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ぬれてぬぐい
ふりがな文庫
“
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)” の例文
帯なし、
掻取
(
かいど
)
り気味に
褄
(
つま
)
を合せて、胸で引抱えた手に、
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
を提げていた。二間を仕切った敷居際に来て、また
莞爾
(
にっこり
)
すると、……
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そう言って帰りかけたが、父は額に
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
を当て
臥
(
ね
)
そべっており、母はくどくどと近所の
噂
(
うわさ
)
をしはじめ、またしばらく腰を卸していた。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「あなたの
室
(
へや
)
から見た景色はいつ見ても好いね」と自分で窓の障子を開けながら、
手摺付
(
てすりつき
)
の縁板の上へ
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
を置いた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
を持っているところを見ると、町内の銭湯へ行った帰り、夜遊びに出た愚かな
倅
(
せがれ
)
と一緒になったのでしょう。
銭形平次捕物控:037 人形の誘惑
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
を頭にのせたまゝ、四体は水の
滴
(
た
)
るゝまゝに下駄をはいて、今母の胎内を出た様に真裸で、天上天下唯我独尊と云う様な
大踏歩
(
だいとうほ
)
して庭を歩いて帰る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
辰弥は浴室にと宿の
浴衣
(
ゆかた
)
に
着更
(
きか
)
え、広き
母屋
(
おもや
)
の廊下に立ち出でたる向うより、湯気の
渦巻
(
うずま
)
く
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
に、玉を延べたる首筋を拭いながら、階段のもとへと行違いに帰る人あり。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
真白
(
まっしろ
)
に
塗
(
ぬ
)
りつぶされたそれらのかたちが、
間
(
ま
)
もなく
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
で、おもむろにふき
清
(
きよ
)
められると、やがて
唇
(
くちびる
)
には
真紅
(
しんく
)
のべにがさされて、
菊之丞
(
きくのじょう
)
の
顔
(
かお
)
は
今
(
いま
)
にも
物
(
もの
)
をいうかと
怪
(
あや
)
しまれるまでに
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
本日ゆず湯というビラを見ながら、わたしは急に春に近づいたような気分になって、いつもの湯屋の格子をくぐると、出あいがしらに建具屋のおじいさんが
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
で
額
(
ひたい
)
をふきながら出て来た。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
を、顔に当てながら答えた。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
仕方がないから、今朝あげた
蒲団
(
ふとん
)
をまた出して来て、座敷へ延べたまま横になった。それでも
堪
(
た
)
えられないので、清に
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
を
絞
(
しぼ
)
らして頭へ乗せた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そんな問答をしている時、もうかげりかけた日蔭を拾うように、
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
をさげて、兄の清次郎が帰って来ました。
銭形平次捕物控:102 金蔵の行方
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
時に履物の音高く
家
(
うち
)
に
入来
(
いりく
)
るものあるにぞ、お貞は少し
慌
(
あわた
)
だしく、急に
其方
(
そなた
)
を見向ける時、表の戸をがたりとあけて、
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
をぶら提げつつ、
衝
(
つ
)
と入りたる少年あり。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
少し吐いたとみえて、
嗽
(
うが
)
い
茶碗
(
ぢゃわん
)
や
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
が丸盆の上にあった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
帯も
締
(
し
)
めずに、
浴衣
(
ゆかた
)
を羽織るようにひっかけたままずっと
欄干
(
らんかん
)
の所まで行ってそこへ
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
を懸けた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
蓋
(
ふた
)
と別々になって、うつむけに
引
(
ひっ
)
くりかえって、
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
を
桶
(
おけ
)
の中、湯は沢山にはなかったと思われ、乾き切って霜のような
流
(
ながし
)
が、網を投げた形にびっしょりであった。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それでも座敷へ
伴
(
つ
)
れて戻った時、父はもう大丈夫だといった。念のために
枕元
(
まくらもと
)
に
坐
(
すわ
)
って、
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
で父の頭を
冷
(
ひや
)
していた私は、九時
頃
(
ごろ
)
になってようやく
形
(
かた
)
ばかりの夜食を済ました。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お
召
(
めし
)
の
平生着
(
ふだんぎ
)
に桃色の
巻
(
まき
)
つけ帯、
衣紋
(
えもん
)
ゆるやかにぞろりとして、中ぐりの駒下駄、高いので
丈
(
せい
)
もすらりと見え、
洗髪
(
あらいがみ
)
で、
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
、
紅絹
(
もみ
)
の
糠袋
(
ぬかぶくろ
)
を口に
銜
(
くわ
)
えて、
鬢
(
びん
)
の毛を
掻上
(
かきあ
)
げながら、滝の湯とある
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかし
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
をぶら下げて、風呂場の
階子段
(
はしごだん
)
を
上
(
あが
)
って、そこにある洗面所と
姿見
(
すがたみ
)
の前を通り越して、廊下を一曲り曲ったと思ったら、はたしてどこへ帰っていいのか解らなくなった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と
寝惚
(
ねぼ
)
けたように云うと
斉
(
ひと
)
しく、これも嫁入を
恍惚
(
うっとり
)
視
(
なが
)
めて、あたかもその前に立合わせた、つい居廻りで湯帰りらしい、島田の乱れた、
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
を下げた
娘
(
しんぞ
)
の
裾
(
すそ
)
へ、やにわに一束の線香を
押着
(
おッつ
)
けたのは
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
口へ
掌
(
てのひら
)
を当てがっても、
呼息
(
いき
)
の通う音はしなかった。母は
呼吸
(
こきゅう
)
の
塞
(
つま
)
ったような苦しい声を出して、下女に
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
を持って来さした。それを宵子の額に
載
(
の
)
せた時、「
脈
(
みゃく
)
はあって」と千代子に聞いた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
濡
漢検準1級
部首:⽔
17画
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
拭
常用漢字
中学
部首:⼿
9画
“濡手”で始まる語句
濡手