トップ
>
酷
>
きび
ふりがな文庫
“
酷
(
きび
)” の例文
暑氣は日一日と
酷
(
きび
)
しくなつて來た。殊にも今年は雨が少なくて、田といふ田には水が十分でない。日中は家の中でさへ九十度に上る。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
娘を亡くして気を落としたりしたあげく、残暑の
酷
(
きび
)
しい中の野天で、強い仕事をしたりして暮らしていてはさぞ大変なことだろう。
幕末維新懐古談:74 初めて家持ちとなったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
彼の放蕩の
齎
(
もたら
)
したこの不幸な移転に対する不満がこの
酷
(
きび
)
しい寒さの苦痛を通して秘かにあらわれて来ているものかも知れなかった。
不幸
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
かの女の稚純な白痴性がかの女の自他に与える一種の
麻痺状態
(
まひじょうたい
)
ではなかろうかと、かの女は
酷
(
きび
)
しく自分を批判してみるのである。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
福岡の方では今度のことを言ひがゝりにして、だから
老人
(
としより
)
に子供を任せては置けない、三人とも
此方
(
こちら
)
へ寄越せと
酷
(
きび
)
しく云つて來るんだらう。
孫だち
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
▼ もっと見る
その南風が吹き募ると、海と空が茫と
脹
(
ふく
)
らんで白く燃え上るようであった。どうかすると真夏よりも
酷
(
きび
)
しい光線で野の緑が射とめられていた。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
たださえ
行悩
(
ゆきなや
)
むのに、秋暑しという言葉は、残暑の
酷
(
きび
)
しさより身にこたえる。また汗の目に、野山の赤いまで暑かった。
栃の実
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
相原
(
あいばら
)
新吉夫婦が
玉窓寺
(
ぎょくそうじ
)
の
離家
(
はなれ
)
を借りて入ったのは九月の末だった。残暑の
酷
(
きび
)
しい年で、寺の境内は汗をかいたように、昼日中、いまだに
油蝉
(
あぶらぜみ
)
の声を聞いた。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
何
(
なんに
)
もしたくないのだから、家賃とか米代とか、お
母
(
っか
)
さんに
酷
(
きび
)
しく言われるものは、
拠
(
よんどころ
)
なく書き物をして五円、八円取って来たが、
其様
(
そん
)
な処へ遊びに行く銭は
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
その当時私は警察当局からも、新聞記者諸君からも、どんなに
酷
(
きび
)
しく遺書の発表を迫られたか分らぬ。
血液型殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
それが十九世紀の末からリアリズムの再検討が、あらゆる芸術界に、冷たく、
酷
(
きび
)
しく吹きすさんだ。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
「
童
(
わっぱ
)
よ。おぬし、伊織とかいうたの。——いつぞやはこの婆に、ようも
酷
(
きび
)
しいまねをしやったな」
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
余は理想家でも何でも無し、唯だ余り
酷
(
きび
)
しく文学を
事実
(
ファクト
)
に推しつけたがるが愛山君の癖なれば、一時の出来心にて一撃を試みたるのみ、考へて見ればつまらぬ喧嘩にあらずや。
人生の意義
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
槍の名手と評判があった、矢作治部太夫は、今日は寒さがちと
酷
(
きび
)
しいので、城中から下がってくると直ぐ、好きな酒をちびちびと飲みはじめた。そこへ弓削田宮内が訪れて来た。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
いよ/\奥方の鞭が
酷
(
きび
)
しくなつて四五日前からさかんに水車を廻しはじめてゐたと思つたら、今朝、とても威気揚々たる姿で、馬車に荷物を満載して町へ出掛けて行つたよ——おい
馬車の歌
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
下の方には、人家の赤い屋根が、まぶしい寒い日の光に笑っていた。空気は強く
酷
(
きび
)
しかった。凍った大地は、
辛辣
(
しんらつ
)
な歓喜を感じてるがようだった。クリストフの心も大地と同じだった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
一視同律であまりに
酷
(
きび
)
しく批判すれば、初心の人は
怖
(
おじ
)
け、または恨むであろう。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
源「へい/\お早うございます、いつも御機嫌よろしゅう、此の節は
日中
(
にっちゅう
)
は大層いきれて
凌
(
しの
)
ぎ兼ねます、今年のような
酷
