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遅々
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ちち
ふりがな文庫
“
遅々
(
ちち
)” の例文
旧字:
遲々
かねて隠岐一遊を、島の団体からすすめられているが、原稿も日々
遅々
(
ちち
)
だし、
机忙
(
きぼう
)
は溜るばかりで、どうも今のとこ行けそうもない。
随筆 私本太平記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
然しながら、訳筆は
遅々
(
ちち
)
として進まなかった。不案内な内容をひねくれた文章で書いてある上に、少しも気乗りがしなかった。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
時間は
遅々
(
ちち
)
として、なかなか
捗
(
はかど
)
らなかった。私は縁側に出て
日向
(
ひなた
)
ぼっこをしながら、郵便配達員の近づく足音を一秒でも早く聞き当てようと骨を折った。
大脳手術
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
私はこの時一種の
暗愁
(
あんしゅう
)
の湧くを感じた。黒い烟は、
遅々
(
ちち
)
として
這
(
はう
)
ように黄色を
帯
(
お
)
んだ
豆圃
(
まめばたけ
)
の上に影を映じている。その影は絶えず騒がしそうに乱れていた。
暗い空
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
数年の後、奥羽地方に鉄道を通ずるの日には、今の蒸気船便もまた、はなはだ
遅々
(
ちち
)
たるを覚ゆることならん。
教育の目的
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
▼ もっと見る
新進気鋭の演劇研究者の眼から観たらば、わが劇壇の進歩は実に
遅々
(
ちち
)
たるもので、実際歯がゆいに相違ない。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
遅々
(
ちち
)
としてヨンヌの平野をのたくりゆくうち、ようやく
正午
(
ひる
)
近く、サンの町の教会の尖塔が、向うの丘の
薄陽
(
うすび
)
の中に浮びあがって見えるところまで辿り着いた。
ノンシャラン道中記:02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
南博士達の仕事は
遅々
(
ちち
)
として進まなかった。五十嵐博士をうしない、その設計ノートまでも盗み去られた設計班は、羅針盤をうしなった船のごときものであった。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それから先はたとえ
遅々
(
ちち
)
たりとも一歩の美をわが金魚に進むれば、一歩のわれの勝利であり、その勝利の美魚を自分に隷属させることが出来ると、強いて闘志を燃し立てた。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その
眼瞼
(
まぶた
)
を重々しく開けたが、
生命
(
いのち
)
の灯火の消えようとしている、どんよりとしたその白眼が、まず右手へそろそろと動き、さらに左手へ
遅々
(
ちち
)
と動いたが、そこで突然閉ざされた。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
自らその蛮勇なしと
省
(
かえり
)
みたならば
徒
(
いたずら
)
に
空
(
す
)
いた電車を待つよりも、
泥亀
(
どろがめ
)
の歩み
遅々
(
ちち
)
たれども、自動車の通らない
横町
(
よこちょう
)
あるいは市区改正の破壊を
免
(
まぬか
)
れた旧道をてくてくと歩くに
如
(
し
)
くはない。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
……
吾人
(
ごじん
)
結束せんとするや、彼等直ちにこれを
妨
(
さまた
)
ぐ、これを破る。我国社会運動の
遅々
(
ちち
)
として進まざる、
即
(
すなわ
)
ち此の無政府党あるに依る。実に彼等は社会主義の
仇敵
(
きゅうてき
)
なり、人類の仇敵なり。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
濡れた電信柱に
凭
(
よ
)
りかかって私は、前の大時計の針を眺めながら、もうどうせ売れはしない、早く帰りたいと思った。が、その夜に限って私には、時の歩みは
遅々
(
ちち
)
として進まないのであった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
生憎
(
あいにく
)
時計を見ると、かれこれ午後二時に近い、空気も稀薄になり始めて、絶頂まで、
遅々
(
ちち
)
たる足取りでは、今夜中にホテルまで、戻り得られるか否かも、
覚束
(
おぼつか
)
ないので、ここから下山することにした。
火と氷のシャスタ山
