なる
権威
(
けんゐ
)
の
備
(
そな
)
はるが
如
(
ごと
)
くに
思
(
おも
)
つて、
会心
(
くわいしん
)
自得
(
じとく
)
の
意
(
こゝろ
)
を、
高声
(
たかごゑ
)
に
漏
(
も
)
らして、
呵々
(
から/\
)
と
笑
(
わら
)
つた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「おや、錢形の親分だ相で、——お頼みだけのことはしましたよ。腑分けと言つた大袈裟なことは出來ないが、幸ひ彈丸の代りに
撃
(
ぶ
)
ち込んだ、細い
鏨
(
たがね
)
が、胸の近くまで脱けかけて居たので、すぐ搜り當てゝ取出して置きました。これですよ」
銭形平次捕物控:297 花見の留守
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
錺屋
(
かざりや
)
、錺職をもって安んじているのだから、丼に
蝦蟇口
(
がまぐち
)
を
突込
(
つっこ
)
んで、
印半纏
(
しるしばんてん
)
で
可
(
よ
)
さそうな処を、この男にして妙な事には、古背広にゲエトルをしめ、
草鞋穿
(
わらじばき
)
で、
鏨
(
たがね
)
、
鉄鎚
(
かなづち
)
の
幾挺
(
いくちょう
)
か、
安革鞄
(
やすかばん
)
で
斜
(
はす
)
にかけ
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
鏨
(
たがね
)
のやうだ」
銭形平次捕物控:165 桐の極印
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
“鏨”の解説
鏨(たがね、chisel)とは、金属や岩石を加工するための工具の一種。鋼鉄製でMy Pedia、一般的につち(ハンマー)とともに用いる。たがね とひらがなで表記されることが多い。漢字では鏨と書く。
なお、英語ではchiselという用語で呼ぶが、chiselは日本語の「たがね」と「のみ(鑿)」を含んでおり、欧米の用語では一般に、金工用と木工用を区別をせず呼んでいる。
(出典:Wikipedia)
鏨
漢検1級
部首:⾦
19画
“鏨”を含む語句
一鏨
鏨屑
鏨箪笥
鑿鏨