目色めいろ)” の例文
女のほうでもそれと心付いたが春子の前をはばかって、何ともいわず、唯それとなく目色めいろ会釈えしゃくをした。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「そうでござんすね。」と、母親は椎茸しいたけを丼で湯にけていながら、思案ぶかい目色めいろをした。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
おのづと肩身かたみせばまりて朝夕てうせき挨拶あいさつひと目色めいろるやうなるなさけなきおもひもするを、れをばおもはで情婦こひうへばかりをおもひつゞけ、無情つれなひとこゝろそこれほどまでにこひしいか
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すこ御新造ごしんぞ機嫌きげんかいなれど、目色めいろ顏色かほいろみこんで仕舞しまへばたいしたこともなく、結句けつくおだてにたちなれば、御前おまへ出樣でやう一つで半襟はんゑりはんがけ前垂まへだれひもにもことくまじ、御身代ごしんだい町内てうないだい一にて
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのまゝ座敷牢ざしきらうえん障子しやうじ開閉あけたてにも乳母うば見張みはりのはなれずしてや勘藏かんざう注意ちゆうい周到しうたうつばさあらばらぬこととりならぬ何方いづくぬけでんすきもなしあはれ刄物はものひとれたやところかはれどおなみちおくれはせじのむすめ目色めいろてとる運平うんぺい氣遣きづかはしさ錦野にしきのとの縁談えんだんいまいまはこびしなかこのことられなばみな畫餠ぐわべいなるべしつゝまるゝだけは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)