トップ
>
鋪
>
し
ふりがな文庫
“
鋪
(
し
)” の例文
机が二つ九十度の角を形づくるように据えて、その前に座布団が
鋪
(
し
)
いてある。そこへ据わって、マッチを擦って、朝日を一本飲む。
あそび
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
下には
黄金色
(
きんいろ
)
をした
磚
(
かわら
)
を
鋪
(
し
)
いてすこしの塵もなかった。老嫗は青年を伴れて
遊廊
(
かいろう
)
を通って往った。遊廊の欄干も皆宝石であった。
賈后と小吏
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
汝もし信ぜずば今夜新しい葉を
席
(
むしろ
)
の下に
鋪
(
し
)
いて、別々に臥して見よ、明朝に至り汝の
榻下
(
とうか
)
の葉は実するも、鬼の
臥所
(
ふしど
)
の葉は
虚
(
むな
)
しかるべしと言うて別れ出た。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
水に強いと云う
桂
(
かつら
)
の
径
(
わたり
)
二尺余の
刳
(
く
)
りぬき、
鉄板
(
てっぱん
)
を
底
(
そこ
)
に
鋪
(
し
)
き、其上に
踏板
(
ふみいた
)
を渡したもので、こんな
簡易
(
かんい
)
な
贅沢
(
ぜいたく
)
な風呂には、北海道でなければ
滅多
(
めった
)
に入られぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
石で床を
鋪
(
し
)
きつめたその不気味な広い
室
(
へや
)
は、
息窒
(
いきづ
)
まるような沈黙で
圧
(
おし
)
つけられていた。屍体の
傍
(
そば
)
には、今までそれを包んでいたらしい、血痕の附着した敷布があった。
青蠅
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
▼ もっと見る
梅の
外
(
ほか
)
には
一木
(
いちぼく
)
無く、
処々
(
ところどころ
)
の乱石の低く
横
(
よこた
)
はるのみにて、地は
坦
(
たひらか
)
に
氈
(
せん
)
を
鋪
(
し
)
きたるやうの
芝生
(
しばふ
)
の園の
中
(
うち
)
を、玉の砕けて
迸
(
ほとばし
)
り、
練
(
ねりぎぬ
)
の裂けて
飜
(
ひるがへ
)
る如き早瀬の流ありて横さまに貫けり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
待合の建物があまり
瀟洒
(
しょうしゃ
)
でもなく、
雰囲気
(
ふんいき
)
も清潔でないので、最初石畳の
鋪
(
し
)
き詰まった横町などへ入ってみた時には、どこも鼻のつかえるようなせせっこましさで少し
小綺麗
(
こぎれい
)
な
家
(
うち
)
はまた
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
二重瞼
(
ふたえまぶた
)
に寄る波は、寄りては
崩
(
くず
)
れ、崩れては寄り、黒い
眸
(
ひとみ
)
を、見よがしに
弄
(
もてあそ
)
ぶ。
繁
(
しげ
)
き若葉を
洩
(
も
)
る日影の、
錯落
(
さくらく
)
と大地に
鋪
(
し
)
くを、風は
枝頭
(
しとう
)
を
揺
(
うご
)
かして、ちらつく
苔
(
こけ
)
の定かならぬようである。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
こう思って暫く
彳
(
たたず
)
んで居ると、やがて吾妻橋の方の
暗闇
(
くらやみ
)
から、赤い
提灯
(
ちょうちん
)
の火が一つ動き出して、がらがらがらと
街鉄
(
がいてつ
)
の
鋪
(
し
)
き石の上を
駛走
(
しそう
)
して来た旧式な相乗りの
俥
(
くるま
)
がぴたりと私の前で止まった。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その間おもな部分には皆石が
鋪
(
し
)
いてあった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
赤帽が縦側の左の腰掛の真ん中へ革包を置いて、荒い格子縞の
駱駝
(
らくだ
)
の
膝掛
(
ひざかけ
)
を
傍
(
そば
)
に
鋪
(
し
)
いた。洋服の男は外へ出た。大村が横側の
後
(
うしろ
)
に腰掛けたので、純一も並んで腰を掛けた。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
乾坤
(
けんこん
)
の白きに漂ひて
華麗
(
はなやか
)
に差出でたる日影は、
漲
(
みなぎ
)
るばかりに暖き光を
鋪
(
し
)
きて
終日
(
ひねもす
)
輝きければ、七分の雪はその日に解けて、はや翌日は
往来
(
ゆきき
)
の
妨碍
(
さまたげ
)
もあらず、
処々
(
ところどころ
)
の
泥濘
(
ぬかるみ
)
は打続く快晴の
天
(
そら
)
に
曝
(
さら
)
されて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
退紅色の粗い
形
(
かた
)
の布団を掛けた
置炬燵
(
おきごたつ
)
を脇へ押し遣って、
桐
(
きり
)
の円火鉢の火を掻き起して、座敷の真ん中に
鋪
(
し
)
いてある、お嬢様の据わりそうな、
紫縮緬
(
むらさきちりめん
)
の座布団の前に出した。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
鋪
漢検準1級
部首:⾦
15画
“鋪”を含む語句
鋪石
屋鋪
鋪道
老鋪
鋪装
一鋪
座鋪
鋪石道
鋪床
老鋪代
鋪板
鋪甃
鋪甎
鋪設
鋪路
鋪金
鞄鋪
風炉鋪
酒鋪
薬鋪
...