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迂遠
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うえん
ふりがな文庫
“
迂遠
(
うえん
)” の例文
手段のために主要な意志の表示が不自由になり、
迂遠
(
うえん
)
になり、あるいは
晦渋
(
かいじゅう
)
になるようでは、決して最上の手段といわれないのです。
教育の民主主義化を要求す
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
何事もこのとおりにて、世の中の有様はしだいに進み、昨日便利とせしものも今日は
迂遠
(
うえん
)
となり、去年の新工夫も今年は陳腐に属す。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
この教え方は、道も長いし、
迂遠
(
うえん
)
なようであるが、落ちつく処へ落ち附くとかえって歩みは
速
(
すみ
)
やかで、どんどんと
捗取
(
はかど
)
るのであります。
幕末維新懐古談:78 谷中時代の弟子のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
いかに
迂遠
(
うえん
)
な主人でもこう明らさまに書いてあれば分るものと見えてようやく気が付いたようにフンと言いながら吾輩の顔を見た。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
故に学問とはどんなものか、人は何のために学問に向わねばならぬかという問題は、
迂遠
(
うえん
)
なようだがやはり最初に知っておく必要がある。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
▼ もっと見る
現代の日本の物理実験学を建てられた
中村清二
(
なかむらせいじ
)
博士の「理学者の見たる千里眼問題」によると、先生たちは
先
(
ま
)
ず「
迂遠
(
うえん
)
なる学者」と言われ
千里眼その他
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
著名なる学者方が選択して、これを続々刊行してなるべく広く知識を全国に別つ——これは
迂遠
(
うえん
)
なことのようであるが、これ一番近道である。
吾人の文明運動
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
迂遠
(
うえん
)
な馬鹿々々しいやうな気がするが、しかし、真に理解して呉れるものゝ尠いといふ上に起る作者の嘆声としては、尤もなことであると思ふ。
墓の上に墓
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
「
迂遠
(
うえん
)
なものだ……」と彼は苦笑して、たびたび、それについて予言したことが、証拠だてられてくるのを愉快に思った。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その過程を煩わしく
諄
(
くど
)
く記述してある書物というものを、どうして
迂遠
(
うえん
)
で
悪丁寧
(
わるていねい
)
とより以外のものに思い
做
(
な
)
されようぞ。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
私は(21)においてすでに大体の意見を申し述べた通りそういうことをいう人は形式上の完備を必要とする人で実際には甚だ
迂遠
(
うえん
)
な人だと考えます。
俳句とはどんなものか
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
主君のためによきことならば、自分は独りぬきんでても申上げる、相談のうえなどという
迂遠
(
うえん
)
な
誓言
(
せいげん
)
はできない。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
さるを俳諧を捨て詩を語れと云
迂遠
(
うえん
)
なるにあらずや、答
曰
(
いわく
)
(略)画の俗を去だにも筆を投じて書を読しむ、
況
(
いわんや
)
詩と俳諧と何の遠しとする事あらんや(略)
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
こうも言って、彼が他人の感情に鈍感で、他人の恩恵を一図に善意にのみ受取っている
迂遠
(
うえん
)
さを冷笑した。「ばか正直でずうずうしくなくてはできないことだ」
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
それは或は人生を知るには
迂遠
(
うえん
)
の策だったのかも知れなかった。が、街頭の行人は彼には
只
(
ただ
)
行人だった。
大導寺信輔の半生:――或精神的風景画――
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「それぐらいのことが分らなくて女房の操縦が出来るもんか。文学者というものは案外人情に
迂遠
(
うえん
)
だね」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
高尚というのは悪い事でありますまいけれども中川さんの風流亡国論の通りに何でも風流がかった事を高尚と心得てその実は
迂遠
(
うえん
)
な学科ばかり
稽古
(
けいこ
)
したものです。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
そういう時に世人はよく理論と実際という
常套語
(
じょうとうご
)
を持出して科学者の
迂遠
(
うえん
)
を冷笑するのが例である。
物理学の応用について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そして、印刷した紙に彼の姓名や金額などを書き入れた受取証見たいなものを貰った。なる程、これは非常に
迂遠
(
うえん
)
な方法には相違ない。併し安全という点では最上だ。
心理試験
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
これこそは忘れてはならぬ右門流十八番中の十八番、一見
迂遠
(
うえん
)
に見えて迂遠でない、遠回りしていって、事の起こりの根から探り出す名人独自のからめ手詮議なのです。
右門捕物帖:29 開運女人地蔵
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
読者のなかには、僕のいうことがはなはだ子供らしい、
迂遠
(
うえん
)
なことだ、世渡りの道を知らぬとなじる人もあろう。僕も甘んじていわゆる
世渡
(
よわた
)
りの道に
疎
(
うと
)
きことを自信する。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
なんの詮索もしなかったのは
迂遠
(
うえん
)
で、その後夜ごとの火事にしても、江戸の諸方から一度に火の手の挙がる様子は、どう考えても、多勢の者が連絡して、八方から火を放つとしか思われず
銭形平次捕物控:135 火の呪い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
書記官と聞きたる綱雄は、浮世の波に漂わさるるこのあわれなる
奴
(
やっこ
)
と見下し、去年哲学の業を
卒
(
お
)
えたる学士と聞きたる辰弥は、
迂遠
(
うえん
)
極まる空理の中に一生を葬る馬鹿者かとひそかに
冷笑
(
あざわら
)
う。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
繁雑なる手法からかつて
活々
(
いきいき
)
した作が生れたことがあろうか。それは無益なる
迂遠
(
うえん
)
に過ぎなく、その結果が貧弱でなかった場合は極めて少ない。そこには二重の損失さえ見えるではないか。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
