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炉端
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ろばた
ふりがな文庫
“
炉端
(
ろばた
)” の例文
旧字:
爐端
猟はこういう時だと、
夜更
(
よふ
)
けに、のそのそと起きて、鉄砲しらべをして、
炉端
(
ろばた
)
で
茶漬
(
ちゃづけ
)
を
掻
(
か
)
っ食らって、
手製
(
てづくり
)
の
猿
(
さる
)
の皮の
毛頭巾
(
けずきん
)
を
被
(
かぶ
)
った。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
勘太郎
(
かんたろう
)
はそうひとりごとを言って、それから
土間
(
どま
)
の柱をよじ上って、ちょうど
炉端
(
ろばた
)
がぐあいよく見える
穴
(
あな
)
のあいている天井の上に隠れた。
鬼退治
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
そして髭を剃るのをやめて、
黙々
(
もくもく
)
と、
炉端
(
ろばた
)
へ行って坐った。松代は
怖々
(
おずおず
)
と、炉端へ寄って行った。そしてお互いにしばらく
凝
(
じ
)
っと黙っていた。
栗の花の咲くころ
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
お菊は自分を見るとすぐ横を向いて、自分の
視線
(
しせん
)
をさけるようすであった。それでもあえて
躊躇
(
ちゅうちょ
)
するふうもなく、女房について
炉端
(
ろばた
)
へあがって来た。
落穂
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
北方の山奥に雪が降ると、毎日々々と同じ
炉端
(
ろばた
)
に集まる人達が、よもやまの話をするそういう話題のひとつである。
禅僧
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
▼ もっと見る
人が家にいるのは夜分か雨雪の日であり、家で明るい暖かい所は、
炉端
(
ろばた
)
であったことを考えてみなければならぬ。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
炉端
(
ろばた
)
に一人の老人が坐り、長い
金火箸
(
かなひばし
)
で炉の火のぐあいを直していた。年は七十ちかいだろうか、逞しい躯と、
顎
(
あご
)
の張った長い顔に、一種の威厳が感じられた。
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その頃になると、いつも
炉端
(
ろばた
)
に姿をみせる精米所の主人が、もうやって来て大きな体を湯に浸っていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
与平はシャツを着て、着物を
肩
(
かた
)
に羽織ると、
炉端
(
ろばた
)
に上って
安坐
(
あぐら
)
を組んで
煙草
(
たばこ
)
を吸った。人が変ったように千穂子が
今朝
(
けさ
)
戻
(
もど
)
って来てからと云うもの、むっつりしている。
河沙魚
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
お
夕飯
(
ゆうはん
)
がすむと、
坊
(
ぼう
)
さんは
炉端
(
ろばた
)
に
座
(
すわ
)
って、たき
火
(
び
)
にあたりながら、いろいろ
旅
(
たび
)
の
話
(
はなし
)
をしますと、おばあさんはいちいちうなずいて
聞
(
き
)
きながら、せっせと
糸車
(
いとぐるま
)
を
回
(
まわ
)
していました。
安達が原
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
私は
炉端
(
ろばた
)
でウィスキーを
酌
(
く
)
みながらこの詩を低吟した。一杯のウィスキーには一杯だけのイリュージョンが展開する。長い間、孤独でくらしてゐると、自然にひとりごとをいふ癖がつくものである。
老残
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
爺さんは怒鳴りながら
煙管
(
きせる
)
で
炉端
(
ろばた
)
を叩いた。父親の春吉は、もう何も言わなかった。深く考え込むようにして煙草を吸った。
駈落
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
古
(
むかし
)
この猿ヶ馬場には、
渾名
(
あだな
)
を
熊坂
(
くまさか
)
と言った大猿があって、通行の旅人を
追剥
(
おいはが
)
し、
石動
(
いするぎ
