糸口いとぐち)” の例文
げきしているのでも無く、おそれているのでも無いらしい。が、何かと談話だんわをしてその糸口いとぐちを引出そうとしても、夫はうるさがるばかりであった。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかし、三にんは、いつとはなしになかなおりますが、もし、とくちゃんがいなかったら、そう容易よういける糸口いとぐちつからなかったかもしれません。
春の日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まつばかりにても見惚みとるゝやうなりとほゝめば、別莊べつさうにはあらず本宅ほんたくにておはすなりとこたふ、これはなしの糸口いとぐちとして、見惚みとたまふはまつばかりならず、うつくしき御主人ごしゆじんこうなりといふ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
主人は百方ひゃっぽうをつくして、この国で生まれた人間ですからというような糸口いとぐちを引きだそうとこころみたが、いつでも失敗しっぱいにおわった。かれは主人にたいしたときにも、ときをきらわず立ってしまう。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
マッツは、さっきの物語の糸口いとぐちを見つけて、また、話をつづけました。
ミユンヘン、ヰインの話をなほのち長き事として糸口いとぐちばかり語りりしも此夜このよさふらふ巴里パリイ此処ここださばかり時の掛け隔つまじと思ひさふらものからいとど悲しく、居給ふの中を心はいくたび歩みさふらひけん。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
『さァ……何所どこからはなし糸口いとぐち手繰たぐしてよいやら……。』
しかし、くもをつかむようで、かんがえたことが、なんであったか、まったく見当けんとうがつきません。だが、最初さいしょそれをかんがえた糸口いとぐちとなったものが、あったにちがいない。
世の中のために (新字新仮名) / 小川未明(著)
ありし雛遊ひなあそびのこゝろあらたまらずあらたまりし姿すがたかたちにとめんとせねばとまりもせでりやうさん千代ちいちやんと他愛たあいもなき談笑だんせふては喧嘩けんくわ糸口いとぐち最早もう来玉きたまふななにしにんお前様まへさまこそのいひじらけに見合みあはさぬかほはつ二日目ふつかめ昨日きのふわたしるかりし此後このご
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)