牛蒡ごばう)” の例文
捻くり廻して、——無禮者ツ、手は見せぬぞ——と來やがる。人參や牛蒡ごばうぢやあるめえし、人間がさうポンポン切られてたまるか、てんで
牛蒡ごばうもうつかりしてなはしばつてけちや、其處そこからくされがへえつてひでえもんだな、わらぽどきれえだとえんのさな」勘次かんじ横合よこあひからいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
きよらかなるくちつめたきつちあらふをて、やまいもうなぎになる、牛蒡ごばうくて石清水いはしみづそゝがば、あはれ白魚しらうをくわしやせんと、そゞろむねきしが。
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
人参と大根とは其葉の形で都会生れのわたしにも容易にそれと見分けられます。牛蒡ごばうの葉はふきのやうにひろがり、白菜はいかにも軟かさうに真白な葉裏の茎を日に曝してゐます。
畦道 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
大雪十一月の節になりますと、大根や牛蒡ごばうや葱芋などが、多く取れました。此の芋などは、人々何れも野中又は道端などに穴を掘りまして、是に馬つけ五駄も七駄も入れて置きました。
政治の破産者・田中正造 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
手しほ皿(奈良漬。なんばん)。ひたし(にら)。皿(糸こん。くるみ合)。巻ずし(黒のり、ゆば)。吸物(包ゆば二つ。しひたけ。うど)。あげ物(牛蒡ごばう。いも。かやのみ。くわい。柿)
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
町立病院ちやうりつびやうゐんにはうち牛蒡ごばう蕁草いらぐさ野麻のあさなどのむらがしげつてるあたりに、さゝやかなる別室べつしつの一むねがある。屋根やねのブリキいたびて、烟突えんとつなかばこはれ、玄關げんくわん階段かいだん紛堊しつくひがれて、ちて、雜草ざつさうさへのび/\と。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
たんぽゝの根は、牛蒡ごばうの樣に、きんぴらにしてたべる。柔かだつたら牛蒡と違つた味をもつてゐてうまい。東京にゐた時、まだ學生の時分、戸山ケ原で掘つて歸つて下宿の内儀を困らせたことがある。
家のめぐり (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
「そいつは聽かない方が宜い、——なア八、憎いのは町内の衆ぢやなくて、人間を牛蒡ごばうや人參のやうに斬つて歩く、辻斬野郎ぢやないか」
「どうせ、おめえやうに紺屋こんや弟子でしてえな手足てあし牛蒡ごばうでもかついであるくのにや丁度ちやうどよかんべ」復讎ふくしうでも仕得しえたやうな容子ようすぢいさんはいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
茶呑茶碗ちやのみぢやわんひとつ/\にかれて、何處どこからかそなへられたいも牛蒡ごばう人參にんじん野菜やさい煮〆にしめ重箱ぢゆうばこまゝかれた。其處そこにはぜんだいなにもなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「あの甚三親分が、生温けえ床から牛蒡ごばう拔きに、男を縛つて行つたんださうですよ。女は泣いてゐますぜ、親分」
「此處は江戸の眞ん中ぢやねえ、武州忍ぶしうをし、阿部豊後守樣十萬石の御城下だ、そんな風をして、後生大事に懷中を押へて歩くと、請合うけあひ牛蒡ごばう泥棒と間違へられる」
お禮はなんぼでもするだから——と背負つて來たのは一と抱へほどの化けさうな人參と牛蒡ごばう——
お孃さんもあきらめなさるが宜い。若いうちは、相手がどんな惡人でも、諦めきれねえ樣子だが、人參にんじん牛蒡ごばうのやうに人を斬る奴だけは、人間扱ひにしちやならねえ。どんな念佛を
笹野の旦那はかう仰しやるのだよ——この夏あたりから噂は聽いてゐたが、三日に一人、五日に二人罪のない人間がお膝元の江戸で、人參牛蒡ごばうのやうに斬られるのは捨て置き難い。
銭形平次捕物控:126 辻斬 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
人を斬ること人參にんじん牛蒡ごばうの如き惡鬼が、秋から春へと跳梁てうりやうし始めたのです。
「大きく出やがつたな、人參にんじん牛蒡ごばうでも作る氣になつたか」