(
きび
)
しい事はございません、
何
(
ど
)
うも暑中より酷しいようでございます」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ジルノルマン氏はマリユスが間もなく自分のもとを去ってゆくに違いないと感じた。喜んで迎えなかったために彼を反抗さし、
酷
(
きび
)
しい態度をしたため彼を追い返すことになったと感じた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
短い夏の夜が明けると、
最早
(
もう
)
立秋という日が来た。
生家
(
さと
)
に居るお雪からは手紙で、
酷
(
きび
)
しい暑さの見舞を書いて
寄
(
よこ
)
した。別に二人の姪へ
宛
(
あ
)
てて、留守中のことはくれぐれも宜しく頼む、と
認
(
したた
)
めてあった。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
酷
(
きび
)
しい冬の北風は、戸口や窓に泣いてゐて
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
暑気
(
あつさ
)
は日一日と
酷
(
きび
)
しくなつて来た。殊にも今年は雨が少なくて、田といふ田には水が充分でない。日中は家の
中
(
うち
)
でさへ九十度に上る。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
何と云っても一番人を融かすところのものは、彼の詩人的素質です。この素質が、彼の
酷
(
きび
)
しいリアリズムを神秘にまで高めます。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
時は三月で、まだ余寒が
酷
(
きび
)
しく、ぶるぶる震えながら鹿沼在を出かけましたが、
村端
(
むらはず
)
れに
人力車屋
(
くるまや
)
が四、五人
焚火
(
たきび
)
をして客待ちをしております。
幕末維新懐古談:73 栃の木で老猿を彫ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
しかし、それを話せば、頭上に迫っている更に
酷
(
きび
)
しいものの印象を強めるだけのことであった。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
その
銭
(
かね
)
が入ったら——例の箱根から
酷
(
きび
)
しくも言って来るし、自分でも是非そのまゝにしている荷物を取って来たり、勘定の仕残りだのして二三日遊んで来ようと思っていたのだが
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
長い陰気な梅雨が
漸
(
ようや
)
く明けた頃、そこにはもう
酷
(
きび
)
しい暑さが待ち設けて居て、
流石
(
さすが
)
都大路も
暫
(
しばら
)
くは人通りの杜絶える真昼の静けさから、豆腐屋のラッパを合図に
次第
(
しだい
)
に都の騒がしさに帰る夕暮時
真珠塔の秘密
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
忠「誠に存外御無沙汰を致しました、どうも
酷
(
きび
)
しいことでございます」
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
『今日は、わけても
酷
(
きび
)
しい。——所で、この儘、千坂様の所へ行くか』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それは
酷
(
きび
)
しい調子に返されたる厳粛な調子であった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
私が釧路の新聞へ行つたのは、
恰度
(
ちやうど
)
一月下旬の事、寒さの一番
酷
(
きび
)
しい時で、華氏寒暖計が毎朝零下二十度から三十度までの間を昇降して居た。
菊池君
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
師匠の家なども我々は畳を上げ、道具を方附け、いざといえば
何処
(
どこ
)
かへ立ち
退
(
の
)
く算段……天候は悪く、びしょびしょ雨で、春というのに寒さは
酷
(
きび
)
しい。
幕末維新懐古談:19 上野戦争当時のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
もう秋は立っているのだが、暑さはこの夏の土用にも
勝
(
まさ
)
って
酷
(
きび
)
しい。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
老人は
酷
(
きび
)
しい声で言った。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「信長公が自身攻めつぶして行かれた後は、草木も枯れてしまう
酷
(
きび
)
しさだが、筑前守が攻め陥したあとには、何となく寒土から木や草の芽が
萌
(
も
)
え出るようなものが残る。いったいこれは何の違いだろうか」
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“酷”の意味
《形容動詞》
酷(ひど)い。厳(きび)しい。
(出典:Wiktionary)
酷
常用漢字
中学
部首:⾣
14画
“酷”を含む語句
苛酷
惨酷
残酷
酷似
酷烈
手酷
酷使
慘酷
冷酷
殘酷
小酷
酷待
真一酷
酷薄
峻酷
深酷
酷過
一酷
酷吏
酷熱
...