トップ
>
被
>
かず
ふりがな文庫
“
被
(
かず
)” の例文
元気なのは、
破
(
や
)
れ三味線を借りて来て
爪弾
(
つめび
)
きをしているし、皮膚の青白いのは、もう夜の
具
(
もの
)
を
被
(
かず
)
いで、壁に向って寝こんでいる。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
上に
被
(
かず
)
いた着物をのけて寄って行った時に、あの時の女よりも大きい気がしてもまだ源氏は恋人だとばかり思っていた。
源氏物語:03 空蝉
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
裸体に、
被
(
かず
)
いて、大旗の下を行く三人の姿は、神官の目に、
実
(
げ
)
に、
紅玉
(
ルビイ
)
、
碧玉
(
サファイヤ
)
、
金剛石
(
ダイヤモンド
)
、真珠、珊瑚を星のごとく
鏤
(
ちりば
)
めた
羅綾
(
らりょう
)
のごとく見えたのである。
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
凝
(
こお
)
った雪を
被
(
かず
)
いている、或るものは細長い雪の
紐
(
ひも
)
で、腹の中を結えている、そうして尖鋭の岩を歯のように黒く露わして、ニッとうす気味悪く笑っている。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
昨夜
(
ゆうべ
)
のままに散らかった座敷のなかに、ふかふかした蒲団を
被
(
かず
)
いて寝ている二人の姿が、
懈
(
だる
)
いお増の目に、新しく婚礼した夫婦か何ぞのように、物珍しく映った。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
何となくいじらしい気持が
湧
(
わ
)
くのを泣かさぬよう添寝をして寝かしつけている子供の上に
被
(
かず
)
けた。彼女は子供のちゃんちゃんこと着ものの間に手をさし入れて子供を引寄せた。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
会津四十二万石の大禄を
被
(
かず
)
けられたまいし
御感
(
ぎょかん
)
の御涙にばし
御座
(
おわ
)
すか、と聞いて見た。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
小川屋に弁当と夜具を取りに行った小使が帰って来たのだと思っていると、夕闇の中から大きな夜具を
被
(
かず
)
いた黒い影が浮き出すように動いて来て、そのあとに女らしい影がちょこちょこついて来た。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
太陽は闇を
被
(
かず
)
きて現われぬ……
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「和子様、お
風邪
(
かぜ
)
を召されまするな。何ぞ、車のうちで、
被
(
かず
)
いておいでなさいませ」供は、
介
(
すけ
)
が一人だった。牛曳きが一人。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
のぞきながら言うとますます姫君は夜着を深く
被
(
かず
)
いてしまうのである。女房が少し遠慮をして遠くへ
退
(
の
)
いて行った時に、源氏は寄り添って言った。
源氏物語:09 葵
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
と呼ぶと、向うから
歩行
(
ある
)
くやうに、する/\と真夜中の箱根の関所が、霧を
被
(
かず
)
いて出て来た。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
そういうとき、また、わたくしは、どさりとまた一つ自分の心に重荷を
被
(
かず
)
けられる気がしました。あ、あ、わたくしは一体いくつの人のいのちの重荷を背負えば窮屈から許されるのでしょうか。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
小女房は、顔あからめたまま、そでの陰に、身を、
被
(
かず
)
き隠してうつぶしたが、女房たちが、責めてきかないので、
懐紙
(
かいし
)
に、歌を書いて示した。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
中は暗い気のする所へ、出たらしい朝日の光がさして来た時に、夕霧は
被
(
かず
)
いでおいでになる宮の夜着の端をのけて、乱れたお
髪
(
ぐし
)
を手でなで直しなどしながらお顔を少し見た。
源氏物語:40 夕霧二
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
麓
(
ふもと
)
の里に、
錣頭巾
(
しころずき
)
を取って
被
(
かず
)
き、
薙刀
(
なぎなた
)
小脇に
掻込
(
かいこ
)
んだ、
面
(
つら
)
には
丹
(
に
)
を塗り、
眼
(
まなこ
)
は
黄金
(
こがね
)
、
髯
(
ひげ
)
白銀
(
しろがね
)
の、六尺有余の大彫像、
熊坂長範
(
くまさかちょうはん
)
を安置して、
観音扉
(
かんのんびらき
)
を八文字に、格子も
嵌
(
は
)
めぬ
祠
(
ほこら
)
がある。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
どたんと、彼が寝台から
転
(
ころ
)
び落ちたので、智深は初めて眼をさました。ばっと
刎
(
は
)
ね起きざま、花嫁衣裳を
被
(
かず
)
いたまま
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
衣
(
きぬ
)
を
被
(
かず
)
き、
笠
(
かさ
)
をかぶって、たくさんな会葬者の中に立ち
交
(
まじ
)
り、鳥辺野西院の
荼毘所
(
だびどころ
)
に、名知らぬ贈りての花束を、いくつも残して、立ち去ったということである。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しばらくすると、ふたたび
衾
(
ふすま
)
を
被
(
かず
)
いで、枕に顔を埋め、努めて眠ろうとしているもののようであった。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
天皇は、み車の内で、女房衣を打ち
被
(
かず
)
いて、俯っ伏しておられた。——急に、
簾
(
れん
)
を吹く風は、加茂川の冷たい
湿
(
しめ
)
りをもち、ハタハタと鳴って、ひとしおお胸のときめきを打った。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
衣
(
きぬ
)
うち
被
(
かず
)
いてかくれたが、男は妻戸を蹴って逃げ出そうとしたから、役人は声をあげて、人々をよび求め、とうとう、男をつかまえたが……これが何と、後涼殿の空き部屋から
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
天皇はその夜、み
后
(
きさき
)
の
弘徽殿
(
こきでん
)
におやすみだったが、あわてて女房衣を
被
(
かず
)
かせ給い、ほかの一殿へお避けになられた。一方の兇賊たちは、お姿が見当らぬので、夜ノ御殿の辺で地だんだを踏んでいた。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのうちの
主
(
しゅ
)
たるお人は、女房
衣
(
ごろも
)
をあたまから
被
(
かず
)
いていたので、たれかは、夜目にもちょっと分らなかったが、しかしすぐあとに起った騒動によって、それが、後醍醐の君であったのは疑いもない。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
良人は、深く
衾
(
ふすま
)
を
被
(
かず
)
いて
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
にぶ色の
二
(
ふた
)
つ
衣
(
ぎぬ
)
うち
被
(
かず
)
き
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
被
常用漢字
中学
部首:⾐
10画
“被”を含む語句
被仰
頬被
引被
被衣
被布
上被
被居
法被
被入
被物
頭被
被来
被下
蔽被
面被
外被
押被
被遊
打被
被存候
...