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濃艶
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のうえん
ふりがな文庫
“
濃艶
(
のうえん
)” の例文
旧字:
濃艷
白娘子が
濃艶
(
のうえん
)
な顔をして出て来た。許宣はなんだかもう路傍の人ではないような気がしていたが、その一方では非常にきまりがわるかった。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
奥方とはいうけれども、そこに
処女
(
おとめ
)
のような可憐なところが残っていました。その可憐な中には迷わしいような
濃艶
(
のうえん
)
な色香が萌え立っていました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その一軒の大仕立屋におしゅんさんという美しい娘がいて、上方風の「油屋お染」のような
濃艶
(
のうえん
)
なおつくりしていた。
旧聞日本橋:05 大丸呉服店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
春雨は他の気候の雨にくらべて一番
濃艶
(
のうえん
)
な感じのするものでありますが、同時に濃艶な妖怪味を有しております。
俳句とはどんなものか
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
年は四十になるし、
縹緻
(
きりょう
)
もよくはないが、表情の多い眼つきや、やわらかな身ごなしなどで、ふと
濃艶
(
のうえん
)
な
嬌
(
なま
)
めかしさをあらわす若さと、賢さをもっていた。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
障子
(
しょうじ
)
、
欄間
(
らんま
)
、
床柱
(
とこばしら
)
などは
黒塗
(
くろぬり
)
り、
又
(
また
)
縁
(
えん
)
の
欄干
(
てすり
)
、
庇
(
ひさし
)
、その
他
(
た
)
造作
(
ぞうさく
)
の一
部
(
ぶ
)
は
丹塗
(
にぬ
)
り、と
言
(
い
)
った
具合
(
ぐあい
)
に、とてもその
色彩
(
いろどり
)
が
複雑
(
ふくざつ
)
で、そして
濃艶
(
のうえん
)
なのでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
しかし北の海の荒い
陰鬱
(
いんうつ
)
さの美しい自然の霊を
享
(
う
)
けて来た彼女の
濃艶
(
のうえん
)
な肉体を流れているものは、いつも新しい情熱の血と生活への絶えざる
憧
(
あこが
)
れであった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
しかしまたあの渚での
濃艶
(
のうえん
)
な姿態が眼に浮かんできて、出てみたい誘惑にかられます。あのうつくしい姿はわたしの網膜にこびりついてしまってはなれません。
人魚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
人間の瞳を
欺
(
あざむ
)
き、電燈の光を欺いて、
濃艶
(
のうえん
)
な脂粉とちりめんの衣装の下に自分を潜ませながら、「秘密」の
帷
(
とばり
)
を一枚隔てて眺める為めに、恐らく平凡な現実が
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
お由は国太郎の胸を肩で
小突
(
こづ
)
いて、二人の時だけに見せる
淫蕩
(
いんとう
)
な笑いを顔一杯に浮べていた。その
濃艶
(
のうえん
)
な表情が、まだはっきりと国太郎の眼に残っているのに——
白蛇の死
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
裏通りの方ではまた、どこか近くの料理屋に宴会でもあって、それへ招かれでもしたのか
濃艶
(
のうえん
)
におめかしした芸者衆が幾人も幾人も自動車で運ばれて通っていた。
六月
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
桜吹雪
(
さくらふぶき
)
のような
濃艶
(
のうえん
)
さはないが、もみ散らされる梅の点々が、白く、チラチラと、人の姿を追っている。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
君の、空中飛行、水中潜行の夢の話は、その中にむせっぽいほどに
濃艶
(
のうえん
)
なる雰囲気を包有している。
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
華美な身装、
濃艶
(
のうえん
)
な縹緻、それから
推
(
お
)
すと良家の娘で、令嬢と云ってもよい程であったが、その大胆な行動や、物に
臆
(
お
)
じない振舞から見れば素人娘とは受け取れない。
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
抱一
(
ほういつ
)
の画、
濃艶
(
のうえん
)
愛すべしといへども、俳句に至つては
拙劣
(
せつれつ
)
見るに堪へず。その濃艶なる画にその拙劣なる句の
賛
(
さん
)
あるに至つては金殿に
反古
(
ほご
)
張りの障子を見るが如く釣り合はぬ事甚だし。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
息づまらんばかりの
濃艶
(
のうえん
)
な香りをたたへた、五彩の光焔世界を現出させてゐた。
鸚鵡:『白鳳』第二部
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
が、日が過ぎるにつれて、優しくて
濃艶
(
のうえん
)
な姉もいいけれど……もちろん
堪
(
たま
)
らなく魅惑的ですけれど、勝気で気品の高い妹の
眸鼻
(
めはな
)
立ちの清らかさにも、たとえようなく心が
惹
(
ひ
)
かれてくるのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「木村舞踊団なんかよりよほど
濃艶
(
のうえん
)
だ。」
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
今まで
微白
(
ほのじろ
)
いように見えていた花は
鮮
(
あざやか
)
な
真紅
(
しんく
)
の色に染まっていた。彼は驚いて女の顔を見た。女の
濃艶
(
のうえん
)
な
長目
(
ながめ
)
な顔が浮きあがったようになっていた。
港の妖婦
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「学校でね、
跡見玉枝
(
あとみぎょくし
)
先生が、あたしの絵のことをね、あんまり
濃艶
(
のうえん
)
すぎるって
仰
(
おっ
)
しゃるのよ。それだけなら好いけれど、ベタベタしているって言うんですもの——」
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
そこでしぜんみつ枝嬢のとりこになる順序なのだが、……彼に対するみつ枝の関心、ないしその
挙措
(
きょそ
)
言動はいよいよ親密になり、ときに
甚
(
はなは
)
だ
濃艶
(
のうえん
)
を呈するようになった。
百足ちがい
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
淋
(
さび
)
しい紫や白の房の長く垂れている藤の花の趣は春季の感じ、
濃艶
(
のうえん
)
な花弁を
豁然
(
かつぜん
)
と開いている牡丹の花の趣は夏季の感じとこうおのずから区分されるのでありまして、必ずしも某々二
俳句とはどんなものか
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
その説にもあるように俳諧に現われている恋は
濃艶
(
のうえん
)
痛切であってもその底にあるものは恋のあわれであり、さびしおりである。すなわち恋の風雅であり、風雅の一相としての恋愛であり性欲である。
俳諧の本質的概論
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
関の山の月見草の崖に、うっとりと寝転んでいた時のお綱も
凄艶
(
せいえん
)
にみえたが、緋の友禅に寝顔をつけて、
埋火
(
うずみび
)
のほてりに上気している今のお綱は、お十夜の眼を
眩惑
(
げんわく
)
するにありあまる
濃艶
(
のうえん
)
さである。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
春風の
濃艶
(
のうえん
)
で赤や青やくさぐさの色を連想するのと反対に、秋風は白々として何の色もない感じがする、そこから同じ弓でも中で色も飾りもない白木の弓を取り出してきたのであります。
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
牡丹
(
ぼたん
)
の花の咲いたような
濃艶
(
のうえん
)
な女の姿が省三の
眼前
(
めのまえ
)
にあった。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
“濃艶”の意味
《形容動詞》
艶やかで美しいこと。また、そのようなさま。
(出典:Wiktionary)
濃
常用漢字
中学
部首:⽔
16画
艶
常用漢字
中学
部首:⾊
19画
“濃”で始まる語句
濃
濃紫
濃霧
濃厚
濃青
濃緑
濃尾
濃茶
濃州
濃藍