華々はなばな)” の例文
道を通る人も、乗る舟を見かけて集まるほどの人も、みんなこの華々はなばなしい景気に打たれて、眼を奪われないものは無いのです。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
男子一生の仕事として、これほど愉快で華々はなばなしいことは、他にあろうとは思われません。そこへ君臨してくださいましと。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
仙台における早月親佐はしばらくのあいだは深く沈黙を守っていたが、見る見る周囲に人を集めて華々はなばなしく活動をし始めた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
あの生活のエンジョイの仕方が、終戦になつた現在では、もつと美しく、もつと華々はなばなしく展開されてゐるに違ひない。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
みんな出立いでたちは甲斐々々かいがいしく、ラウドスピイカアも、「これより、オリムピック・クルウの独漕どくそうがあります」と華々はなばなしく放送してくれたのでしたが
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
全日本を俯瞰ふかんするに足る所だし、思想的には、草莽そうもうの心の根という根はことごとくここにつながっており、ここを根としていない家々なく華々はなばななしである。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
華々はなばなしい、浮々した都会の空気は、とうていこの北国生まれの空想家の心臓を乱調子にせずに置くまいと思われる。
北国の人 (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
これは随行の赤備兵あかぞなえへいを引率していて、一層華々はなばなしい見ものであろうという。ところが智恩院を出たはずの公使らの一行が、待っても、待ってもやって来ない。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
西洋近代思潮は昔日の如くわれを昂奮刺㦸せしむるに先立ちていたずらに現在のわれを嫌悪けんおせしめ絶望せしむ。われは決して華々はなばなしく猛進奮闘する人をむにらず。
矢立のちび筆 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
西空は一面に都会の夜街の華々はなばなしいものがおどりつ、打ち合いつ、くだけつする光の反射面のようである。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
何しろ華々はなばなしい行動と同じく華々しい思慮が伴なっているから、ともかくも読んで見ろと云った。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一九三〇年型の自動車の出現は去年のぼろ自動車を広場へ山積せしめるであろう如く、即ち近代の洋画家はその場限りの技法の華々はなばなしき効果をのみ考えはしないだろうか。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
ある華々はなばなしい話し手が、豊艶ほうえんな恋愛の詩人が、シャートレー座で贖罪について講演をしていた。
もっとも勇敢ゆうかんたたかって、華々はなばなしく江南こうなんはなった、勇士ゆうしなかに、純吉じゅんきちがありました。
からす (新字新仮名) / 小川未明(著)
ばかに華々はなばなしく彼のキンカン頭が光りだした時、持前の毒舌はいい気になって発揚した。
ボイド・ニールは世間的に華々はなばなしい人気を持った団体ではないが、きわめて芸術的な楽団で、この演奏も、少しく暗いにしても、きわめて良心的なものであることに疑いはない。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
と、只ならぬ悲鳴が聞えたと思ったら、卓子が華々はなばなしく持ち上り、中から一人の真青まっさおな皮膚をもった人間がとびだしたかと思うと、衝立ついたてをぶっ倒して、料理場へ逃げこんでしまった。
彼らグルウプの新らしい時代の社交範囲のなかに華々はなばなしく復活するわけで、一人取り残された庸三の姿が、どんなに見すぼらしいものであるかは、彼には想像できないことでもなかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
あの連中と——このごろの華々はなばなしい青年諸君と、ちょっとしばらく一緒にやってごらんなさい! あの男は何か試験を受けるとか言ってるんだけれど、このごろのはちょっと何かしゃべって
華々はなばなしい遊覧地も数多くあるものを、何をり好んで、辺鄙へんぴ閑散、いたずらに悠長な、このような絶海の一孤島へ到着したかといえば、これまた、端倪たんげいすべからざるタヌの主張によったもので
彼はその華々はなばなしい進退行蔵しんたいこうぞうを目の当り見るような気がした。堀部安兵衛武庸たけつねの名も出ている、横川勘平宗房の名も出ている。が、毛利小平太の名は? もちろん、そこに出ていようはずはない。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
「台所方は、雄々しゅう、槍先の功名もならぬところじゃが、戦場の華々はなばなしい場所よりは、わけて大事なかげの守りぞ。いうまでもないが、精出して勤めい」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
町々の人は少年を歓迎かんげいし始めた。少年の姿を見ると目出度めでたいと言って急いで羽織袴はおりはかまうやうやしく出迎でむかえるような商家の主人もあった。華々はなばなしい行列で停車場へ送ったりした。
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
り候しかし小生の心の底には別に一種の考ありて貴兄の御入洛ごじゅらくを小生自身にとりて非常なる幸福と存ずると共にただ今帝都にて新芸術の華々はなばなしき活動を試みさせ給ふ貴兄を
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
人々は木部が成熟した思想をひっさげて世の中に出て来る時の華々はなばなしさをうわさし合った。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
天才的な華々はなばなしい逸話を一つも作らなかったが、その心に根ざした音楽愛は、怠りがちな灌水かんすいのうちにも、すくすくと伸びて、十九歳で法律学校を卒業し、司法省に奉職するようになってからも
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
世間の噂にあるように主君きみよりの討手を引き受けて華々はなばなしく合戦をするようなそんな気振りは毛ほどもない。それどころかどうやら甚五衛門は、自分の邸を空け渡して中津の領地へ引き揚げたようだ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
新聞には彼女の旅の華々はなばなしい記事が出ていた。
いや、とかく麾下きかのさむらいどもは、陣頭へ出て、華々はなばなと生死の中をくぐりたがってのみいてこまる。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ごらん下さい、この和子の身支度を。すぐここより父孝高のいる播磨はりまの陣へ参って、父に劣らぬいさおを立てて、華々はなばなと生死の関頭かんとうに、将来の命数をまかせる覚悟にござりまする」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よろしくこんどは天慶てんぎょう承平の例にならうべきであるというところから、特に、義貞へは節刀せっとうを賜わり、やがて、たびの万歳のとなえのうちに、華々はなばなと、彼のすがたは大内を退出してきた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「きょうこそは、華々はなばなと」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)