トップ
>
野路
>
のじ
ふりがな文庫
“
野路
(
のじ
)” の例文
男は部落の裏を巧みに縫って、やがて一本の街道を早足で横切ると、あとはいちめんな
野路
(
のじ
)
だった。それも尽きて、
野末
(
のずえ
)
の山を見ると
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
四宮河原
(
しのみやがわら
)
を過ぎれば、
蝉丸
(
せみまる
)
の歌に想いをはせ、
勢多
(
せた
)
の
唐橋
(
からはし
)
、
野路
(
のじ
)
の
里
(
さと
)
を過ぎれば、既に志賀、琵琶湖にも、再び春が訪れていた。
現代語訳 平家物語:10 第十巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
鳥の羽音、
囀
(
さえず
)
る声。風のそよぐ、鳴る、うそぶく、叫ぶ声。
叢
(
くさむら
)
の蔭、林の奥にすだく虫の音。
空車
(
からぐるま
)
荷車の林を
廻
(
めぐ
)
り、坂を下り、
野路
(
のじ
)
を横ぎる響。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
下に
萩
(
はぎ
)
、
桔梗
(
ききょう
)
、
芒
(
すすき
)
、
葛
(
くず
)
、
女郎花
(
おみなえし
)
を
隙間
(
すきま
)
なく
描
(
か
)
いた上に、真丸な月を銀で出して、その横の
空
(
あ
)
いた所へ、
野路
(
のじ
)
や空月の中なる女郎花、
其一
(
きいち
)
と題してある。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
其の
鳥打帽
(
とりうちぼう
)
を
掻取
(
かきと
)
ると、
雫
(
しずく
)
するほど
額髪
(
ひたいがみ
)
の黒く
軟
(
やわら
)
かに
濡
(
ぬ
)
れたのを、
幾度
(
いくたび
)
も払ひつゝ、
太
(
いた
)
く
野路
(
のじ
)
の雨に悩んだ
風情
(
ふぜい
)
。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
神田祭の晩
肌守
(
はだまも
)
りに「
野路
(
のじ
)
の
村雨
(
むらさめ
)
」のゆかたで喉をきかせた時だったと云うが、この頃はめっきり老いこんで、すきな歌沢もめったに
謡
(
うた
)
わなくなったし
老年
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
誰の字とも弥生はもとより知る由もないが、
金釘流
(
かなくぎりゅう
)
の文字が
野路
(
のじ
)
の
時雨
(
しぐれ
)
のように斜めに倒れて走っている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
野路
(
のじ
)
や、畑の景色を
瞰
(
み
)
おろしながら、そこでさめざめと泣きつづけたりするのでした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
なおこの句には強い必要はないけれども「旅行快天」という前置きがある。旅をしていて朝早く宿を立出た時分、晴れ渡った
野路
(
のじ
)
の曙の景色を言ったものであろう。次に明治に移ると
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
子供等は玉川から電車で帰り、主人夫妻は連れて往った隣家の
女児
(
むすめ
)
と共に、つい其前々月もらって来た三歳の女児をのせた
小児車
(
しょうにぐるま
)
を押して、星光を踏みつゝ
野路
(
のじ
)
を二里くたびれ果てゝ帰宅した。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
野路
(
のじ
)
の菊花のあざやかに色もさま/″\めづらしければ
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
更衣
(
ころもがえ
)
野路
(
のじ
)
の人はつかに白し
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
馬の背に移って、梨丸に口輪を
把
(
と
)
らせながら、東へ東へと道をとった。
野路
(
のじ
)
はいつか
茜
(
あかね
)
に染まり、馬と人の細長い影が地に連れだって行く。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
榛谷
(
はんがえ
)
四郎、熊谷次郎、
猪股
(
いのまた
)
小平六を先陣としてその勢合わせて三万五千余騎、近江国の
野路
(
のじ
)
や
篠原
(
しのはら
)
に陣を張った。
現代語訳 平家物語:09 第九巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
見たばかりで、
野路
(
のじ
)
の樹とも垣根の枝とも、誰も気の着いたものはなかったが、初め座の定まった処へ、お才という内の姉御が、お茶
聞
(
きこ
)
しめせ、と持って出て、梅干も候ぞ。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
宗助は好い加減な頃を見計らって、
丁寧
(
ていねい
)
に礼を述べて元の席に復した。主人も
蒲団
(
ふとん
)
の上に直った。そうして、今度は
野路
(
のじ
)
や空云々という題句やら書体やらについて語り出した。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
秋風やいつ迄逢はぬ
野路
(
のじ
)
二つ
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
更衣
(
ころもがえ
)
野路
(
のじ
)
の人はつかに白し
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
まもなく、義貞以下、全軍の人馬は、また武蔵野の
野路
(
のじ
)
を分けて、南へ南へ、さぐるように、えんえんと流れて行った。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
野路
(
のじ
)
や空、月のなかなる
花野
(
はなの
)
を
惜気
(
おしげ
)
も無く織り込んだ
綴
(
つづれ
)
の丸帯にある。
唐錦
(
からにしき
)
小袖
(
こそで
)
振袖
(
ふりそで
)
の
擦
(
す
)
れ違うところにある。——文明の詩は金にある。小野さんは詩人の本分を
完
(
まっと
)
うするために金を得ねばならぬ。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
春雷や傘を借りたる
野路
(
のじ
)
の家
六百句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
しかし、やがて大陸の
渺々
(
びょうびょう
)
たる
野路
(
のじ
)
山路は、いつか、旅の母子に、後ろの不安も、思い出せぬほどな遠くにしていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「長の
野路
(
のじ
)
やら峠やら、途中、何が起るかしれませぬ。わけて近年は物騒なとも聞きまする。登子でしたら、十人二十人の侍をつれても、恐ろしゅう思われますのに」
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ここは、よう旅人が迷うので、遠い以前、北条
泰時
(
やすとき
)
さまが、本野原の
野路
(
のじ
)
のかぎり、道しるべの柳を
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こうさけんで、主上の先を払っていた時益だったが、その南の探題時益も、ついに瀬田と守山のあいだの
野路
(
のじ
)
附近で野伏の流れ矢にあたって、あえなき最期をとげてしまった。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ただやがて、行く先々の
野路
(
のじ
)
や
郷
(
さと
)
には、あらしの下を馳ける
松明
(
たいまつ
)
の火が頻りに見られた。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
野
常用漢字
小2
部首:⾥
11画
路
常用漢字
小3
部首:⾜
13画
“野”で始まる語句
野
野原
野暮
野分
野面
野郎
野良
野菜
野茨
野幇間