とどろき)” の例文
機械きかいとどろき勞働者ろうどうしや鼻唄はなうた工場こうばまへ通行つうかうするたびに、何時いつも耳にする響と聲だ。けつしておどろくこともなければ、不思議ふしぎとするにもらぬ。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
やがて申刻ななつ少し前、この化物屋敷の興行元、とどろき権三ごんざは黒羽二重の紋付に、長いのを一本落して、蘭塔場の舞台にツイと出ました。
しかしそんな爆薬のホントウに集まる根城というのが、四国の土佐海岸だという事は、いかなとどろき先生でも御存じなかったでしょう。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
逃げ出したのではない、とどろきの源松これにありと知って、風をくらって逃出しにかかったのでないことは、その気分ではっきりわかる。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その時、春雷の鳴ったようなとどろきが、大地をりあげた。水の手の貯水池にはさざ波が立ち、空には黒煙がいちめんに濃くみなぎった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも、その痩身的な努力をみても、すでに法水自身が、水底のとどろきに耳を傾けていた一人だったことは、明らかであると思う。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
その下には依然たる家屋、電車のとどろきこそおりおり寂寞せきばくを破って通るが、その妻の実家の窓には昔と同じように、明かに燈の光が輝いていた。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
室内は寂然ひっそりした。彼の言は、明晰めいせきに、口きっしつつも流暢りゅうちょう沈着であった。この独白に対して、汽車のとどろきは、一種のオオケストラを聞くがごときものであった。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
手欄てすりから下のほうをのぞいて見ると、すぐ目の下に、そのころ人の少し集まる所にはどこにでも顔を出すとどろきという剣舞の師匠だか撃剣の師匠だかする頑丈がんじょうな男が
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
やがて二頭曳にとうびきの馬車のとどろきが聞えると思うと、その内に手綱たづなひかえさせて、緩々ゆるゆるお乗込になっている殿様と奥様、物慣ものなれない僕たちの眼にはよほど豪気ごうぎに見えたんです。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
各務かがみ房之丞、山東平七郎、とどろき玄八、岡崎兵衛、藤堂粂三郎、山内外記、夏目久馬等全十七人の相馬の剣士を上座にすえて、手柄顔のつづみの与吉、それに主人役の鈴川源十郎
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そのときどこからともなく、ハイヤーのすべって来るとどろきがして、表通りでまったらしい。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
お前方が歩いて行った跡にはとどろきが残る。
呂宋兵衛は、いましがた、軍師ぐんし昌仙しょうせん物頭ものがしらとどろき又八が、すべての手くばりをしたようすなので、ゆうゆう、安心しきっているていだった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここへみごとさらしにかけるまでの手柄を現わした、あの夜の名捕方——とどろきの源松という勘定奉行差廻しの手利てききでありました。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
妻があり、子があり、世間があり、師弟の関係があればこそあえはげしい恋に落ちなかったが、語り合う胸のとどろき、相見る眼の光、その底には確かにすさまじい暴風あらしが潜んでいたのである。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
市内大森区山王×××番地とどろき九蔵氏(四四)は帝都呉服橋電車通、目貫めぬきの十字路に聳立しょうりつする分離派式五層モダン建築、呉服橋劇場の所有主、兼、日本最初の探偵恐怖劇興行者、兼
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「八——、だいぶ前の事だが、花川戸の近江屋おうみやの娘が、とどろき権三ごんざという香具師やし誘拐かどわかされ、幽霊の見世物にされて殺されかけた事があったが、覚えているだろうな」(「幽霊にされた女」参照)
第三に、とどろき玄八。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
おりから、望楼ぼうろうの上へ、かけあがってきたのは、とどろき又八であった。黒皮胴くろかわどう具足ぐそく大太刀おおだちを横たえ、いかにも、ものものしいいでたちだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何のなにがしと名乗るような、気の利いたやっこではございませんが、とどろきの源松と申しまして、東路あずまじから渡り渡って、この里に追廻しの役どころを、つとめておりまする」
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
東両国に小屋を出した目吉めきちの化物屋敷と、変死人見世物は、年代記物になるほどの人気を呼びましたが、奥山の化物屋敷は、それよりずっと前で、興行元はとどろき権三ごんざ、四十そこそこの浪人者上がり
おひかえなさいとどろき、敵をあなどることはすでに亡兆ぼうちょうでござるぞ。伊那丸は有名なる信玄しんげんの孫、兵法に精通せいつう、つきしたがう傅人もりびともみな稀代きたいの勇士ときく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、今晩のような夜空に、こんななりをして、ここらを彷徨ほうこうするということは大なる抜かりで、早くもとどろきの源松の注視を受けたということは、大なる不覚と言わなければなりません。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
とどろき源松げんまつという腕利うでききの岡っ引に少々きもを冷やされているところがある。