)
の里へ出て、刀の
鍔
(
つば
)
で
小豆餅
(
あずきもち
)
を買ったとある、と雪の
炉端
(
ろばた
)
で話が
積
(
つも
)
る。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この婦負郡のエレンナカに近く、
西礪波
(
にしとなみ
)
郡にはエレンバタ、エレバタ、またはエレブツ・エレボツなどの語があって、是らはともに
炉端
(
ろばた
)
のことを意味する。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
秋風が吹いて、
収穫
(
とりいれ
)
が済むころには、よく夫婦の
祭文語
(
さいもんかた
)
りが入り込んで来た。
薄汚
(
うすぎたな
)
い祭文語りは
炉端
(
ろばた
)
へ呼び入れられて、鈴木
主水
(
もんど
)
や
刈萱
(
かるかや
)
道心のようなものを語った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
さらによく見るとその
炉端
(
ろばた
)
には、鳥の羽根や、
獣
(
けもの
)
の毛や、人間の
骨
(
ほね
)
らしいものが散らばっていた。
鬼退治
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
いつも来てる近所の者もいず、子供達もいなくて、ただ新兵衛夫婦ばかり、つくねんと
炉端
(
ろばた
)
にすわっていた。女房は自分が上がりはなに立ったのを目で迎えて、意味ありげに笑った。
落穂
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
さておばあさんが出て行ってしまうと、
坊
(
ぼう
)
さんはただ
一人
(
ひとり
)
、しばらくはつくねんと
炉端
(
ろばた
)
に
座
(
すわ
)
ったままおばあさんの
帰
(
かえ
)
りを
待
(
ま
)
っていましたが、じき
帰
(
かえ
)
ると
思
(
おも
)
ったおばあさんはなかなか
帰
(
かえ
)
って
来
(
き
)
ません。
安達が原
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
同時にまた、東北地方の農家の
炉端
(
ろばた
)
を歌ってよくその地方色を出している詩として、佐伯郁郎君の『故里の爐辺を想ふ』をも見逃すことは出来ない。
文学に現れたる東北地方の地方色:(仙台放送局放送原稿)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
すると父親は
煙管
(
きせる
)
を筒にしまって腰へさすと、ぷいと
炉端
(
ろばた
)
を立って向うの本家へ
外
(
はず
)
してしまう。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
『
下
(
お
)
りて
来
(
き
)
て、ちやんと
申
(
まを
)
さぬかい、
何
(
なん
)
ぢや、
不作法
(
ぶさはふ
)
な。』と
亭主
(
ていしゆ
)
が
炉端
(
ろばた
)
から
上睨
(
うはにら
)
みを
行
(
や
)
る。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
お島は時々
炉端
(
ろばた
)
で差向いになることのある、浜屋の若い主人のことなどを思っていた。T——市から来ていた、その主人の嫁が、肺病のために長いあいだ
生家
(
さと
)
へ帰されていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
祖父は
炉端
(
ろばた
)
で、向こう
脛
(
ずね
)
を
真赤
(
まっか
)
にして
榾火
(
ほだび
)
をつつきながら、何かしきりに、夜
更
(
ふ
)
かし勝ちな菊枝のことをぶつぶつ言ったり、自分達の若かった時代の青年男女のことを
呟
(
つぶや
)
いていた。
緑の芽
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
炉端
(
ろばた
)
に額を
鳩
(
あつ
)
めて、飽々する時間を消しかねるような怠屈な日が多かった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
万は
炉端
(
ろばた
)
へ行って出掛ける前の
煙草
(
たばこ
)
を、
忙
(
せわ
)
しく吸いながら言うのだった。
手品
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
“炉端”の意味
《名詞》
囲炉裏のそば・まわり。
(出典:Wiktionary)
炉
常用漢字
中学
部首:⽕
8画
端
常用漢字
中学
部首:⽴
14画
“炉”で始まる語句
炉
炉辺
炉縁
炉傍
炉棚
炉側
炉部屋
炉中
炉口
炉火