眞鍮しんちゆう)” の例文
新字:真鍮
「安心しなよ。辻斬がそんなに怖かつたら、首へたがをはめて行くんだ。箍も鐵か眞鍮しんちゆうが宜いな。唐犬そつくりだぜ」
其入口そのいりくちにはぴか/\した眞鍮しんちゆう表札へうさつに『山野兎やまのうさぎ』と其名そのなりつけてありました、あいちやんはこゑもかけずに二かいあがりました、眞實ほんと梅子うめこさんにつて
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
宗助そうすけつぎにある亞鉛とたんおとしのいた四角しかく火鉢ひばちや、やすつぽいいろをした眞鍮しんちゆう藥鑵やくわんや、ふるびたながしのそばかれたあたらしぎる手桶てをけながめて、かどた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
奧から出て來た若い男が丁寧に言つて、眞鍮しんちゆうの火鉢を持つて來て呉れた。
三十三の死 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
中央なる大卓の上に眞鍮しんちゆうの燈二つ据ゑて、許多あまたの燈心に火を點じ、逞しげなる大漢おほをとこ數人の羊のかはごろも着たるが、圍み坐して骨牌かるたもてあそべり。火光の照し出せるおもざしは、にがみばしりて落ち着きたるさまなり。
眞鍮しんちゆうかくなるいた
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
お舟の持つてゐるのは、充分に古びを帶びた上、青錆あをさびまで浮いた眞鍮しんちゆうの迷子札で、小判形に『江戸麻布六本木庄司伊左衞門娘お藤、壬寅みづのえとら三月十七日生』
小六ころく眞鍮しんちゆう火箸ひばしつて火鉢ひばちはひなかなにかしきりにした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
自慢さうに三輪の親分に見せましたが、鍵は今拵へたばかりの新しい物で、きり立ての眞鍮しんちゆうのやうにピカピカしてを
北側きたがはとこがあるので、申譯まをしわけためへんぢくけて、其前そのまへ朱泥しゆでいいろをしたせつ花活はないけかざつてある。欄間らんまにはがくなにもない。たゞ眞鍮しんちゆう折釘丈をれくぎだけが二ほんひかつてゐる。其他そのたには硝子戸がらすどつた書棚しよだなひとつある。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「迷子札などは何時でも拵へられるよ。眞鍮しんちゆう梅酢うめずに漬けて置けば、青錆も出るよ。あの錆具合が少し念入り過ぎるのを、俺が氣が付かずに居ると思ふか」
眞鍮しんちゆうの矢立が一梃、それにいろ/\の小道具にまじつて女の兒のかんざしらしい古いまみ細工ざいくやら、汚れた赤い巾着やら、憐れ深い品々が交つてゐるではありませんか。
何をするかと思ふと、蝋燭に溜つたしんる爲で、眞鍮しんちゆうはさみを取つて、燭臺の上へ持つて行きましたが、何うしたはずみか、たもとさはつて一基の燭臺を横倒しにしてしまひました。
「あの手紙の取次と、手紙と一緒に見せた眞鍮しんちゆうの札は何んだつたか、訊かなかつたのか」
鐵磨きに眞鍮しんちゆうあはせた恐ろしく堅牢なもので、少し小型ではありますが、火箸や針金は言ふ迄もなく間に合せの合ひ鍵などで開くやうなものではなく、多く大奧などで使ふのを