立留たちど)” の例文
真先まっさきに立ちたる未醒みせい君、立留たちどまって、一行を顧みた。見ればまさしく橋は陥落して、碧流へきりゅういわむ。一行相顧みて唖然あぜんたり。
ぐにこたへて、坂上さかがみのまゝ立留たちどまつて、振向ふりむいた……ひやりとかたからすくみながら、矢庭やにはえるいぬに、(畜生ちくしやう、)とて擬勢ぎせいしめ意氣組いきぐみである。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
お蔦しおしおときかかり、胸のいたみをおさえて立留たちどる、早瀬ハッと向合う。両方おもてを見合わす。
湯島の境内 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのくせこわいもの見たさに立留たちどまって見ていると、なんじゃないか、やがて半分ばかり垣根へ入って、尾を水の中へばたりと落して、鎌首かまくびを、あの羽目板はめいたへ入れたろうじゃないか。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
水淺葱みづあさぎしろかさねたすゞしい涼傘ひがさをさしたのが、すら/\とさばつまを、縫留ぬひとめられたやうに、ハタと立留たちどまつたとおもふと、うしろへ、よろ/\と退しさりながら、かざした涼傘ひがさうち
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
他所よそのおぢさんのとりさしがて、わたしとこはしつめで、えのきした立留たちどまつて、六本めのえだのさきに可愛かあい頬白ほゝじろたのを、さをでもつてねらつたから、あら/\ツてさういつたら、ツ、だまつて
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
をとこ呼吸いきめた途端とたんに、立留たちどまつたさかくち。……病院下びやうゐんしたかどは、遺失おとすくらゐか、路傍みちばた手紙てがみをのせてても、こひ宛名あてなとゞきさうな、つか辻堂つじだうさいかみ道陸神だうろくじんのあとらしいところである。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
紫玉は立留たちどまつた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)