瑞々みずみず)” の例文
彼は着物を通じて、彼女の両肩や乳房のあたりのはり切った瑞々みずみずしい肉体になやまされるのだ。白い頬など、つやつやして輝いている。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
セリグマンとかいう世界的な元老の作品のページと並んで載っているむす子の厳格な詩的な瑞々みずみずしい画にいては何の疑いもなかった。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
彼女がそこへ押し伏せられたら、彼女の処女性はけがされるであろう。その瑞々みずみずしく滑らかな肌は、男の汗で濡れなければならない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ああ、ここにこれが、とめぐり合いのよろこばしい感じで心を打って来る刹那の瑞々みずみずしさは、作品の世界の一般に欠乏している。
艶姿えんしにはなお、瑞々みずみずと垂れるようなものがあったが、廉子ももう聞きわけのない妙齢ではない。女性の三十一であった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夏の烈しい日光に照らされて匂う高声の誇らしさを、天分の瑞々みずみずしさで少しくやわらげている。そのような笑いかたである。
あどけない瑞々みずみずしい頬、エジナ島で見い出されたジュノーの像のように丈夫な首、しっかりしてまたしなやかな首筋
「旦那は年齢としが年齢だ。なあ、それにお前さんはその瑞々みずみずしさ。そこはこちとらも察しが届くが、それにしても久松留守たあよくもたくらんだもんさのう。」
私の全身は瑞々みずみずしい歓びと感激にあふれて来るのを感じた。彼も満足そうに微笑を浮べながら私を見守った。
光の中に (新字新仮名) / 金史良(著)
それにこの暗さをおおう化粧土さえも用いた歴史がなく、また釉薬うわぐすりも色のえた瑞々みずみずしいものを用いたためしがなく、ただ赤土をうすくいて、これに灰を
多々良の雑器 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
瑞々みずみずしいなめらかな莢の中で、ザビーネの指先に出会った。彼女の指も震えていた。二人はもうつづけることができなかった。たがいに眼をそらしてじっとしていた。
物語りする刀自たちの話でなく、若人らの言うことは、時たま、世の中の瑞々みずみずしい消息しょうそこを伝えて来た。奈良の家の女部屋は、裏方五つ間を通した、広いものであった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
十二三年も前に、日本橋倶楽部クラブで初めてその人を見た時は、彼女も若かったが、踊りも瑞々みずみずしていた。次第に彼女は新しい主題を取り扱い、自身の境地をひらいて行った。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
愛想がよくて、お喋りの主婦は、客あしらいがいいというので評判だった。二人の可愛らしい娘がよく客を迎えに出て来た。どちらも金髪で、薔薇の花のように瑞々みずみずしかった。
署長は両の眼を瑞々みずみずしく光らしながら厳粛な調子で、併し抱き取るような口調で云った。
瑞々みずみずと結い上げてやったお六の頭が見るも浅ましくところまんだらに天保銭ほどの禿になっている。白癬しらくも頭のおできのあとのようにも見えるし台湾坊主の出来そこないみたいにも見える。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
あの瑞々みずみずしい松の一葉ひとは一葉、青い甍の一枚一枚、白い壁の隅々、あの石垣の一個一個までも、こうした日本民族の真実心の象徴に外ならぬではないかとしみじみ思い知りました。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あんな往来にあるのなんかより、もっと美しい瑞々みずみずしい若葉を出してるし、秋には真黄色になって、庭一杯落葉が散り敷く。いくら枝を刈り込んでも、すくすくと威勢よく伸び上ってゆく。
公孫樹 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
それと同時に新らたに甦生したもののような瑞々みずみずしさと、いかにも自信に充ち滿ちた樣子をもって姿をあらわすことになったので、みんなは直ちに彼の一時の落伍を許してくれたのである。
で、その幽霊の頸のまわりや背中を下に垂れ下がっていた髪の毛は、年齢とし所為せいでもあるように白くなっていた。しかもその顔には一筋の皺もなく、皮膚は瑞々みずみずした盛りの色沢つやを持っていた。
このごろは心にくつろぎが出来て、瑞々みずみずして、何しろ私のこれまでの一生に只一度もつけたことのない題をつける位ですから。
現在の殻から一時でも逃れて瑞々みずみずしい昔の青春に戻ろうと努めているらしいその願いが如何にも本能的で切実なものであるのに私の心は動された。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その目は揚々ようようと輝き、その瑞々みずみずしい頬には笑いが浮かんでいた。一人はくり色の髪で、一人は褐色かっしょくの髪をしていた。その無邪気な顔は驚喜すべきものだった。
これも表現の上から見れば、水中の草葉・瑞々みずみずしい葉などを修飾句に据えたものと考えていたのらしい。変った考えでは、みつはは水走で、みそぎの水のほとばしる様だとするのもある。
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
砲弾にいただきを削り去られたかばの木にも、下枝しずえいっぱいに瑞々みずみずしい若芽が、芽ぐんできた。
勲章を貰う話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
自分を楽しませた後に、むろの港へもってゆけば、大金おおがねになる女だ、しかも今夜のは、やんごとなき上﨟じょうろうの君で、年ばえも瑞々みずみずしく、金釵きんさ紅顔というからの詩にある美人そのままの上玉だ、ぬかるなよ
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてひとりでに程よく波うっている髪にふちどられた大柄な瑞々みずみずしい顔だちの上で目を瞬くような表情をした。
杉子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
石も多いがしかしそれに生え越して瑞々みずみずと茂った、赤松、もみ山毛欅ぶなの林間を抜けて峯と峯との間の鞍部に出られた。そこはのびのびとしていて展望も利いた。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その気運を迎えているこの晩会った少壮史学家たちには、ちょっと文壇人の若いグループには見られないような何か瑞々みずみずしい気概が感じられた。ぼくにとっても、愉快なまた意義のある一夕だった。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じゃが、お身がその年になっても、まだ二十はたち代の若い心や、瑞々みずみずしい顔を持って居るのは、宋玉のおかげじゃぞ。まだなかなか隠れては歩きる、と人の噂じゃが、嘘じゃなかろう。身が保証する。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
静岡をすぎるともう瑞々みずみずしさが不足でしたが。お母さんも私も、予想よりずっと疲れず東京に着きました。
多可子はこの病には若くて瑞々みずみずしい者ほど抵抗力がないと云った医師の言葉を思い出して暗然とした。
勝ずば (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と、瑞々みずみずしい眉に、ふとうれいを見せながらいった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新聞——伸子はうけて来た許りの様々の印象で瑞々みずみずしく輝いていた眼の中に微かな硬さを浮べた。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
おまえの姿は可憐にも瑞々みずみずしく盛上っている。そしてどのように置き代えてもちゃんとして格式の見える身体の据りに躾けで鍛えられて来たわたしの趣味の嗜慾は礼拝歓喜する。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その体温が自分の皮膚にもつたわる良人としての重吉を、この時ほどひろ子が瑞々みずみずしく、そしてひしと感じたことはなかった。妻たる自分のこの手の指、この足が重吉につながっている。
播州平野 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
それらすべては青年から壮年へと送られた重吉の獄中の十二年が、彼の人間らしい瑞々みずみずしさにとって、どんなに乾いたものであり、胃袋と同じくいつもひもじいものであったかを知らした。
風知草 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
すらりと、簡素で、しかもしんは瑞々みずみずしいという日々がつくられるようにしましょうねえ。極めて実際的によく組立てられて、妙なもやもやのない、やっぱり私たちらしい生活にしましょうねえ。
瑞々みずみずしく愛くるしい若さで云わなかっただろう。