無情むじやう)” の例文
ですけれど、あの方は御自分の大きな見解を追求なさるもので、小さな人間の感情や要求は無情むじやうにも忘れてゐらつしやるのです。
うまはこのまんま、えるやうににたいとおもひました。んで、そして何處どこかで、びつくりして自分じぶんいてわびる無情むじやう主人しゅじんがみてやりたいとおもひました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
かけすゞり此處こゝへとおくよりばれて、最早もはや此時このときわがいのちもの大旦那おほだんな御目通おめどほりにてはじめよりのことを申、御新造ごしんぞ無情むじやうそのまゝにふてのけ、じゆつもなしはうもなし正直しやうぢき我身わがみまも
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あゝてんなんとてまで無情むじやうなると、わたくし暫時しばし眞黒まつくろくもにらんで、只更ひたすらうらんだが、しかのちかんがへると、なか萬事ばんじなにわざわひとなり、なに幸福こうふくとなるか、其時そのときばかりではわからぬのである。
あなたは他郷に安息を求め、また享樂——知性を曇らせ感情をしぼますやうな無情むじやうな官能的な——享樂のうちに幸福を求めて此處彼處と流浪します。
そばには可愛かはゆちご寐姿ねすがたみゆ、ひざうへには無情むじやうきみれを打捨うちすたまふかと、殿との御聲おんこゑあり/\きこえて、外面そともには良人をつともどらんけたるつきしもさむし、たとへば良人をつといま此處こゝもどらせたまふとも
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
だが、ジエィン、あなたの顏を見ると、あなたは今、私をひどく賞讃してゐないことが分る。あなたは私のことを無情むじやうな、放埓な惡黨だと思ふでせう——ねえ?
まへ此樣このやう本心ほんしん取亂とりみだして御兩親ごりやうしんなげきをかけるとふはわからぬではないか、れにたいしておまへ處置しよち無情むじやうであつたもれはけつしてうらんではなかつた、れは道理だうりつてをとこであらう、な
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)