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
春日
遅々
(
ちち
)
として、のどかな画面。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
それが日々、大陸の熱砂を這うごとく行く影は、炎日の
労働蟻
(
ろうどうあり
)
が
蜿蜒
(
えんえん
)
と、物を運んで行く作業にも似て、
憐
(
あわ
)
れにもまた
遅々
(
ちち
)
として見えた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これに反して教育は人の心を養うものにして、心の運動変化は、はなはだ
遅々
(
ちち
)
たるを常とす。
政事と教育と分離すべし
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
私は黒い柱に
懸
(
かか
)
った、古風の大きな八角時計を見上げた。縁の金色が、
僅
(
わず
)
かに鈍い灰色の空気に光って、
眤
(
じっ
)
と
眸
(
ひとみ
)
を移さずに白い円盤を
見詰
(
みつめ
)
ていると、長い針は
遅々
(
ちち
)
と動いて、五分過ぎた。
不思議な鳥
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ようやくなだめているうちにも、書窓の
廂
(
ひさし
)
に、陽は
遅々
(
ちち
)
と傾きかけながら、堂上の人の眠りは、いつさめるとも見えなかった。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして正成の馬は、
遅々
(
ちち
)
として、この頃から進まなかった。馬上の人にも馬にも矢やら刀キズの血が生々しい。しかしそれだけのせいでもない。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だが、春はようやく日も
遅々
(
ちち
)
として、駅路山村、どこでも怪しむ者などなかった。とはいえこの同勢で梁山泊への道はそうかんたんな行旅でもない。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
各地に
割拠
(
かっきょ
)
する豪族たちから、
遅々
(
ちち
)
、自覚されて、東海に徳川、織田の
起
(
た
)
つあり、西海に、毛利、大内の起るあり、甲山に信玄、ここに謙信、相模に北条、そして駿遠の堺に
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
筑前守様の御上意で、きょうはお前たちの
所存
(
しょぞん
)
を訊いてやれとのお言葉だ。かねて汝らも知るがごとく、築堤の日限ははや半ばをすぎておる。然るに、工事は
遅々
(
ちち
)
として進まない。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「それでは
遅々
(
ちち
)
と進まぬ道理だ。とかく兄上の御意志はわれらには
酌
(
く
)
みかねる」
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
隊伍と隊伍は、たがいに呼び交わしながら、
遅々
(
ちち
)
として、山路を越えていった。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
乱麻
(
らんま
)
の状にて、
余賊
(
よぞく
)
、容易に平定せず、さきに新田義貞からも、しきりな急使を受けておりますものの、いかにせん賊徒平定の
謀
(
はかり
)
に、日夜、心をくだくのみで、
遅々
(
ちち
)
と、
延引
(
えんいん
)
いたしおりますこと
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかるに、歩みも
遅々
(
ちち
)
と、夜風の中をさまようている不審な人影が見えますゆえ、馬をとばして行き、何者かと呼びかけまするに、逃げもせず、新田殿の者か、足利どのの内かとたずね返しまする。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
疾
(
と
)
うの昔に、高麗村へ
紛
(
まぎ
)
れこんで、あんな器用な芸当をやッてのけた上、ともかく、馬春堂を助け出して、物騒なお屋敷におさらばを告げているというのに、彼は、まだこんな所に
遅々
(
ちち
)
としている。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
遅々
(
ちち
)
、春の日は、まだ
山科
(
やましな
)
あたり、陽は
舂
(
うすず
)
きもしていなかった。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
窓外に日は
遅々
(
ちち
)
たり
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
遅
常用漢字
中学
部首:⾡
12画
々
3画
“遅”で始まる語句
遅
遅疑
遅蒔
遅桜
遅鈍
遅刻
遅速
遅滞
遅延
遅日