邯鄲かんたん)” の例文
盧生が邯鄲かんたんというところで仙翁から枕を借りて仮寝うたたねすると、黄梁こうりょうの飯の出来上るまでに五十年の栄華の夢を見たという話でございます。
邯鄲かんたんを金太郎。盧生夢さめてのところ、落寞たる感が場に漲った。これなど名手の演出というべきものであろう。かえりに、東品楼で食事。
しかしてかかる夢は普通にいう邯鄲かんたんの夢でなくして、理想とも称すべきものであり、また人生の実際の一部となるものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
『太平記』に唇亡びて歯また寒くは分って居るが、その次に魯酒薄うして邯鄲かんたん囲まる、これには念の入った訳がある。
おもてが一斉に眼を開けた。邯鄲かんたん男、やせ男、泥眼、不動、弱法師よろぼうし、岩壁に懸けられて夢見ていた、二百の面が彼女を見た。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
男の覗いていたのはある有名な古物商の陳列窓で、そこの中央にはよしありげな邯鄲かんたん男の能面が鉄漿おはぐろの口を半開にして、細い目で正面を睨んでいたという。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そして、邯鄲かんたんの敵とまみえて、大激戦は展開されたが、沮鵠そこうの大布陣も、ついに潰乱かいらんのほかはなかった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渡辺華山わたなべかざん邯鄲かんたんというくために、死期を一週間繰り延べたという話をつい先達せんだって聞きました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは邯鄲かんたんの歩みを学ばないうちに寿陵の歩みを忘れてしまい、蛇行匍匐だこうほふくして帰郷したと云う「韓非子かんぴし」中の青年だった。今日こんにちの僕は誰の目にも「寿陵余子」であるのに違いなかった。
歯車 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
たとえば邯鄲かんたんという曲に於て、主演者の盧生という人物が、能を終って引っこみがけに、自分の持っていた団扇うちわを、舞台に置き忘れたまま幕に入る型がある(通常は持って引っ込む)。
能とは何か (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ちょう邯鄲かんたんの都に住む紀昌きしょうという男が、天下第一の弓の名人になろうと志を立てた。おのれの師とたのむべき人物を物色するに、当今弓矢をとっては、名手・飛衛ひえいおよぶ者があろうとは思われぬ。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
田忌でんきこれしたがふ。はたして邯鄲かんたんり、せい桂陵けいりようたたかふ。((齊軍))おほい(四一)りやうぐんやぶる。のち十五ねんてうと、かんむ。かんきふせいぐ。せい田忌でんきしやうとしてかしむ。
泉殿せんでんなぞらへた、飛々とびとびちんいずれかに、邯鄲かんたんの石の手水鉢ちょうずばち、名品、と教へられたが、水の音よりせみの声。で、勝手に通抜とおりぬけの出来る茶屋は、昼寝のなかばらしい。の座敷も寂寞ひっそりして人気勢ひとけはいもなかつた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
謡曲『邯鄲かんたん』に
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
例の盧生ろせい邯鄲かんたんの夢——黄梁こうりょうせんの出来る間に五十年の栄華を夢みたという話なども、決して単なる偶話ではなく、私の所謂いわゆる第四次元の世界を覗き
と、察して、袁尚へ献言し、まずげきを武安の尹楷いんかいに送って、毛城もうじょうに兵を籠め、兵糧をよび寄せ、また沮授そじゅの子の沮鵠そこうという者を大将として、邯鄲かんたんの野に大布陣をしいた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは邯鄲かんたんの歩みを学ばないうちに寿陵の歩みを忘れてしまひ、蛇行匍匐だかうほふくして帰郷したと云ふ「韓非子かんぴし」中の青年だつた。今日の僕は誰の目にも「寿陵余子」であるのに違ひなかつた。
歯車 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
行きつけの居酒屋「樽万たるまん」で銘酒「邯鄲かんたん」の一本がキューと行ける筈なのに、要らざる処を通りかかって要らざる用事を引受けた御蔭おかげで、千里一飛ひととび、虎小走り一直線に大学へ行かねばならぬ。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ただふかすだけなら勘弁のしようもあるが、しまいには煙を輪に吹いて見たり、たてに吹いたり、横に吹いたり、乃至ないし邯鄲かんたんゆめまくらぎゃくに吹いたり、または鼻から獅子の洞入ほらいり、洞返ほらがえりに吹いたり。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
泉殿せんでんなぞらえた、飛々とびとびちんのいずれかに、邯鄲かんたんの石の手水鉢ちょうずばち、名品、と教えられたが、水の音より蝉の声。で、勝手に通抜けの出来る茶屋は、昼寝の半ばらしい。どの座敷も寂寞ひっそりして人気勢ひとけはいもなかった。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
謡曲の「邯鄲かんたん」から取材した小説をかいたりしていた。
二つの庭 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
邯鄲かんたんの秋の午後は、落葉おちばした木々のこずえを照らす日の光があってもうすら寒い。
黄粱夢 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
邯鄲かんたん
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)