五次方程式が代数的に解けるものだか、どうだか、発散級数の和が、有ろうと無かろうと、今は、そんな
迂遠
(
うえん
)
な事をこね廻している時じゃないって、誰かに言われているような気がするのだ。
乞食学生
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
あまりにも
迂遠
(
うえん
)
なこととして恥ずかしい。
河豚食わぬ非常識
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
火消しの働きは至極
迂遠
(
うえん
)
なものには相違ないが、しかし、器械の手伝いがないだけ、それだけ、仕事師の働きは激しかった。
幕末維新懐古談:16 その頃の消防夫のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
寝耳に水——というほど、それに
迂遠
(
うえん
)
だったわけではない。毛利勢の出動は、あらかじめ計算に入れてある。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「今はまだ攘夷の時ではない」という、「攘夷説に拠ってまず国論民心を統一し」という、これまで秀之進が
翹望
(
ぎょうぼう
)
していた気持からすると
迂遠
(
うえん
)
きわまるはなしだ。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
これも一つは
我邦
(
わがくに
)
の教育法が間違っているから何事も実際に
迂遠
(
うえん
)
な人物ばかり出来るのですね。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
代助はこの
迂遠
(
うえん
)
で、又
尤
(
もっと
)
も困難の方法の
出立点
(
しゅったつてん
)
から、程遠からぬ所で、
蹉跌
(
さてつ
)
してしまった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
さるを俳諧を捨てて詩を語れと云う
迂遠
(
うえん
)
なるにあらずや、答えて曰く(略)画の俗を去るだにも筆を投じて書を読ましむ、いわんや詩と俳諧と何の遠しとすることあらんや(略)
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
なにも好んで俳句をそこまで
引摺
(
ひきず
)
って行かねばならぬ理由はない。俳句は俳句として表現するに適当な思想内容があるはずである。
其処
(
そこ
)
に気がつかないというのは
迂遠
(
うえん
)
なことである。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
かの女は、自分がすでに感じていることを今更云い出されるような
迂遠
(
うえん
)
さを感じた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
これはよほど
迂遠
(
うえん
)
のようであるが、学校の教育より
外
(
ほか
)
にこれは望むところはない。
政治趣味の涵養
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
だが、うっかり手出しをしては、相手に要心させて、真の犯人を逃がして了う
虞
(
おそ
)
れがあるので、非常に
迂遠
(
うえん
)
な方法だけれど、僕は自分の職業を利用して、子供だけを外へつれ出すことを考えた。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と——いうも
迂遠
(
うえん
)
な話で、すでに
最前
(
さいぜん
)
から小屋の外には、おびただしい人の足音が、なにかヒソヒソ
囁
(
ささや
)
きながら
嵐
(
あらし
)
の
先駆
(
せんく
)
のごとく、ひそかにめぐりめぐっていた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こんな
迂遠
(
うえん
)
なことでは
便
(
たよ
)
りにならん、どうしても、木で彫るより仕方がないというので、東京中の仏師屋を歩き廻って木彫りの稽古をつけてくれる師匠を探して見たが
幕末維新懐古談:69 馬専門の彫刻家のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
以前学校で大原の説を聞いた時分はナンダそんな
迂遠
(
うえん
)
な事を言って何の役に立つものかと軽蔑したが社会へ出て今の世人の有様を見ると実に心の礼の欠乏しているのに驚くね。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
この劇烈なる生活慾に襲われた不幸な国民から見れば、
迂遠
(
うえん
)
の空談に過ぎない。この迂遠な教育を受けたものは、他日社会を眼前に見る時、昔の講釈を思い出して笑ってしまう。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私が卑近な平易な句作法をお話しいたしたことは、
晦渋
(
かいじゅう
)
な
迂遠
(
うえん
)
な俳論をして諸君を一夜作りの大家にするよりも、諸君の良友をもって自らを任じておるゆえんだと考えるのであります。
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
迂遠
(
うえん
)
といえばいえるが、その道義に固められて来た頑固な一筋気は、物頭格より組頭、組頭よりは小頭、小頭よりは足軽草履取といったような末の者ほどそうであった。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大原「ウム、そんな
迂遠
(
うえん
)
な方法を取らないでも
近路
(
ちかみち
)
はいくらもある。小山の妻君が世話を ...
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
世間に通用しない仕事と
見做
(
みな
)
されていることだから、そういう
迂遠
(
うえん
)
な道へわざわざ師匠取りをして
這入
(
はい
)
って来ようという人のないのは、その当時としてはまことに当然のことであったのでした。
幕末維新懐古談:76 門人を置いたことについて
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
同時にもっとも
迂遠
(
うえん
)
な愛の実際家だったのです。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
だが、争闘の意気ごみというものは、そんな
迂遠
(
うえん
)
な進路に火を発するものではありません。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ふーム、では、万太郎の如き、
迂遠
(
うえん
)
なまねをしていては駄目だの」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
常識はいつも探索に失敗と
迂遠
(
うえん
)
な笑いを招く。道とばかり考えているから思いつかなかったが、そこは増上寺の寺領で、遠く
麻布
(
あざぶ
)
の台町まで林つづきである。人目にかからずに歩くには、
屈竟
(
くっきょう
)
な道だ。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「あの問題か。さりとは、貴公のほうが、よほど
迂遠
(
うえん
)
だぞ」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
迂遠
(
うえん
)
でござる、お考えがちがう」
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“迂遠”の意味
《名詞》
迂遠(うえん)
道などが曲がりくねって遠いこと。
まわりくどいこと。実際の役に立たないこと。
世情にうといこと。
(出典:Wiktionary)
迂
漢検準1級
部首:⾡
7画
遠
常用漢字
小2
部首:⾡
13画
“迂遠”で始まる語句
迂遠千万