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父上
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ちゝうへ
父上なくならば
親代りの
我れ、
兄上と
捧げて
竈の
神の
松一
本も
我が
託宣を
聞く
心ならば、いかにもいかにも
別戸の
御主人に
成りて、
此家の
爲には
働かぬが
勝手
取なと
言るゝに忠右衞門
殊勝にも然らば
父上御免を
蒙り御先へ切腹仕つり
黄泉の
露拂ひ致さんと
潔よくも
短刀を兩手に
持左の
脇腹へ既に
突立んとする
折柄廊下を
ヂュリ もうし、
父上、
膝をついて
願ひまする、たった
一言堪忍して
聽いて
下され。
取計ひ申べくと云ければ伊賀亮此
由披露に及ぶ簾の中より天一坊は越前目通り
許すとの言にて簾をきり/\と
卷上天一坊堂々と越前守に
向ひ越前予に對し無禮過言せしは
父上の御爲を
ヹローナからの
音信ぢゃ! どうぢゃ、バルターザー!
御坊からの
消息は
無かったか?
姫は
如何ぢゃ、
父上は
御無事か? ヂュリエットは
何としておゐやる?
先づ、それを
聞かう
目鼻だちの
何處やらが
水子にて
亡せたる
總領によく
似たりとて、
今はなき
人なる
地主の
内儀に
可愛がられ、はじめはお
大盡の
旦那と
尊びし
人を、
父上と
呼ぶやうに
成りしは
其身の
幸福なれども
ヂュリ なに、あの、
其方の
慰めで
不思議に
心が
安堵いた。
奧へ
往て、
母樣に
言うてたも、
父上の
御不興を
受けたゆゑ、
懺悔をして
罪を
赦して
貰はうとて、ロレンスどのゝ
庵室へわしが
往んだと。