火桶ひをけ)” の例文
たゞ、いひかはされるのは、のくらゐなこと繰返くりかへす。ときに、鶺鴒せきれいこゑがして、火桶ひをけすみあかけれど、山茶花さざんくわかげさびしかつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
下人は、大きなくさめをして、それから、大儀さうに立上つた。夕冷ゆふひえのする京都は、もう火桶ひをけが欲しい程の寒さである。風は門のはしらと柱との間を、夕闇と共に遠慮なく、吹きぬける。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
佐伯さへき叔母をばたづねてたのは、土曜どえう午後ごごの二時過じすぎであつた。其日そのひれいになくあさからくもて、突然とつぜんかぜきたかはつたやうさむかつた。叔母をばたけんだまる火桶ひをけうへかざして
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
夜半よは火桶ひをけすみへにけり
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ゆきこそふれはまだそれほどに御座ござりませねばとかへ支度じたくとゝのへるにそれならばたれともにおつれなされお歩行ひろひ御迷惑ごめいわくながら此邊このほとりにはくるま鳥渡ちよつとむづかしからん大通おほどほちかくまで御難澁ごなんじふなるべし家内うちにてすら火桶ひをけすこしもはなされぬに夜氣やきあたつておかぜめすな失禮しつれいなにもなしこゝよりすぐにお頭巾づきんれぞお肩掛かたかけまをせと總掛そうがゝりに支度したく手傳てつだ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
火桶ひをけおもてそむけると、つくゑ降込ふりこんだあられがあつた。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)